↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

喫茶 ためいき

いまどきの転移って

掲載日:2026/08/11

転生の次は転移。の外側

彼岸と此岸の狭間、転生を司る神々のしもべたちが迷い込む一軒の店がある。

CAFÉ Blessyou(ブレッシュ)。そこではボルゾイみたいなマスターが来店客の悩みをきいている。

さて、本日の迷い子は―――――。





上の奴は気の毒な人が好きらしいのよ。天涯孤独、ブラック企業社員、ドアマットヒロイン・・・。

そういう人を見つけると、すーぐ転移させちゃう。

転移した当人は、チート能力を与えられて、スローライフだの、下剋上だの、自由に自分らしく生きてるらしい。


しかし、物語ではあまり語られないボクたちの仕事をきいてほしいんだ、マスター。






―――――本日のお客様は、店に入ってきた時からいささか御酒が過ぎているようですね。

ワインをご所望ですが、モクテルのキティ(ぶどうジュース&ジンジャエールのノンアルカクテル)をお出ししておきましょう。ここは居酒屋ではなくcaféなので。


いろんな方が迷い込むCAFÉブレッシュでも、ここまで酔われている方は初めてかもしれない。

薄情にも、ミルクは戸棚のどこかに隠れている模様。さすが猫、危機回避しましたね。

常連くんは諸事情で今日はまだ来ていない。こういう手合いはあいつの方が得意なのに。


…とりあえず、悩みをお聞きしておきましょうか…。





―――――ぶっちゃけ『転生』のほうが、面倒が少ないんですよ。

故人になるわけだから、もろもろ行政やら縁者やらが手続してくれるし。亡くなる理由も病や悪人が絡めば、こちらが恨みを買うこともない。

でも、上の奴は来世より今世で幸せにしたいの!なんて妙にこだわるせいで、も~面倒。

だってさ、『転移』って元居た世界では要は『失踪』じゃん。


それでもさ、昔だったら「神隠し」とか言われて有耶無耶にできたのさ。

でも、イマドキ、そんなヒカガク的な話では、誰も納得してくれない。

んで、『失踪』にかかる手続きは全部ボクらの仕事になったワケ。


そこんとこ、上が全っ然理解してくんない。いやね、普段はいい人なんだ。

けど、あのひとの知識がアプデされるのはいつになるんだか。


まずは家。清掃業者に扮して、速やかに退去作業。

家財を換金して退去費に充てるけど、足りないと担当の自腹になる。

ちなみに家財には、フィギュアとか同人誌とか結構あって…。少しでも高値が付くように調査している内に、勝手に沼ってヲタクになった同僚もいたな。まぁ、一種の職業病ですよ。


んで、大家さんとか使って警察に行方不明を訴えてもらう。この作業、ひどいと担当者は休みなしになる。でもまぁ、この辺は体力的疲労がメインだし、終わったら休みがもらえるからいいのよ。


次が最たる問題で、対象がブラック社員だった時ですよ。

フツーの企業なら、精神的疾患の診断書っぽいものとか揃えて辞表出せば、いやな顔されるだろうけど、なんとか誤魔化せる。

それが、ブラックな会社だと話通じない。代わりにお前がやれとか、賠償金払えとか、無茶言ってくるし、それが原因でノイローゼになる同僚もいて…はぁぁ…。


イマドキは、退職代行業なんて便利なものがあってさ。

最近はそこに依頼してるんだが、その費用はもちろん自腹。


猫を飼いたくて貯めた貯金がさぁ、どんどん減ってくの。本気で泣きそう。

イマドキなんで自腹なんだよ。悪しき習慣じゃん。もう仕事辞めたい。

いつもの代行さんに僕の分も依頼できたらいいのに…。





――――――そう言って酔客は何時の間にかグズグズ泣き出していた。

お出ししたのはノン・アルコールのはずですが、酔いはさめませんね。


膝の上にはグレーの猫が撫でられている。…ミルク、いつの間に膝の上に…しかも新顔の客に触らせるとは珍しい。


そろそろ水をお出ししようとグラスを用意していたら、やっと来た常連くんが声をかけた。

「お前さんよぅ、オレもそういうの経験してるから、気持ちわかるぜ。そういう時は一緒にこのクロカンブッシュなマカロンタワーだ。一緒に食べるか。」

「お、おっ、おやっさん…!ありがとうございます!!顔に似合わない感あるし、 ネーミングも変だけど、ゴチになります!」

「おぅ!?お前さん調子いいやつだな!?

…なぁ、もういっそお前さんが、そーいう『アフターケア専門部署』作って上の奴から予算ぶんどったらいいんじゃねーか?」

「…あっ!」





後にその酔客が作ったアフターフォロー部は専門スタッフを導入、一個人の負担を減らすことに成功し、上にも認可された。

その中でも、記憶改ざんやもみ消し係の黒スーツ隊は、通称MIBと呼ばれ花形のように扱われている。


だが、その通称が実は【マジ(M)上司いつ(I)かぶん殴りたい(B)】という上へのメッセージの略語であることは、あの酔客とマスターだけが知っていることだとか。


酔客は仕事ができるが故の苦労人。


次回、召喚クレーマー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。