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第38話 武天"幼女"─万能メイドの最高のおもてなし。

 【俺の家】のダイニング。


 テーブルの上には、瑞々しい野菜たっぷりのサラダが山と盛られている。


 メインは熱々を保ち、たっぷりと鍋の中に。


「ヒキールさま。その取り皿とコップはみなさまの席に。冷たい果実水は二種類ずつテーブルの両サイドに分けておいてください。

 ……それから、お鍋の様子を見ていただいて助かりました。こちらも、あとは仕上げを少しだけ。おかげで、なんとか間に合いそうです」


「おう! なぁに気にするなって! 料理はできねえけど、これくらいならいつでも手伝うからよ!」


 椅子に腰掛け、澱みなくチクチクと手を動かし続けるシルキア。

 その指示に応えながら、俺はせっせ、カチャカチャと昼食の準備を手伝う。


 さっきまでは焦げつかないようにシルキアが用意した昼食のメインの入った鍋を一心不乱にかき混ぜていた。

 いつもなら全力で甘えてまかせっきりにしっぱなしだが、なんせいまのシルキアはなんとか間に合わせようとめちゃくちゃ忙しくて、とてもじゃないが手が離せない。


 いまも動きの残像が見える速さで、針と糸と手を一心不乱に動かし続けている。


 手伝えることは手伝わねえと。


 あまりにもかぐわしいスパイスのにおいの誘惑。

 ……鍋の中身を何回かつまみ食いしかけたのは、ここだけの内緒だ。未遂だし。


「うむ! たっぷりと甘えさせてくれた礼に、プリアデにはあとでわしが一度だけ見本を見せてやろう! 

 あとは自分で体得を……って、ふおおぅ!? なんじゃなんじゃ! 超! 美味そうな香りがするのう!」


「って、アマシュ! 【家】の中で走らない! もう!」


 ちょうど準備を終えたところに、ほんのりと髪を湿らせて湯気を立たせてやってきた二人。

 追いかけるプリアデの格好はラフな軽装だ。そして、その前を駆けるアマシュの格好は。


「ふふ、すっかり仲よくなられましたね。お二人とも。さあ、席についてください。アマシュさま。

 昔に私の使っていたおさがりで恐縮ですが、そのお召しもの、とてもよく似合っておいでですよ。思ったとおり、とってもかわいいです」


「ふふ、そうね。ほらアマシュ。せっかくかわいい服が汚れないようにこれつけてあげるから、じっとしなさい」


「うむ! ありがとうなのじゃ! シルキア! プリアデ! こういうひらひらしたのを着るのは、わしも初めてじゃ! とってもらぶりぃで、とっても気に入っておる!」


 そう言って、首もとにプリアデがつけたナプキンを垂らし、シルキアのおさがり。

 子ども用のメイド服を着たアマシュは、花咲くように満面の笑顔を見せる。


「ふふ、どういたしまして。ですが、そのお礼はまず何よりヒキールさまに。この心ばかりのおもてなしも、すべてはまずこの【家】があってこそなのですから」


「うむ、そうじゃな! 先ほどはわしも調子にのりすぎて、すまんかったのう。それからあらためまして、ありがとうなのじゃ! ヒキール!

 さすがはあのディザの、んんんっ! な、なんでもないのじゃ! と、とにかくとにかくおぬしはすごいのじゃ!」


 ……ん? いま何か言いかけたような? ディ? ま、いいか! 

 それより何より、もう口の中芳しいスパイスのせいでよだれがダラダラで辛抱たまらねえぜ!


「おう、アマシュ! 確かにその謝罪と感謝、受け取ったぜ! それより、いいから早く始めようぜ! もう鍋かき混ぜてるときから、早く食いたくて食いたくてたまらなかったんだ!」


「ふふっ、もうヒキールったら。でも、本当にいい香りね……!」


「おおう! 話がわかるのう、ヒキール! そうじゃ、ディザのことはなんでもないのじゃ! わしももうお腹ペコペコじゃ!」


「ふふ。はい、ではいただきましょう。ヒキールさま、プリアデさま、アマシュさま、おかわりもたっぷり用意してありますので」


 そのシルキアの言葉を皮切りに、俺たちはいっせいに熱々のライスとルーをスプーンでたっぷりとすくい。


「「「ん〜! 最っだぜ(じゃ)〜!」」」


 三者三様、そっくりな声、そっくりな顔で、老若男女問わず、みんな大好物の昼食のメイン。


 体は子どものアマシュに合わせて少し辛さ抑えめ。

 スパイスたっぷりのシルキア特製カレーに口もとをだらしなく綻ばせたのだった。



 それから、カレーのあとには最高なデザート。

 シルキア特製季節の果実のシャーベットにも、「「「ん〜〜っ!」」」と三人そろってそっくりに舌鼓を打ち。


 そして。


「ふぁ〜。もう食べれぬ〜。幸せじゃあ〜」


「アマシュさま。こちらをどうぞ」


「んぁ? なんじゃこの包みは……ふおぉ!? お、おぬし! こ、これは、まさかっ!?」


 お腹いっぱいの幸せに浸り、食後のお茶をまったりと楽しむ緩みきったアマシュに。


「ふふ、私からの心ばかりの──サプライズです」


 シルキアは茶目っけたっぷりに片目をつぶってそう笑ってみせたのだった。

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