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第一幕

感想等、気軽にお願いします。

 静寂に浸っている暮夜。

 男の周囲は酷く気鬱で男もまた神妙な面であった。

 一昨日、最愛の婚約者が息を引きっとた。その女はクレオパトラのように美々しく、愛想も良かったので女の元に通う者は尾を引いていた。葬儀では、それは多くの者が弔った。

家族や友人なんかがさまざまな品を持ってくるので、棺には副葬品で溢れていた。

 火葬を見届けた後、自然と公園へ足を運んでいた。その公園はチカチカと点滅している街灯の下に一脚のベンチがあるだけだが、二人で度々訪れた場所だ。男はベンチの右端に座るとそのまま物思いに耽り、徒に時間が過ぎて行った。

 どれくらいの時間が経った頃だろうか、男の隣に一人の女が座っていた。

 女 今晩は、今日は星が綺麗ですね。

 男 ……いえ、空は曇っていて星なんてひとつも見えたもんじゃあないよ。

 女 あらそうですか。ひどくお疲れのようですけど、曇っているのは貴方の心ではなくて。

 男 (声を荒げて)キミが誰かは知らないけど、ほっといてくれるかい。

 女 …何かございましたか。以前は、あんなにもご壮健でいらしたのに。

 男 (肩を落として)キミにする話じゃあないよ。

 女 明日、私はここからいなくなります。もう、貴方と会うことはないでしょう。明後日も次の日も、10年後だって。

 男 本当に、誰かに話すようなことじゃない…。

 女 …聞かれたくないことを無理に聞くのは野暮ですよね。代わりといってはなんですが、私のこと話しても宜しいですか。

 男 (うつむいたまま、うなずく)

 女 …私、明日、死ぬんです。

 男 (驚かず)急にかい。

 女 はい、急にです。

 男 また、どうして。

 女 長年、想いを寄せていた方が亡くなりました。

 男 なぜ、明日なんだい。

 女 最期に彼との思い出の場所を巡ろうとおもいまして。

 男 今夜は星が綺麗なのでしょう。

 女 精一杯の見栄だったんですけど、貴方と話しているとそうでもないように思えて、不思議です。

 男 それは、相手の方も浮かばれないね。だって、こんな初対面の僕にでさえ……。

 女 きっと、そのために死ぬのでしょう。私には一生彼を思い続けることができない。しかし、彼よりも魅力のある方は現れないでしょう。私はこの先の人生がつまらなくなるのではないかと堪らなくなるほどおそろしいのです。

 男 ……。

 女 こんなこと、あまり人に話すものではありませんね。

 …そうだ、星は好きですか。

 男 嫌いではないけど…。

 女 私は好きです。(空を見上げて)手の届かない所にあって、

 キラキラと光っている。よく憧れとか希望とかに喩えることもわかる気がします。

 男 …死者を喩える時にも使われるじゃないか。

 女 ええ、私はお亡くなりになった人の想いの不変性を表しているのだと思います。

 男 想いの不変性、ですか…。

 女 何だか結婚のようですよね。相手に赤い糸を絡めて殺めてしまう。そんな気がします。

 男 …結婚。

 (僅かに顔をあげて)やはり、キミに話してもいいかい。

 女 ええ、聞きましょう。

ー暗転ー

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