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俺と彼女の復縁(1)

そんな事件が高校の頃あったが今は違う。


 俺らはあの時別れてからいじめがなくなった。その時の俺は複雑な思いだった。


 理由はそれ以来、東阪は元の明るさを無くしてしまったのである。休み時間は外の景色に浸っていて何か大事なものが離れていく目だった。窓に手を当て何かを掴もうとする態度に、俺は間違っていたのか、と何度も思った。


 ——そんな時だった。


 別れてから半年——


 俺は駅の近くにあるおいしいパン屋に来ていた。レジに並び会計をしていると男たちの声が耳にかすれた。


「お姉さん、今なにしてるの?」

「学校帰りです」

「そっか、ちょっとでいいから付き合ってくれない?」

「は、はい」


 どうやらナンパっぽいが女の子はすんなりついて行くようだ。無防備な女の子だなと思う。知らない男の人について行くのは危ない。


 俺は様子だけ見てみようと思い、声のする方に向かった。


 俺は容姿を見て一瞬で分かった。艶やかな黒髪が腰まで伸びている女の子。——東阪みなだ。前まではずっと隣にいた女の子だ。


 そして東阪は最初、うつむいていてが少し顔を上げると、俺と目が合った。

 

 クリンとした可愛らしい瞳に俺はまたドキリとしてしまう。またこうして出会った時、俺は、未練がはっきりあるのだと理解した。


「知り合い?」

「ち、違います……」

  

 制服が一緒だったため、知り合いなのか確認したようだ。だが、東阪は俺のことを知らないと言った。


「じゃあ、行こ」


 東阪は返事をせず、こくんとうなずいた。


 男の人はヤンキーみたいなイメージはなく、むしろ爽やか風の男だった。だからついて行ったのか——いや、違うな。俺はその考えを頭の隅に追いやった。


 東阪はそんな無防備について行くような人じゃない。


 俺と付き合っていた頃、男関係との距離感に不安はなかった。それも東阪が俺に心配かけないようにしてくれていたからだ。


 彼女は可愛くモテる方なので、待ち合わせをしている時、ナンパをさせられている時を何回か見たことがある。だが、東阪は絶対について行かず、こう言った。——『彼氏がいるので』


 だからだろうか、断る理由が見つからず、精神的にも厳しい中、ついて行く方に行ってしまったのだろうか。だが、これは全て俺のせいだ。


「行かないの?」

「あ……」


 東阪はそこから一歩も動かなかった。俺を見ては、そっぽを向いている。やっぱ行きたくないと思っているのだろうか。そして助けてと。


 俺は迷わなかった——


「——あの先生が学校に戻ってきてって言ってたよ」

「ほんと……? 戻らないと……、ごめんなさい、お兄さん」 

 

 東阪には始めて合ったかのように言葉をかけた。なにがなんでも友達として接することはできなかった。


「あ、じゃあ連絡先……」

「提出物のことだって」


 男の言葉にかぶせて言う。連絡先だけでもなんて言おうと思ったのだろう。


「あ、ありがとう」

「うん」


 俺は短く言葉を返してこの場を離れようとした。


 すると——


「さ、さ、さっき学校で友達が探していたよ、き、き、き君のこと」


 早口すぎて聞き取れなかったが、長年一緒にいてなのか、何かを待っているように思えた。


「学校に忘れ物したんだった」

「な、なら一緒に行こ?」

「ああ」


 この時東阪は俺のことをどう思っていたか知らない。だが、俺は少しでも話をしたいと思ったのである。


 これはいけない事なのか。そんな考えよりも欲《《欲》》が勝った。


 いつの間にか、男の姿も消えていた。


 そして思った。あの男の人見たことがある——


 

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