第六十三話
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「……よしっ!まずは地図作製のスキルを上げたいから、今回はシフのレベルアップを優先しよう!」
斗真は、シフの地図作製とハンタの収納袋のどちらを優先するかで悩んだものの、今回は探索時間の更なる短縮の為にも、シフの地図作製スキルを伸ばす事に決定した。
「それに何だかんだでシフも前線で戦うからな。槍術も一緒に上がるし、やっぱりシフでいいだろうってうぉっ!」
――ダダダッ――
斗真が魔石の合成先を決めるのと同時に、シフは4階層の地図を完成させた様で、飛び付く様に斗真に近付くと、直ぐ様胸の魔石を突き出して合成の催促を始めた。
「おいシフっ!びっくりさせるなよなぁ。ったくもう。んじゃあ始めるぞ【合成】」
斗真は、シフ以外の4体のゴーレム達にガン見されながら、64回に渡る合成を始めた。
「ふぅ、んじゃあこれで最後だな。【合成】っとそして【鑑定】」
――スタッ――
斗真は合成を終えると、淡く輝きだしたシフに鑑定を使って、上昇したステータスの確認をした。
【ステータス】
クラス:シーフゴーレム
ランク:下級・ストーン
レベル:7(0/128)
スキル:槍術 2(2/3) 地図作製 2(2/3) 空間把握 2(2/3)
「……レベル以外は上がらないかぁ。まぁ数字が上がってなくても能力自体が上昇しているのは、ソルジの件で確認出来ているから、槍の腕も地図を作る早さも上がってるだろう」
――コクリッ――
斗真の呟きを拾ったシフは、頭を大きく上下に振ると、斗真の考えに同意を示した。
「それじゃあシフ、コレが5階層の地図だから石版に写しておいてくれ。後は残りの魔石だなぁ。メイかシャンに合成すれば、どちらかはレベルアップ出来るか。もしくはハンタに合成しておいて、後で直ぐにレベルアップ出来る様に積み立てておくか」
斗真は、シフに5階層の地図を渡すと、残りの43個の魔石の合成先について考えを巡らせた。
(積み立てておくのも悪くは無いよなぁ。そう言う意味では既に積み立ててるソルジに合成したって良いわけだし。でもなぁ、メイやシャンのレベルアップも捨て難いんだよなぁ。……そう、だな。レベルアップ出来るなら、それを優先させるか。積み立ても悪くは無いけど、どうせならレベルアップしてくれた方が、俺としても達成感があるしな。よしっ!そうと決まればシャンを先にレベルアップさせるか。火力はどれだけ有っても損は無いだろうし)
「次はシャンに合成するから、魔石を出してくれ」
――ババッ――
シャンは、直ぐ様大杖の先を外すと、斗真に中の魔石を差し出した。
「んじゃあ始めるか。【合成】っと。あぁ今回の余りの魔石はメイに合成するから、メイも準備しておいてくれ」
――コクコクコクッ――
斗真は、シャンに合成しても尚残る11個の魔石は、レベルが一番低くなるメイに与える事に決めた。
「……っし。これでシャンもレベルアップだな。【合成】。そして【鑑定】」
【ステータス】
クラス:マジシャンゴーレム
ランク:下級・カッパー
レベル:6(0/64)
スキル:攻撃魔法 2(2/3) 大杖術 2(2/3)
「よしっ!ちゃんとレベルアップしたな。それじゃあ残りはメイだな。【合成】」
斗真は、シャンのステータスを確認すると、直ぐ様残りの魔石をメイに合成した。
「コレで最後っと。【合成】。メイはこれで後21個でレベルアップだな」
――ゴンッゴンッゴン――
斗真は魔石の合成を終わらせると、喜ぶゴーレム達を見ながら、それぞれのレベルアップまでに必要な魔石の数を思い浮かべていた。
(ソルジが後50個でレベル7。ハンタが64個でレベル7。シフが128個でレベル8。メイが21個でレベル6。シャンが64個でレベル7か。次のシフのレベルアップと、ソルジとハンタとメイを纏めてレベルアップさせる為に必要な魔石の数が余り変わらないな。この場合どちらを優先させるべきか。……まぁその時になったら考えるか。5階層でどれだけ魔石が手に入るのかも分からないんだし。今の内から考えた所で捕らぬ狸の何とやら、にしかならないだろうしな)
斗真は、リュックから水筒代わりに使っていた容器を取り出すと、水を溜めてそれを飲みながら休憩を始めた。
(ふぅ。流石に107回の合成じゃあ、気を失う程の疲労では無いんだな。確かさっきは200回越えだったからなぁ。でもまぁ一応しっかりと休憩時間は取っておくか)
それでも斗真は、僅かに感じる気怠さから心身を癒やす為に、目を閉じてほんの僅かな微睡みにその身を委ねた。
「……ん?おっおぅ。少し寝てたのか。……つっても体がそれ程固まってないから、30分も寝てないと思うんだけど」
斗真はいつの間にか、座ったまま眠っていた事に気が付くと、周囲に視線を向けて状況を確認した。
ゴーレム達は、直前に斗真から特別指示が無かったからか、変わらず斗真の側にいたり、少し離れた所で素振りをしていたりと、思い思いの時を過ごしていた様である。
(成る程なぁ。護衛して欲しい時は、ちゃんと指示を出しておかないとヤバいみたいだな。側にいたのもハンタとメイだけだから、もし俺が眠ってる間に襲われでもしてたら、対応出来なかっただろうなぁ。……うん、下の階層に行く前に気付けて良かったな俺っ!)
