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第1話

アレーヌ・ビ・アクセレイは稀代の悪女と陰で囁かれていた。

だが面と向かってそれを彼女に口にする愚か者はいない。


何故なら、彼女はアクセル帝国建国時の臣であるアクセレイ侯爵家の娘だったからだ


だがそのアレーヌが今や、城の薄暗い地下牢に閉じ込められる身となっていた。

服や髪は汚れてよれよれになっており、その姿から長い間閉じ込められている事が分かる。


――彼女の瞳は暗く淀んでおり、誰もいない牢屋で小さ呪詛の言葉を繰り返す。


「確かに私が悪かった……でも、私だけが悪いんじゃない。何で私だけ?こんなの不公平よ。そうよ。皆……皆死ねばいいのよ」


名門であるアクセレイ家に生まれ、皇后にまで上り詰めたアレーヌ。

だが今の彼女には、もはや何も残されてはいなかった。


地位も、名誉も――そしてその命さえも。


彼女はじき、処刑される事になっている。


「神様……私は何でもします。必要なら、命だって魂だって捧げます。だから……だから……」


アクセル帝国屈指の名家の娘であるアレーヌが何故こうなってしまったのか?

それを説明するには、その出生まで遡る必要があるだろう。


彼女の父は、アクセレイ家の次期当主を約束された長子だった。

そしてその母親は、アクセレイ家と長らく敵対していた政敵とも言える家の子女だったのだ。


両家の表面上の和解のため。

そのためだけに政略結婚刺させられた二人は――


互いを死ぬ程嫌っていた。


それも当然の話だ。

家のためとはいえ、それまで醜く衝突しあって来た相手を誰が愛せようか?


そんな冷え込んだ仲の夫婦に、望まれぬ娘が誕生する。

それがアレーヌ。

当然彼女の両親は相手の血が入った子を毛嫌いし、彼女に愛情を注ぐ事はなかった。


何故自分は両親に愛されないのか?


愛が与えられず、孤独だった彼女は両親に愛してもらうべく、優れた貴族たろうと必死に努力する。

だがそれは彼女を愛していない両親の気持ちを、唯々逆なでするだけだった。


やがてアクセレイ家の当主となった父と妾との間に、男児が誕生する。


蝶よ花よと持て囃される弟に対し、誰にも見向きされない自分。

その嫉妬と悲しみがないまぜになった感情が、アレーヌの心根を大きく歪めてしまう。


やがて彼女は完璧な貴族の振る舞いを持つ、悪女へと成長していく。


表面上は柔らかく振る舞い。

裏では、平気で自身の鬱屈をぶつけるかの様に他人を傷つける悪女へと。

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