記憶のカケラ
マジで俺をまきこむな!!の作中に出てくるお話です。
もし良ければ、本編もどうぞ。
何の用事だったのかは覚えてないけれど、何か大切な用事だったと思う。
とっても大切な用事というほどでは……ううん、とっても大切な用事だったかもしれない。
どれほど大切な用事だったのかは、覚えてないから計りようがないけれど、
とにかく大切な用事だった。はず。
私はステージ0にいる。
私はそこから別のステージに出掛けようとしていた。
つまり、大切な用事は、他のステージでやらなきゃいけないこと、なんだね。
ステージからステージへの移動は一瞬。
転送先の座標を指定して、実行コマンドを送信するだけだから。
転送にかかる時間は本当にわずか。
秒で表そうとすると、0.0000000000000000000……って並べてもまだ足りないぐらい短い。
ほぼゼロ秒、といってもいいと私は思う。
私は出発前に、別のステージにある何かを捜していた。
そして、そこに行って何かをしようとしていた。
大切な用事だから、時間がないから、早く“何か”を見つけだして、そこの元に行かなくちゃ。
――私は検索プログラムを呼び出して、その“何か”の場所を見つけた。
自分を転送するために、転送用のプログラムに、その座標を入力する。
この転送プログラム、私あまり使ったことがないから、ちょっとドキドキする。
でも、そんなことは言ってられない。
どうしてかは覚えてないけれど、時間がないから。
覚えてないことばかりで、私って情けないよね。
管理人として失格かも。違う。“かも”じゃないよね。失格だよね。
座標の入力を終えて、最後に実行コマンドを入力。
私の転送が始まる。
転送はほんのわずかな時間だけれど、
私はその転送路の隅に、
不穏な影みたいなものが隠れているのを見つけて、転送を中止して、転送路に降り立った。
転送路に異常があったら、
早い目に直しておかないと、後々使いたい時に使えなくて、困っちゃうかもしれないからね。
私はその影みたいなものに近づき、
まずこの不穏な影が何なのか、プログラムコードの解析をしてみることに。
……何これ。
解析結果を見て驚いたのは覚えてる。
でも、どうして驚いたのかは、これも覚えてない。思い出せない。
肝心なところが思い出せない。一番大切なところが。
解析結果の断片だけでも思い出すことだできたら……
そう私は思う。でも、私の記憶からは何も反応がない。だから覚えてない。
突然、その影が動いた。




