01-03. 〃
〔3〕
「だららららラララ……」
「テーレッテレー!」
「結果発表ぅ~!」
「じゃじゃーん!」
「うざい」
「うざい」
「うざい」
「ごめんなすってwww それで、合計で八十名いたわけですが」
「この数字がね、公約数とってみるとアレの数ってね」
「五で割れる、もしくは十六の倍数。その意味するところは」
「まさにあのMMOアカウントのサブキャラ作成枠最大数が、十六」
「そして……かつて、複数アカウントプレイやってた時期の契約最大数が、五」
「ぷぎゃーwwww 産廃男のまつろぉwwwww」
「廃人どころか準廃にさえなれなかったからねぇ」
「ていうか栽培大回転の残滓だろ。特に五アカ目は」
「世間様一般の基準からすれば十分に狂人呼ばわりされるありさまですけどもね」
「まあ米相場はうまかった。ていうかスシ握ってるだけでも楽しかったな、あの時期は」
「仁義なきワサビ争奪戦」
「怒りの米酢買い占め」
「ああ……SUSHIが世界を覆いつくす!」
「で」
「名前がまたな」
「まず、“中の人”の姓名など具体情報が全員不明。記憶に不自然な欠落がある」
「極東島国生まれの成人男性っていう大まかな確信だけはあるんだけどな」
「次に、各人なぜかキャラクターネームに相当する呼称の自己認識がある」
「おれの名はイクシオトキシン! 通称はウナゴ。僻地隠居と採掘篭もりの名人だ。おれのような無責任気分屋でなけりゃあ、百戦錬磨の栽培農家どものリーダーは務まらんヒムオ」
「おれの名はアコニチン! 通称ねっこ。自慢の調理スキルで、ブドウジュースからメロンジュースまで何でも搾ってみせるぜ! あ、にゃー」
「そのノリか」
「デレデデ、デレデ、デッデデーデ」
「デレデデ、デッデ、デーレデ」
「ずだだダダダ、どかーん」
「テトロドトキシン。通称フグ白。回復見逃しの天才だ。範囲攻撃飛び交うNM戦でもヘキサってみせらぁ。でもアムネスフィアだけはかんべんな! ヒュメース」
「ペーペレッペー」
「ペレッペ、ペッペ」
「ペレッペー」
「よぉーお、お待ちどお! おれさまこそソラニン。通称ジャガメ・オア・ナスカ。弱点つき要員の腕は天下一品! 養殖産廃? ペルル着てウッコ撃つ? だからなに? エルメェス」
「デレッデ、デッデ、デレデデデ」
「ハイッ」
「おれは……あれ? もう紹介枠使いきってない? ちょっと数合わないんですけどー」
「そこはほら、紅一点な枠の人がいたこともあったじゃん? そこを爺一点枠ってことで」
「セリフ覚えてないよ……」
「いいからほら。BGM終わっちゃうよ? チャーチャチャッチャー、チャラッチャチャー」
「ええと、おれ、いやワシの名はウルシオール。通称かぶれ汁。えー、釣りがちょっと出来ます。エル爺の黒魔ですが、栽培とタビュラ回しを一時期やってただけの余りレジコ活用枠だったので基本産廃キャラでした。……じゃった」
「パパッパ、パーパー」
「パーラー、パパ、ッパ!」
「…………うむ」
「いいんじゃないでしょうか」
「マジかよ。いや、嫌いではないんだけどさ」
「ともかく、他のヤツもレートリルだとかクラーレだとかパラチオンだとか」
「コニインだとかムッシモルだとかカコジルだとか」
「ぜんぶ毒じゃん! っていう」
「そのツッコミがリアルプレイ中に欲しかった……」
「すごいしみじみ……」
「誰も触れてすらくれなかったからな」
「てーか由来を気にする以前にアルファベット表記が読み解けていなかった可能性も」
「あるな」
「あるか」
「あるある」
「そもそも、元は簡単な食べ物の名前ばっかだったんだけどねぇ」
「何度かのサーバー統廃合で、名前の重複優先に負けて改名の強制が、な」
「すぐ思いつけるような名前がぜんぜん取れねぇでやんの」
「もうムキーてなってな、あれは。だからヒネくれた単語の分野を検索しまくった」
「なんせ八十キャラ分だから、シリーズ性のある付け方しないと賄いきれないんだよね」
「もはや何もかも懐かしいとはこのことか」
「いまとなってはいい思い出……か?」
◆
「で」
「話が横に流れすぎよね」
「うむ」
「だがそれはノリが通じすぎるせいでもある。これは先の指摘が示す問題と同じだ」
「つまり……おそらく、おそらくだが。おれらは全員“中の人”が」
「同一人物、なんだろうなぁ」
「もしくはそのように記憶を思い込まされているか」
「“インストール”されているか、か」
「転写体だか複製体だか知らんがね。あ、Dロイスとかそういう界隈違いの話はNGで」
「それはツッコミ誘い待ち受けというか当て身投げの構えなのか、と小一時間」
「いずれにせよ」
「肉体からして異なるということは、人物としては別物だということになる」
「人間の独自性は、肉体の無二不一致に支えられたものだからな」
「おれたちもいまは似通っているが、時が経てば分化してゆくことだろう」
「あくまでも、この肉体と精神が本物であるなら、だが」
「そして、この認識と活動が現実であるなら、だが」
「うむ」
「ゆえに、“この自我意識”がいますぐ崩壊だとか発狂だとかいったことにはならない」
「認知の連続性も問題にはならない。“このおれ”は、いま始まっているおれで問題がない。元となった人物にとっては処遇の問題があるのだろうが」
「それらが幸運なのかどうかも分からないがね」
「どこかには罠があるのだろうな。ともかく、そうした先の話はひとまず置いておくなら」
「目先の話としては」
「おまえも、おれか。と」
「おれだ。そしておまえだ」
「おまえがおれでおれがおまえで」
「いやおれがおれだ」
「いやいや、おれがおまえだよ」
「おれがおれがおれれれれ」
「そこはおれで」
「どうぞどうぞ」
「それやめい」
「戦争勃発しちゃうからね」
「うむ」
「おまえがおまえだ!」
「おまえーっ。戦士がなーっ。クフカニのなーっ」
「ゆるさーん!!」
「そのネタやめとけや……」
「いかんのか?」
「いかんでしょ」
「いかんのだった」
「いかんことになった」
そんな奴らが八十人衆。
余りネタ。
「えー、マジ異世界転生ぇ~?」「チョ・モーイ」「安易な転生頼みが許されるのはぁ、小学生までだよね~」
「キャハハハハッ!」
もし神様転生的シーンから始めるなら使いたかったけど丁度いい場面がなかった……。でござる。