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「ん〜。ちょっとぉ〜。なぁーに? そのしけたつらはっ! 聞いてみたいとかとは思わないわけ? わ・た・し・は、優介に耳の穴かっぽじてまでして聞いてほしいのにっ!」

と、彩穂がむすっーとした表情して言い放つ。


 だが優介は思う。きっと困難なことだろうから考え直してはくれないだろうか、と。

 しかしそうは思うものの、今までの経験を鑑みるといたずらに時を費やすだけ。そもそも、既にここまで連れてこられている。下手に反対しても、きっと無駄足に終わってしまうだろう。それは彩穂の性格を考えれば周知の事実なのだから。


「そっ、そんなこと……は――」


「なんで!」


「何でって言ったって……」


「だからどうして!」


「――と、とにかくさぁ――」


「うんっ」


「話だけは――」


「もぉ――っ!」


「――って、おいっ?!――」


 そう叫んだ彩穂は優介の口元を両手で抑えようとして、草の生えていない小さなくぼみで足を滑らす。すると、意図せずに抱きつくような形になってしまう。


「うわっ……」


 静かな場所にぱさっと草の音が響く。

 それは、映画ならばきっとスローモーションな転び方。優介はその重みを受けながら草枕で、彩穂は隣で腕枕。その姿は、少女が頭を打たないよう懸命に守っている少年だった。


「き、きれい……だな」


 寝ころんでいた二人の視界からは、どこまでも続いていると錯覚してしまいそうな広がりある空間。こぼれそうなほどの満点の星が広がっている。


「じゃあ……、あたしは……きれい?」


「えっ?」


「あたしは?」


「まぁ……な」


「口裂け女の真似」


「えっ?」


 優介は思わず怪訝そうな顔をしてしまい、彩穂がそれを見て満足げにうなづく。


「あのさ……」


「いや――な――か――な――い」


「――えっ……?!」


 彩穂が何を言っているか……それが聞こえない。ふるふると動いている口の振動だけを見送る優介。


「なんて……言った?」


「いや……、なんだかこれ、なつかしい……、なぁーって」


 彩穂は、大事なものをかかえているように己を抱きしめていた。いつものあのツンツンと、自由奔放と飛び跳ねているような口調ではない。優しく穏やかで、軽やかで癒されるような声だ。

 しかし優介には、さして心当たりはなかった。こんな抱きかかえるような体勢で、それに見あげれば満点の星空。記憶の片隅にも残っていなかった。

 いや、あるいはそれとも――。


「そっ、それはー……どういう意味?」

 

あいまいに問いかけたせいもあってか、そのままの姿勢でお互いに見つめあう。長い長い沈黙がやってきた。彩穂の不敵ともいえる微笑みが心臓を波打ち立たせている。


「ドッ、なんかドッキドキするね〜」


 その後に発せられた第一声。それはからかうような声だった。

 体の力がひゅうと抜けていく。あー勘違いだったかと――。

 すると素早く立ち上がり、四肢を折りたたんだような縮こまった格好になっていた彩穂に、手を差し伸べる。


「ほっ、ほら早く立ったほうがいいぞ!」


「あー、ありがと……」

 

 いつになくしおらしく、ちょこんと座って見上げた彩穂の上目使い。それが変に気になる優介。


「――ったく、無駄にドキドキと――」


「はぁー?」


「ん?」


「なんでもない」


「だからなん……」


「あー。もう、ホントはそこまでするつもりはなかったのよー! 優介がいつまでたってもわたしの話を聞かないからでしょっ!」

 

 さっきまでのしおらしい態度が急変して、ささっと優介の手をつかみ起き上がる。

 そして洋服にまんべんなくついていた草の残りかすをパンパンと払う。草粒がはらはらと落ちていく。満月の光がそっぽを向いた彩穂の横顔を映し出す。それを見た優介はなぜか耳たぶを抑えながら、また薬指の先にちくちくとした違和感を感じながらも、今はきっと三つとも全部赤いだろうなと思う。


「それよりも、続きよー! ミステリーサークルについてのある噂の調査を、夏休みの宿題にするのよっ! だから聞きなさいっ!」


 その口調はさながら、先ほど起こった出来事をすべてなかったことにしてしまおうという意図が感じられた。


「だから、なあ……もっと建設的なプランを――」


「なによ!」


「ていうか、また俺のを写すんだろうがー。彩穂のほうが断トツに頭がいいくせに」

 

 優介はもっともらしきことを言いかけた。

 しかしまるで聞く耳を持たなくなった彩穂が、その可愛らしく突き出したアヒルみたいな口で切り返す。


「優介にはロマンがないのよー!」


 そう断言した。それもきっぱりと。

 しかも、優介にとってはまだ何をするかを提示されていないのだから、何がロマンだかもわからずにである。


「それにこんなことをできるのは幸せなのよ、きっと!」

 

 こう言い切って優介を黙らせる。怖いほどの満面の笑みも浮かべる。

 ただ優介は、内容はわからないながらもおそらくあれだろう、とだいたいの察しはついていた。

 ――のだが、渋い顔をして曖昧な態度を取っている優介を見て、彩穂はさらに目をつり上げていた。あの柳の葉のように細くきれいな美人さんの眉が――もう見事までの柳眉の逆立ちと形容されるぐらいに。

 だからこそ彩穂は、「いい加減聞きなさいっ!」と脅迫めいた口調になっていた。

 しかも、聞いてくれないといまからここで暴れてやるぞ、といった雰囲気を醸し出すのだ。


「ああ、分かったよ。分かったって!」


 ついに従ってしまったか、と優介は項垂れる。


「よぉーしっ」


「どんな話だ?」


 すると彩穂は少し落ち着いたようで、途端にはにかんだような笑顔を浮かべた。

 よくもここまでころころと表情がかわるもの、と優介は思ってはいるが、そんなことは露しらずでせきを切ったように語り始めたのだった。













































はい、わざわざ貴重な時間を割いてここまで読んでくださった方ありがとうございます。

本を買うときは必ずあとがきからチェックする作者、吉岡です。

内容のほうはとりあえずSF路線は突破しました。

ほっと胸をなでおろしている所存です。――なーんて思っていたいのですが、展開は相変わらず遅々として進みません。

もうこれは癖みたいになっているのでしょう。ゆっくりとした展開であっても、どうかこのペースに付き合ってくださいませ。お願いします。

そこで……今日お話したいことはあれです。前々回の話の続きで、セカイ系作品『ポストエヴァ』のお話をしましたよね?! 実はなんと、そのような作品がこの『小説家になろう』さんの中にあるじゃないですか!

と、それを取り上げたいのです。

そんなことをしても大丈夫ですよね。

ホントに勝手なんですが、その作品名は『霹靂のレーヴァテイン』と言います。

この小説は素晴らしい世界観と語彙の豊富さ。しかも面白いですよ!

では、引き続きながら感想を欲していますので、どうか一言お願いしますね。


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