プロローグ
『コポッコポッ』
ここはモンスターを配合する施設…
だが人の気配はない、施設の主はとうに朽ち果て骸となっている
主の名は、いや「元」主の名はアルスター・バーン・シュタイン
大陸の主導者たる神人国ヴァルガルズに反旗を翻した人物である
アルスターはモンスターの軍勢を率いて神人国ヴァルガルズの国々に侵略したが、神人国ヴァルガルズを守護する八貴士により奮闘虚しくアルスターの軍勢は壊滅した
アルスターは逃げた、逃げて、逃げて、逃げた
『まだ死ぬ訳にはいかないっ!』
残った僅かなモンスターと共にオーム大森林へと逃げた、やっとの思いで逃げ切ったときにモンスターは八貴士率いる軍勢に蹂躙され、残ったモンスターはドラゴン族とゴブリン族とその他の僅かな種族
だがアルスターの心は折れていなかった
『いつの日か、モンスター達に心から安らかなる日々を』
そしてアルスターの願いは透明の培養液の中にいる一匹のモンスターに受け継がれた
モンスターの種族は『ドラゴブリン』ドラゴンとゴブリンの配合によって産まれた混合種である
ゴブリン特有の切れ長の目、細長く伸びた鼻、裂けたような大きな口、通常のゴブリンにはない長いキバという醜悪な顔
人間の子供くらいの体躯にドラゴンの翼と尻尾が生えた緑色の化け物が培養液の中に居た
『ギギッ、モンスターニココロカラヤスラカナルヒビヲ』
モンスターはまどろみの中、創造主であるアルスターの願いを口にし、再び眠りにつく
【神人国ヴァルガルズ】
『オーム大森林の侵略はどうなっておる?』
神人国の王ヴァルガルズ五世は騎士に問う
『はっ!順調に領土を拡大しております!現在、南の森を間も無く制圧完了致します!』
オーム大森林は北、南、東、西、中央の5つに分かれており、それぞれの森を有力種族が納めている
北はドラゴン族
東はゴブリン族とオーク族
西はスライム族
南はリザードマン族
中央の支配者はいない
その理由はアルスターがモンスターにとって神聖視されているからだ、アルスターが最後を遂げた森の中央はモンスター達にとって聖地として不可侵の領域となっていた
『間も無くリザードマン共の殲滅を完了致します。』
騎士は王に跪き答える
『ふむ、他の種族の動きはどうなっておる?』
ヴァルガルズ五世は騎士の報告に満足気に答える
『はっ!他の種族の動きは今の所見られません!』
騎士の報告に気を良くした王は笑みを浮かべる、神人国ヴァルガルズの目標は大陸の制覇である
国の始祖ヴァルガルズ一世が唱えた大陸の制覇こそが神人国ヴァルガルズの唯一無二の国策である
そして、それは叶いつつある
大陸の9割は神人国ヴァルガルズの支配下にあり、残すはオーム大森林のみである
そしてオーム大森林がモンスターが支配する唯一の地となった
オーム大森林以外にもモンスターは生息しているが人間にから身を隠し、細々と暮らしているモンスターのみだ
『間も無くだな…』
王は騎士に聞こえないような小声で呟く
国の始祖ヴァルガルズ一世が唱えた大陸制覇が目前に迫っていた
王は40歳の誕生祭を先日行ったばかりである
だかその顔は深い皺に覆われていた
人族の世界も一枚岩ではない、八貴士がそれぞれ領地をもち、王の領地を含め神人国ヴァルガルズは九つの領地に分かれている
表向きはヴァルガルズ五世に忠誠を誓っている八貴士だが、ヴァルガルズ五世にとって変わり国を支配したいと企む八貴士もいる
『ふう…大陸制覇も進めるが、内の敵もなんとかせねばならぬな、タロス』
タロスと呼ばれた騎士は苦虫を噛み締めながら頷く、大陸制覇が目前に迫っている状況で八貴士同士で足を引っ張り合っているのが現状だ
八貴士は3つの派閥に分かれている
ヴァルガルズ王の派閥
八貴士筆頭のグイナード候の派閥
中立のどちらにもつかない八貴士
表向きはヴァルガルズ五世に忠誠誓っているが、それぞれの思惑を抱えている
『はっ誠に愚かな者が多く…』
タロスは王派閥の八貴士である
『大陸制覇と内乱どちらが先かのぅ』
今はタロスしかいない王の間にヴァルガルズ五世の嘆きがこだまする。