第2呪 古井戸にて1
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誰かいた
いや、いるのはいいのだが、着ている服がゴスロリだった
「あ~、一応聞こうか 呼び出したのは御前か?」
「そうですわ あんなふざけた事をされておいて黙っていられるものですか」
「と言うことは御前、姫室か?」
古井戸の方に月明かりが移り姿が現れる
その姿はとても幻想的で美しかった
黒髪そして黒目なのにゴスロリが映えている
感極まったのかはわからないが俺は本音を漏らした
「・・・綺麗だ」
「へ?・・・ななな、なにを仰ってますの?」
明らかに頬を染めて照れているが
大丈夫だ、俺も頬が熱い 大丈夫じゃねぇよ
「と、とにかく 随分と仰って下さいましたねぇ アホとか何とか」
姫室の言っている言葉など全く耳に入らず
素直な感想が口から零れる
「何か学校の時より綺麗で可愛いな」
一体俺は何を言っているのだ 相手は同級生でしかも同じクラスだぞ
明日とてつもなく恥ずかしくなるぞ
心を落ち着かせろ ニーチェの言葉を思い出せ
(神は死んだ) 凄くどうでもいい
「・・・殺しますわ こんなに辱しめられてしまったら 貴方を殺して私も
死にますわ」
そう言うと彼女はナイフを構えて此方に向かって来た
その姿も可憐であったが、無理矢理頭を働かせる
「随分と古典的だなぁ おい」
ツッコミを入れつつも俺は呪文を選ぶ
一先ずは姫室を止めて話を聞かなければ
<臨 兵 闘 者 皆 陳 裂 在 前>
俺は印を結びながら早九字を唱えた
「これは・・・」
「茶番は終わりだ さあキリキリ吐いて貰おうか、姫室」
「そんなことより何ですのあの奇妙な技は」
「ああ、そうか知らないのも無理はない」
「俺は陰陽安倍家の分家筋[五辻]家の次期当主の五辻三月だ」
俺はさも当然であるかのようにそう言った
彼女の月明かりの下で驚いた顔は美しかった
姫室誉めすぎかな?