きっと誰かが…
君が今こうして何かをできるのは当然のことではない。
きっとそこにはたくさんの人の支えがある。自分が努力してきた土台がある。
その土台ができるまでにもたくさんの支えがある。
これは僕を支えてくれた彼女の話
彼女とは中学で知り合った一際存在感のあった彼女は僕とは正反対で、いつも笑っていた…
遡れば、もう十年近く経つな
人と話すのが苦手で、いつも図書室にこもって本を読んでいた。
「この本… 面白いよね!! あっでもまだ読み終わってないのか…」彼女はそう言うとしょぼんという顔をした。
「大丈夫だよ。 この本もう3回は読んでるから。」僕はそう言って視線を本に戻した。
彼女は目を輝かせながら僕にこの本について聞いてきた。 これが彼女と初めて話したことだ。
そのうち僕は彼女と話すのが楽しくなってきた。初恋だったのかもしれない。
図書室で話すのは嫌だったから、教室で話すのがほとんどだった。
まぁ彼女も人気者だったから毎日話すことも出来なかったけどね。
そういえば彼女がたった一度、涙を見せたことがあった。
僕が彼女をだと男子生徒がはやし立てたのだ。
最初は笑って「そんなことないよ」なんていってたけど男子生徒達はしつこく茶化して彼女の顔から笑顔が消えた瞬間
「やめろよ!!」
周りの生徒は一瞬驚いていた顔をしてこっちを見たが一番驚いたのは僕だった。
自分でも何が起きたのか解からない。
気が付いたら言葉が独りでに出ていて机を叩いて立っていた。
一瞬時間が止まった…
冷静になって僕は「そんなに言ったら…」っと言った時にはクラス全体のテンションは最高潮に達していた。
彼女の顔は次第に歪んで目からはポツリポツリと涙がこぼれた。
それに気づいた男子生徒達が、やべぇやべぇっと彼女に謝った
そして、そのリーダー各の男子生徒が「でも、ほらジョークだからよ?」っと言った瞬間
パチンッ
男子生徒の頬を叩く音が反響してクラス中に静寂が走った。
その日の放課後、僕が校舎を出た時、彼女は校門の前の大きな桜の木の前で待っていた。
彼女は僕を見つけ声をかけた。 いつもの彼女だ。
「今日はありがとう。」彼女が言った。その時の泣きはらし赤くなった目を僕はハッキリと覚えている。
僕が「ごめん」っと言おうと僕が口を開いた瞬間「謝らないでいいよ?」っと彼女が言ったから驚いた。
何で言おうとしたことが解かったのかっという顔をしたらそれを察したのか
「ふふふ、だって申し訳ないような顔してるから。」そう言って彼女は微笑むと
「ねぇ知ってた?この桜の花言葉はね純粋って意味があって… さっきの君は本当に、純粋だなぁって… だからその…」彼女の言葉には迷いがあった。「もう、いいよ ありがとう」僕がそう言うと彼女は
「あの時、泣いたのは嫌だったからじゃなくて、誰も君の純真さに気が付かなかったからだったの。
それが悔しくて悔しくて、君の優しさは私の支えだったから」
僕が優しい?耳を疑った。 何より純粋なんて僕には似合わない。
僕の頭には何が何だか解からなくなってボールペンでグルグルと描いたものが描かれている気分だった。
そのあと彼女はこう言った。
「はじめて話した時の本、実は私のお父さんが書いたの
あの本、私も読んだけど、気が付かないこといっぱいあって、それをたくさん教えてくれて、その時の君の目が一番 輝いてて…」切れ目がなく興奮気味に彼女が言うから僕は圧倒された。
最後に彼女は「お父さんが、言ってたの 読者は自分の支えだ。
その読者に届けるまでにも出版社や他にも多くの人の支えがある。たくさんの支えがあるって、
だからこそ自分の書いた本が誰かの支えになったらいいなって… 君はお父さんの支えでもあって、私の支えでもあったのが、本当にうれしい。 ありがとう」
葉桜が風に靡いた。また時間が止まった気がした。僕と彼女の時間が…
十年近くたったが、あのころから僕らの時間は止まっていたのに気づいた。
あの頃と同じ風が葉桜を揺らす。 きっと彼女は今日も誰かを支えてるのだろう そして、今日も自分が気づかないだけで誰かに支えられている。
僕が彼女に支えられたように、恋をしたように 誰かが誰かに感謝している。
きっと誰かが…