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処刑された悪の侯爵令嬢に代わり、彼女の心を歪めた相手を処分します。  作者: まんじ(榊与一)
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第13話

分館に着いても、直ぐに母親の元に案内されたりはしなかった。

体調がすぐれないとの事で、まずは用意された部屋に通され、暫く待つよう執事に告げられる。


アレーヌの母親であるカレンは、きっと面倒くさい事は後回しにするタイプなのだろう。


まあこれは予想できていた事だ。

前史でアレーヌが初めて来た時も、同じ理由で10日程待たされているからな。

もちろんその後に顔を合わせた母親の顔色は、大変血色がよい物だった。

それを見て、アレーヌは母親にも自分が歓迎されていなかった現実を突きつけられている。


嘘を吐くんなら少しは取り繕え。

心からそう思う。


「入りなさい」


「失礼いたします」


ドアがノックされ、返事を返すと付いて来た騎士達が部屋に入って来てお辞儀する。

彼らは屋敷にある通信機の様なマジックアイテムを使い、ジェラルド侯爵に連絡を入れるため俺から離れていた。


勿論その内容は完全に把握している。

召喚したデーモンが憑いているからな。

まあこいつらに関しては、暫く裏切る事はなさそうではある。


とは言え、人間は物事を忘れていく生き物だからな。

喉元過ぎればなんとやらだ。

裏切らない様、ちょくちょく痛みを与えて俺の恐怖を魂レベルに刻み込んで行ってやろう。


取り敢えずオートモードを……と思ったが、そういやミウの兄弟の件があったな。


足元で丸まっている猫の兄弟を見る。

オートモードに、彼らの住処を見つけるといった特殊な行動を取らせたりは出来ない。

其の辺りは、俺がちゃんと動いて用意してやらないと駄目だ。


それに今考えている皇子に対する報復のためにも、金は必要である。

少し早いが、本格的に金策を始めた方がいいのかもしれない。


だがどうした物か……


貴族とは言え、7歳のアレーヌに動かせる金はない。

前史でのアレーヌはアクセレイ家の家紋入りの宝石――一族の習わしで12になったら家から貸与される――を担保に種銭を作り、とある事業に投資して資産を一気に増やしていた。


更にそれ以外にも手を伸ばしていき、最終的にアレーヌは皇子との結婚を条件付きで買える程の資産を手に入れている。

彼女は間違いなくその手の方面に非凡な才を持っていたと言えるだろう。


――俺も同じ様な事をすればいいのでは?


それは止めておくつもりだ。

特に最初の投資は、やるとイメージがかなり悪くなってしまうからな。

実はこの投資こそが、アレーヌが毒殺事件以前からも影で悪女呼ばわりされていた原因だったりもする。


因みに、彼女が投資した事業の内容は海外からのお茶の輸入だ。

これが貴族の子女の間で大流行して、アレーヌは大金を稼いだ訳だが……


――実はこのお茶には、麻薬成分が含まれていた。


まあそこまで強力な物ではなかったからすぐ大事になる様な事はなかった訳だが、時間の経過につれてじわじわとおかしいんじゃという噂が広まり、最終的——販売開始から3年目――に検査で問題があると出た事で、そのお茶は規制まで持っていかれている。


それは犯罪にならないのか?


それはまあ問題ない。

国の方で未発見で、特に禁止されていた訳ではなかったからな。


貴族の子女達に影響が出ているので、輸入に関わっていた業者達はそれ相応のペナルティを受けはしたが……投資していただけのアレーヌは罰せられる事は無かったし、しかも資金回収は事前情報で完璧に終えていたのでノーダメージだ。


――周囲から恨まれること以外は。


まあ俺も恨まれる事を覚悟で手を出せば金は稼げるんだろうが、折角の復讐劇でアレーヌの名声を再び下げるのは、個人的に好ましくない。

なので、他の方法で金を稼ぐつもりである。


一応、お茶関連以外は健全な物だったが……


タイミングだったり立ち回りが難しい物が多いので、そう言った能力に長けたアレーヌならともかく、俺が同じ事をやろうとしても失敗する可能性が高い。

なので、それらを追従する気は無かった。


まあそうなって来ると、チートの能力を使って稼ぐしかない訳だが……


冒険者になって一攫千金!

