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第六十話

読んで頂きありがとうごさいます。

 

「おん?そう言えば、メイとシャンはどこに魔石を持ってるんだ?」


 斗真は、その見た目から魔石っぽい物の場所がはっきりしているハンタとシフをよそに、全身ローブ姿のメイとシャンに問い掛けた。


 ――バタバタバタッ――


 2体は斗真の疑問に答える様に、それぞれが魔石っぽい物を露出させて、その場所をアピールし始めた。


 メイは、ローブの胸元からネックレスの様な形状の魔石っぽい物を取り出し、シャンは、大杖の上部を上下に開けると、その中から魔石っぽい物を取り出した。


「おっおう。メイはまぁ想像の範疇だったけど、シャンはそれ凄いな。まるでへそくりみたいだ」


 斗真からの評価に、メイは不服そうに顔を背けながらも、差し出した魔石っぽい物は引っ込めようとはせず、そしてシャンは大きく胸を張り、上部の開いた大杖の中身を斗真に向けて、謎のアピールをしていた。


「それにしてもこうして見ると、盾の裏のソルジ、服の中のメイ、杖の中のシャンは良いとしても、胸元に剥き出しのハンタとシフはヤバくないのか?その魔石って、壊れたりしたらどうなるんだ?」


 斗真は、アピールがウザいメイとシャンを放置すると、ハンタとシフに疑問を投げかけた。

 それを受けたハンタとシフは、顔を見合わせると。


 ――バタッ、バタッ――


 2体揃って階段に倒れ込んだ。


「おっおい!どうした急にっ!大丈夫なのかっ!?」


 斗真は、突然の事態に思わず腰を浮かせるも、隣に座っていたソルジに、肩を抑えられた。


「おっ、おっ、ソルジっ。大丈夫なのかあの2体はっ?」


 ――スッ、スッ、スッ――


 ソルジは斗真に落ち着く様にと、両手のひらを地面に向けて何度も細かく上下させると、倒れた2体に指を指した。


 斗真が少し落ち着いて2体に視線を向けると、既に2体共が立ち上がっており、今は斗真に向けて、握り拳を作り親指だけを上に向けて、自身が万全である事を示していた。


「はぁぁぁぁっ。驚かせるなよなぁ。何だったんだよ一体…………あっあれか!魔石を壊されたら倒れる的なアピールだったのか!」


 ――コツコツコツコツ――


 斗真がようやく導き出した答えに、2体は揃って両手を打ち合わせて、満足げに拍手をした。


 斗真としても前後の会話から、簡単に理解できそうな事ではあったのだが、2体の突然操り糸を切られたマリオネットの様な見事な倒れ方に、未だ自身のゴーレムの事をよく知らない斗真は、自身が把握出来ていない未知の要因で、2体が突然死んでしまったのかと勘違いしてしまっていたのだ。


「まっまぁ俺の早とちりだったみたいだし、別に良いんだけど。でもそれならハンタとシフはヤバくないか?何かで剥き出しの魔石を隠した方が良いんじゃないか?」


 ――フルフルフルフルッ!――


 斗真からの提案に、全てのゴーレムが一斉に頭を左右に振って否を突き付けた。


「おっおう。それはダメなのか。……んじゃあハンタとシフは、とにかく気を付けるんだぞ。って言うかそれ以外に言い様がないわ。それじゃあハンタから合成していくから、こっちに来てくれ」


 斗真は、今までならソルジの盾のみを受け取れば良かったのだが、ハンタとシフはその胸に直接魔石っぽい物が付いている為、仕方無く自分の側に呼び寄せると、1個ずつ魔石を合成させていった。


「よしっ。じゃあ次はシフが来てくれ」


 斗真は、ハンタへの合成を済ませると、直ぐ様シフを呼び魔石の合成を続けた。


「よしっ。じゃあメイ。その魔石を貸してくれ」


 ――ダダダッ――


 メイは斗真の呼び掛けに、魔石っぽい物を手渡さずにタックルする様に近づくと、魔石っぽい物を首から掛けたまま斗真に差し出した。


「なっなんだよ急に。それを手渡してくれたら良いだけだっつうのに。ったく」


 斗真は、文句を言いながらも、差し出された魔石っぽい物を首から外す事無く、合成を続けた。


「よしっ。それじゃあ最後にシャン。魔石を貸してくれ」


 ――ダダダッ――


「っ!お前もかよ。分かった分かったから、魔石をもっとこっちに向けてくれ」


 斗真は、メイ同様に距離を詰めてきたシャンが、その手に大杖を持ったまま、中の魔石っぽい物を取り出す事無く差し出してきた為、その意を正確に受け取ると、杖に手を入れながら合成を発動させた。