斗真は目の前の状況を前向きに捉えると、ゆっくりと立ち上がりストレッチをしながらゴーレム達を見回して、その運用方法について新たに得た情報を頭に刻み込んでいた。
そして斗真は暫くの間体を動かして温めると、最後に水を一杯飲んでから5階層への探索に乗り出した。
「それじゃあ5階層へ向かうか。シフ地図は出来てるな?」
――コクリッ――
斗真は、当然!と言いたげな様子で頭を上下に振るシフから地図を受け取ると、そのまま懐にしまってから5階層に向けて階段を降り始めた。
シフは直ぐ様先行すると周囲の警戒を始め、他のゴーレム達もいつも通りの陣形を整えながら、斗真と共に5階層へと足を踏み入れた。
(さて、此処を超えたら6階層か。確か6階層から新しく出現するモンスターのドロップアイテムを持って帰れば、俺のランクも上がるんだよな。それに10階層までの地図も買える様になる筈だし。……まぁでも、シフがいるから地図は必ずしも必要ではないか)
斗真は、これまでと変わらぬ様相の通路を歩きながら、今回の探索における一つの山を越えようとしていた。
斗真達は5階層においても、先と変わらぬ戦い方を続けており、苦戦する事は一切無く、時々斗真がソルジと役割を変えて戦闘に参加するぐらいで、後はひたすら階層の隅々までを探索しては地図を作り、遭遇するゴブリンやコボルトを蹂躙して回った。
何度かシフの地図作製の為に立ち止まったり、斗真の小さな生理現象を解消する為に立ち止まったりする位で、5階層の探索は3階層の頃から変わらない、特筆すべき点の無い階層踏破となっていた。
「はぁ。マジでハイキングだなコレ。っていうかもうリュックパンパンだぞ。まぁ魔石は合成するから多少は余裕が出来るだろうけど、あの雑貨屋で一番デカいリュックでこれだからなぁ」
斗真は、6階層へ続く階段に辿り着くと、直ぐ様リュックを下ろしてパンパンに膨れ上がった中から魔石を選別しつつ、今後の荷物の積載方法について考えていた。
「はぁ。次の探索からどうするかだな。やっぱり収納袋を先に強化した方が良いのかなぁ。……取り敢えず魔石を数えるか。よしっ!シフは地図を完成させておいてくれ。それ以外のゴーレムは、魔石が下に落ちない様に手伝ってくれ」
――スタッ――
斗真の指示を受けたシフは、直ぐ様5階層の地図の完成作業へと移り、その他のゴーレム達は、階段に座る斗真より下に移動して横並びに座ると、手を左右に広げて魔石がそれ以上下に落ちない為の防波堤となっていた。
「子供みたいな解決法だな。……ま、まぁいいや。それじゃあ頼むな」
――コクコク――
斗真は張り切るゴーレム達を見下ろし、微妙な表情を浮かべたものの、即座に気持ちを切り替えると、リュックから魔石を取り出しては片っ端から鑑定を掛けていき、無造作に階段に置いては魔石の数とその種類の把握に努めた。
ゴーレム達は、初めは4体で壁を作っていたものの、斗真が階段に無造作に魔石を積み上げ始めたのを見て、ソルジが素早く壁から抜けると、階段に山のように積み上がり始めた魔石を、出来るだけなだらかになるように、広範囲に並べるように置き直していた。
残された壁役の3体は、万一に備えて緊張感を保ちながら、目の前の魔石の崩落線上で手を広げ続けた。
「ふぅ。これで全部か。5階層は出てくるモンスターが全て3体ずつだったから結構集まったな。それでも3階層程ではないけど。……まぁ後は誰に合成するかだな」
5階層においては、出現したゴブリンもコボルトも常に3体一組であった為、一戦闘における魔石の取得数は良かったのだが、やはり斗真達の進行速度の速さと戦闘時間の短さから、遭遇回数自体は3階層をピークに減少し続けており、結果的に魔石の総獲得数も下がってしまっていた。
それでも100を超える魔石と素材は、確実にリュックの積載量を圧迫しており、斗真が魔石をゴーレムに合成するという特殊な事情が無ければ、4階層に辿り着く前にパンパンに膨れ上がったリュックを背に、ダンジョンから外へと帰還を果たしていた事は想像に難く無かった。
「123個かぁ。シフのレベルアップに足りないし、ソルジとハンタとメイのレベルアップにも当然足りない微妙な数だなぁ」
斗真の手元には、ゴブリンの魔石69個とコボルトの魔石54個の総数123個があり、それは斗真が望むゴーレム達のレベルアップに、僅かに足りない量であった。
