王の誕生
透明のカプセルが立ち並ぶ中、ドラゴンとゴブリンを足して割ったようなモンスターが目を覚ます。
『モンスターニヤスラカナルヒビヲ』
無意識に口にした言葉にモンスターは困惑する
アルスターによって産み出されたドラゴンとゴブリンの混合種であるモンスターは自分で放った言葉に困惑したが、それが自分が産みだされた理由だと本能的に理解した
カプセルのプレートには『ドラゴン✖️ゴブリン・ゴブラン』と書かれていた
ゴブランは産み出された理由は分かったが何をすれば良いのか全くわからなかった
ゴブランは施設内にある無数の書物を読み始めた、何故か文字は読めた
その理由は配合によって子には親の能力が受け継がれるからだ
親であるドラゴンは永い時を生きたエルダードラゴンであった
永い時を生きたエルダードラゴンは人の知力を遥かに上まる
そんなエルダードラゴンの知力をゴブランは受け継いでいた
施設内の書物を読み漁り、あらかた自分のいる世界の事を把握した
『モシカシテ…コレッテヤバインジャネ?』
モンスターのおかれている状況を把握したゴブランは何をすべきか考える
『フム…マズハ俺ノ力ガ、ドノ程度カタメストシヨウカ』
施設内の開けた場所に来たゴブランは自分のステータスを確認する
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー【種族】ドラゴブリン
レベル:1
スキル:サンダーブレス、竜の咆哮、竜鱗、竜化、支配、棍棒B
サンダーブレス:雷属性のブレス
竜の咆哮:味方の攻撃力を10%UP敵の防御力を10%down
竜鱗:自身の防御力30%UP常時発動
竜化:竜となり全ての能力100%UPただし制御不能
支配:人やモンスターを支配したときに経験値ボーナス
棍棒B:棍棒の威力が中あがる
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支配の効果がどの程度かイマイチ分からないがスキル構成はわるくないとゴブランは一人頷く
置いてある木箱にサンダーブレスを吐く
と木箱はバラバラに弾け飛び焼け焦げていた
『木箱デハイマイチ、ワカランナ』
ゴブランは外に出て獲物を探す事にしたがモンスターと争うつもりはない
だが支配する為には力を見せる必要もあるだろう
暫く森の中を歩いていると、傷だらけのリザードマンが三匹コチラに走ってくる
親子だろうか、成体一匹と幼体が二匹
息を切らしながら走ってくると成体のリザードマンがゴブランに気づいた
『ゴブリン⁈何故こんな所に!』
リザードマン族とゴブリン族は敵対しており昨今では小競り合いが多発していた為、警戒の色を示す、決して友好的な種族ではないが、そんな事を言っている場合ではない
『ゴブリン族の方!今は敵対している時ではない!人族が侵略してきたのだ!すまぬが加勢していただけぬか⁉︎』
その直後リザードマンの後方からチェインメイルを着込み右手に槍、左手に盾を持った同じ格好をした人間が10人程飛び出してきた
『居たぞ!逃がすなよ!そいつらを狩れば報酬が出る、かかれ!』
一人だけアイアンヘルムを被った指揮官らしき人物が兵士に言い放つ
傷ついたリザードマン達より人間の速度が上まわり、兵士がリザードマンに槍で突こうとした瞬間に兵士は黄金色の塊に弾け飛び、樹木にぶつかる
ゴブランのサンダーブレスを受けた兵士は樹木にもたれかかり焼け焦げて息絶えていた
『なっ!ゴブリン⁈いやゴブリンがブレスを吐くなんて聞いた事がない』
指揮官はあり得ない状況に戸惑いを隠せないが、まだ兵士はたくさんいる
特殊個体の可能性もあるが、たかがゴブリン一匹どうという事はない
『お前らっ先にゴブリンを殺れ!』
兵士は一撃で仲間を死に追いやったゴブリンに恐怖を抱きながらも上官の命令は絶対である、兵士達は槍で牽制しながらジリジリと包囲していく
『かかれっ!!』
兵士達が一斉に槍で突こうした瞬間、ゴブリンが空中に飛び上がる
緑色の蝙蝠のような羽を動かし飛んでいた、ゴブリンが飛ぶなど想像もしていなかった兵士達は口を開け唖然とし動きが止まってしまう
そこへ裂けた口を大きく開いたゴブランがサンダーブレスを3度放つ、サンダーブレスは兵士達を吹き飛ばし、直撃を受けた兵士焼け焦げ息絶える
兵士が半数ほどに減り、指揮官は慌てふためき未知の化け物に恐怖を抱く
『た、退却するっ!』
残った兵士達は指揮官の指示に従い我先にと逃げ出す
ーあのゴブリンは一体なんなんだ⁈いやあ の化け物はゴブリンなのか?ー
命からがら逃げたした指揮官は緑色の化け物に恐怖しつつ命がある事に安堵する
そして彼の上官へ報告しなくてはいけないと軍の陣が引かれているリザードマンの集落へとと急ぐ
リザードマン達は助かった事に安堵し、力が抜けて、その場に座り込んだ
そしてゴブリンに問いかける
『あなたは一体何者なのでしょうか…』
助けて貰った感謝を伝える事を忘れていたリザードマンは我に返り
『はっ!まずは助けて頂いた感謝がさきですな、ご無礼をお許し下さい。
我は南の森のリザードマン族、ガの集落の族長ギルギットと申します』
『フム、気ニスルナ、ワレハ全ベテノモンスターノ為ニアル、ギルギット殿、ナゼ人族ガコノ森ニイルノダ?』
書物によるとオーム大森林は天然の要塞であり、幾度もの人族の侵略はね返してきたとあった
夜目の効かない人族は闇夜の森では格好の餌食であり、普段敵対しているモンスター達も人間の侵略時には力を合わせ撃退していたのだ
『此度の侵略に気づいた時には既に遅く我らの集落では人族の蹂躙がはじまっていました…』
『ナゼ気ヅカナカッタノダ?』
ゴブランの問いかけにギルギットは首を横に振る、悲痛な面持ち答える
ーワカラナイとー