「はいっ。これでお終いっと。んじゃあ最後の魔石はソルジにやるからな。ほい【合成】っと」


 ――ガタッ、バッ、コンッ、コンッ、コンッ――


 ――バッ、ゴンッゴンッゴン――


 結局斗真は、全てのゴーレムに魔石を2個ずつ合成して、4体のゴーレムのレベルを2に引き上げた。


 ソルジは、最後に余る形となった2個の魔石の行方に選ばれた事が、本当に予想外だったのか突然立ち上がると、両手を上げて僅かに飛び跳ねながら喜びを表現していた。

 そんなソルジにつられる様に、レベルアップを果たした4体のゴーレムも、各々が両手を上げて小躍りを開始した。


「うっ、うるせぇぇぇぇ。て言うかこの音にモンスターが引き寄せられたりしないだろうな」


 斗真は、耳を塞ぎながら階段の上下に視線を往復させてみたが、モンスターが突入してくる気配を感じる事は無かった。


「ふぅ。まぁそれじゃあ皆で3階層に行くとするかっ!」


 ――スタッ!!!!!――


 斗真の呼び掛けにゴーレム達は、一斉に踊りをやめて武器を掲げると、先頭にシフが、その後ろにソルジが並び、最後にハンタとメイとシャンが並んで、3列となって斗真の前に整列した。


「おっおう。やる気は十分みたいだな。あっそうだシフ。3階層の地図を渡すから、地図作製を使って見てくれ」


 ――ガタガタッ――


 斗真から地図を手渡されたシフは、背中の石版を取り出すと、指を使って石版へと地図を写し始めた。


「おぉ~。こんな感じで地図を作るのか。これは歩きながら作るのか?」


 ――フルフル――


 斗真の質問に、シフは地図を写しながら頭を左右に振って答えた。


「ん?じゃあ立ち止まらないと作れないって事なのか?」


 ――コクコク――


 斗真の更なる質問に、シフは頭を上下に振って答えた。


「成る程なぁ。まぁ歩きながらは危ないだろうから、立ち止まって作るのは良いんだけど、どれぐらいの頻度で止まれば良いんだ?」


 ――ビタッ、フルフル――


 シフは僅かに動きを止めると、その直後に頭を左右に振った。


「分からないって事かぁ。まぁ回数はどうあれ、どの道ダンジョンの途中で立ち止まらないといけないんだよな」


 斗真は、目を瞑り僅かに思考すると。


「よしっ。ダンジョン内での地図の作製に慣れる為にも、3階層は隅々まで探索するぞ」


 ――スタッ――


 斗真からはもう、下見や慎重などといった考えは無くなってしまっている様である。


 シフは、結局5分と掛からず地図を石版に写し終えていた。


「思ったより早いなぁ。でも通路内だとまた違って感じるんだろうな。まぁお疲れさん。シフ、このまま行けそうか?」


 ――バッ――


 シフは斗真に地図を返すと、直ぐ様槍を掲げて肯定を示した。


「よしっ。じゃあ3階層に行くか!シフは、地図の空きを埋めるように先導してくれ」


 ――コクリッ、ダッダッダッ――


 シフは斗真の指示を受けると、先行して階段を下りて周囲を見回している様であった。


「ふっ。さぁ俺達も行くか」


 ――スタッ!!!!――


 斗真は、シフのやる気に満ち溢れた様子に僅かに笑いを漏らすと、残った4体のゴーレムに声をかけて、共に階段を下りていった。


 先頭にシフ、前列に斗真とソルジ、後列にハンタとメイとシャンという並びで、斗真達は3階層の探索を始めた。


 シフは、斗真達から凡そ15メートル程先を先行しており、斗真からはその姿がぼんやりとしか見えなかった。


 斗真は、既に地図をリュックに仕舞っており、コレまでとは違い全神経を周囲の警戒に集中させていた。

 

「ははっ、ダメだな。コイツ等の足音で他の音は一切聞こえない」


 斗真の周囲を歩くゴーレム達も、殊更足音をたてている訳ではないのだが、その体が石や銅である為に、どうしても地面との接触時に衝突音を発生させてしまうのだ。


(革の靴でも履かせるか?……でも弱点の胸の魔石を隠す事すら拒否されたからなぁ。これも俺が慣れるしか無いんだろうなぁ。まぁダンジョン攻略の為にも、やるしかないよな。それに一々地図を見る必要も無くなったんだし。よしっ!まだ序盤の今の内に感覚を慣らしておくぞ)