と言うのが俺向きで手っ取り早くていいんだが、残念ながらこの世界にはそもそも魔物が居ない。

よって、それを狩る冒険者も存在しなかった。


「悪党からの巻き上げなら……」


「は?」


騎士が驚いてこっちを見る。

どうやら考えていた事が、無意識に口からこぼれてしまっていた様だ。

まあ聞かれたからと言って困る物ではないのでいいが。


「気にしなくていいわ」


あくどい貴族辺りの屋敷に忍び込んで金品を頂く。

これが現状できる金稼ぎでは、一番手っ取り早い気がする。


だが金を奪われた貴族は、何らかのあくどい手を使って減った分を弱者から巻き上げる可能性が高い。

それは言ってみれば、余計な被害の拡大に間接的に加担するに等しい行為だ。


それはなぁ……


まあ殺してしまえばそう言う事は無いのかもしれないが、自分に攻撃してきた訳でもない相手をあまりバンバン殺すのは流石に問題だろう。

俺がこの体に入れられたのはアレーヌの復讐のためであって、決して押し込み強盗する為じゃないからな。


この世界に送り出される時に、そういった部分についての説明は神様からされていない。

オールオッケーの可能性もあるが、常識的に考えればアウトだ。

何も考えず派手にやって神様からペナルティを掛けられたら洒落にならないし、最後の手段位に考えておいた方がいいだろう。


困ったな……

何かいい金策はない物だろうか?


「あの……お嬢様。考え込まれていらっしゃるみたいですけど、何かお悩み事でしょうか?」


眉間に皺を寄せて考え込んでいると、ミウが心配そうに尋ねて来た。


「ええ。ちょっとこれから先の事を考えて、使えるお金の工面を考えていたのよ。何かいいアイデアはないかしら」


隠す必要も特にないので、彼女に意見を尋ねてみた。

答えが出ない時は、人の意見を聞くのも一つの手だ。


三人寄れば文殊の知恵と言う。

つまり数はパワーなのだ。


「お金の工面ですか?うーん……お嬢様は神聖魔法を扱う事が出来るんですよね?」


「ええ」


神聖魔法ってのは回復系の魔法を指す。

ミウ達の弟を回復させたのがこれだ。


「でしたら、ポーションを作って販売されてみるというのはどうでしょうか?」


ポーションとは魔法の薬だ。

各種魔法の力が込められており、種類ごとに薬や美容などの様々な用途に使い分けられている。

熱死病の特効薬も、その一種だ。


「ポーション販売……」


ミウは神聖魔法が使える、イコール、ポーションを作れると考えている様だ。

まあ魔法をかけているのであながち間違いではないのだが、元となる液体の生成には薬学的な特殊な知識が必要となる。

そのための素材も当然用意しなければならないので、実際は魔法が使えるだけでは作り出す事は出来ない。


彼女が勘違いしたのは、この国でのポーション類の販売を教会が完全に取り仕切っているせいだろう。


だが――


「いい案ね。採用よ」


――問題ない。


俺に薬の詳しい知識なんて物はない。

ないが、代わりに神様から貰った精製術という能力がある。

これは素材+魔法でポーション類を生み出すチートだ。


作りたい物から逆算して素材と魔法を指定してくれるので、俺自身に薬品や調合技術の様な知識は必要なかった。

特殊な壺に物をぶち込み、魔法をかけさえすれば一瞬で完成する。

まあ出来たポーションを入れる瓶は別途用意する必要があるが、そっちは買うか錬金術で用意すればいいだろう。


因みに錬金術とは、錬成術の物質版みたいな物だ。

その気になればこの世界にないミスリルなんかも作れるので、ひょっとしたらそれで大儲けできる可能性はある。

だが存在しない物を流通させるのは流石に不味いと思うので、やりはしないけど。


俺は早速素材確認のために精製術を発動させる。

すると掌の上に乗るサイズの小さな茶色の壺が、目の前に現れた。


「ひゃっ!?」


「うわっ!?」


予告もなく急にやったせいで、ミウ達を驚かせてしまった様だ。

特にそれを見た騎士達の顔からは血の気が引き、がくがくと震え出す始末。

どうやら、俺に何か酷い事をされるんじゃないかと考えた様だ。


ビビりすぎ。


まあそれだけデーモンによる拷問が効いている証ではあるのだろうが。

俺は怯える騎士達を無視して、傷などを回復させるプレーンなポーションの素材をチェックした。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


『面白い。悪くない』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。


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