(う~ん。まぁこの後軽く6階層を見るつもりだから、多少足りなくても補えはするんだから良いんだけど、6階層に向けて誰の強化を優先するかだよなぁ。シフに合成して、追加で5体倒せばレベル8だし、ソルジ達に合成しても追加で12体倒せば良いだけだもんなぁ。……うん。此処はソルジ達の強化に使おう。ソルジとハンタをレベルアップさせて、メイには少し待って貰うか。6階層に向けて最前線のソルジは強化しておきたいし、後方の警戒を任せてるハンタも強化したいしな)
「よしっ!それじゃあソルジ、魔石を合成するから盾を貸してくれ」
――ババッ――
斗真は、丁度直ぐ側にいたソルジに声を掛けると、即座に差し出された盾に魔石の合成を始めた。
「っし。コレでレベルアップだなソルジ。【合成】そして【鑑定】っと」
【ステータス】
クラス:ソルジャーゴーレム
ランク:下級・カッパー
レベル:7(0/128)
スキル:片手剣術 2(2/3) 盾術 2(2/3)
「よしっ!6階層からは新しいモンスターが現れるから、これまで以上に頼むぞソルジ!」
――バッ、スゥ――
斗真の激励を受けたソルジは剣を掲げると、ゆっくりとその剣先を階段下の6階層へと向けた。
「フッ。やる気は十分みたいだな。じゃあ次はハンタ、こっちに来てくれ」
――ババッ――
斗真に呼ばれたハンタは、ソルジと入れ替わる様にして壁役から抜け出し、斗真の正面に腰を下ろした。
そしてハンタの抜けた穴を埋める様に、直ぐ様剣を仕舞ったソルジが、素早く階段下で両手を広げて新たな壁役になっていた。
「……さっきまであんなにカッコつけていたのに。……まぁソルジが良いならいいか。それじゃあハンタにも【合成】」
――バッ――
斗真は、ソルジの変わり身の速さに一瞬呆れた様な表情を浮かべたものの、直ぐ様気持ちを切り替えると、目の前で胸の魔石を突き出すハンタに魔石の合成を始めた。
「ふぅぅ。コレで最後っと【合成】んで【鑑定】」
【ステータス】
クラス:ハンターゴーレム
ランク:下級・ストーン
レベル:7(0/128)
スキル:弓術 2(2/3) 収納袋 2(2/3) 索敵 2(2/3)
「これでハンタもレベル7かぁ。どうだ収納袋に何か入りそうか?」
――コクコク――
「おっ!いけそうかっ。じゃあちょっとリュックの中から、入れれるだけ取ってみてくれ」
――ババッ――
ハンタは、リュックの中から次々と素材を取り出しては、自身の収納袋へと入れていった。
――フルフル――
「もう限界か?」
――コクリッ――
斗真の確認に、ハンタは悔しそうにゆっくりと頭を上下に振って答えた。
「う~ん、大体1キロぐらい増えたのかなぁ。まぁ正確には分からないけど。それでも追加で入る事が分かっただけでも十分だぞハンタ」
斗真は、未だリュックの中に山と積まれている素材を、悔しそうに見つめるハンタの肩を叩きながら、本心から言葉をかけた。
――コクリッ、バッ、スゥ――
ハンタは肩に置かれた斗真の手を見つめると、一つ大きく頷いてから立ち上がり、その手に持っていた収納袋を掲げて先程のソルジの様に6階層へと向けた。
「……カッコ良いかそれ?……まぁ立ち直ったのなら良いんだけど。じゃあ最後にメイ来てくれ」
――ダダダッ――
メイは、待ってましたとばかりに立ち上がると、駆け足で階段を上り、斗真の正面に座った。
そしてハンタも流れるような動きで収納袋を背負い直すと、軽やかな動きで階段下まで行き両手を広げて壁となった。
「いやその切り替え……まぁいいや。それじゃあメイに残りの魔石を合成するけど、今回だけじゃあレベルアップには少し足りないんだけど、直ぐに追加の魔石を手に入れるから、少しの間だけ待っていてくれ」
――コクリッ――
メイは、了解!とばかりに大きく頷くと、胸元からアクセサリー型の魔石を取り出して斗真に差し出した。
「おぉ、聞き分けが良い。……それじゃあ【合成】」
斗真は、見た目小中学生のメイの聞き分けの良さに感心しながら、魔石の合成を始めた。
「これでラストっと【合成】」
――バッ、スゥ――
最後の魔石を合成されたメイは直ぐ様立ち上がると、一度短杖を掲げてから、ゆっくりと6階層へと差し向けた。
「ねぇ流行ってんのそれ?流行らしたのソルジ?」
――フイッ――
呆れた様な斗真からの問い掛けに、しかしソルジは顔を背けるばかりで、決して答えようとはしなかった。
是非ともまた、お越しください。