 斗真は、周囲を覆う様に鳴り続けるコツコツと言う音の先を把握する為に、自身の五感と全神経を体の外側へと向けようと苦心していた。すると。


 ――ダッダッダッ!――


「ん?シフどうした?敵か?」


 先行していたシフが、駆け足で斗真の下に戻ってきた。


 ――コクコク、コンコンコン――


 シフは、斗真の質問に素早く頭を上下させると、手に持った槍で地面を三回叩いた。


「……三体来てるって事か?」


 ――コクコク――


「成る程分かりやすいな。シフ、これからもそのやり方で頼むな」


 ――コクリッ――


「よしっ!全員聞いたな!敵は三体だ。まずはハンタの弓とシャンの攻撃魔法で先制するぞ!先頭のモンスターを狙え!」


 ――スタッ!!――


「ソルジとシフは、敵を後ろに行かさない様にしながら戦え!無理に攻めずに可能なら仕留めていけ!特にシフは、魔石が露出してるんだから、決して深追いするなよ」


 ――スタッ!!――


「ハンタは最初の射撃後は、後方を警戒しておいてくれ。もしモンスターが来るようならソルジに知らせて対応させてくれ」


 ――スタッ!!――


「シャンも最初の一発以降は後方警戒を頼むな。メイは、戦闘終了後に回復を頼む。それまではハンタ達と一緒に警戒しておいてくれ」


 ――スタッ!!!――


 斗真は、一通りの指示を出し終えると、意識を前方に集中させて、その時を待った。


「「「グギュルルルルッ!」」」


「コボルト三体だッ!ハンタッ!シャンッ!打ち込めッ!」


 ――バッ!――


 指示を受けたハンタは素早く弓を構えると、どこから取り出したのか、石造りの矢を番えて直ぐ様先頭のコボルトに放った。


「グギュッ!?」


 ――スッ――


「おっ!当たったぞハンタッ!ってうおっ!?」


 斗真は、頭に矢を生やして倒れるコボルトを見ると、思わず振り返ってハンタを褒めようとしたのだが、その視界を塞ぐように火の玉が飛び出してきた。


「グギュルルッ!!?」


 シャンから放たれた魔法は、直径20センチ程の火の玉で、子供が石を投げるくらいの速度で飛んでいくと、二体目のコボルトに当たった瞬間、その体を弾き飛ばす程の威力を見せ付けた。


「おぉ。シャンの魔法も当たったなぁ。……あっと言う間に一体のみかぁ」


「グギュルルルルッ!」


 ――ダダダッ!!――


 斗真が余りの殲滅力に呆然としていると、残ったコボルトに対してソルジとシフが飛び出していき、二体一の状態で終始圧倒したまま、最後はシフがコボルトの体に深く槍を突き差してトドメを差した。

 

 ――ブンッ、ブンッ――


 そして二体は、倒れたまま未だ息のあった二体のコボルトに、それぞれがトドメを差してから斗真の本に戻ってきた。


「おっおぅ。未だ生きてたんだなあの二体。悪いなソルジ、シフ。余りにも上手く行き過ぎて少し油断していたみたいだ」


 斗真は、未だ息のあったコボルトを、二体も放置してしまった自身の愚かさを自覚すると、後始末まで請け負ってくれたソルジとシフに頭を下げた。


 ――トン、トン、トン――


 ソルジとシフは斗真の正面に来ると、それぞれが左右から斗真を慰める様に優しく肩を叩いた。


「……はぁマジで情けない。まぁ切り替えていくか」


 斗真は、その体格差から子供に慰められている様な気分になると、直ぐ様気持ちを切り替えてドロップアイテムを拾いに動いた。


「ふぅ。それじゃあ先に進むか。次からも基本的には、今みたいにハンタとシャンで先制してから、俺達で殲滅という形で行こう。次からは指示を出さないから各々上手い事やってくれ」


 ――スタッ!!!!!――


 斗真は、自身も戦闘に集中する為に、敢えて指示を出さないと明言した。

 これは先程の圧倒的な戦闘の様子から、余裕が有る内にゴーレム達が自分達の意志で、どこまで戦えるのかを確認しておこうと考えたからである。


「じゃあシフ。先行してくれ」


 ――スタッ――


 斗真は、ドロップアイテムをリュックに直すと、シフを先行させてから、その後に続いた。


 斗真達のその後の戦闘は、最早蹂躙といって差し支えない程圧倒的なものであった。


 最初の戦闘で感覚を掴んだのか、ハンタもシャンも一度も先制攻撃を外す事は無く、その結果斗真達の下に辿り着くモンスターは、精々が無傷の一体のみで、それも張り切るソルジやシフによって刈り取られた為、斗真は倒れて動けなくなる程弱ったモンスターや、動きの鈍ったモンスターの首を刎ねるだけの作業を繰り返す事となった。


「まぁこの数はソルジと二人でも倒せてたから、当たり前っちゃあ当たり前なんだよなぁ。……でも流石にコレは。……はぁ、さっさと次の階層を目指そう」


 斗真は、戦闘を行う度に弱なっていく様な感覚を覚えると、更なる激戦を求めてダンジョン探索を続けた。


 ようやく目覚めた斗真のジョブスキルも又、他の救世主達と同様に、圧倒的な性能を誇っていたのである。



六十話まで到達しました。此処までお付き合い頂きありがとうごさいます。

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[一言] ゴーレムのアピールがウザくてワロタw 個性的で良いと思う
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