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第十一話

我武者羅にタグを増やしてみました。こういった要素が苦手な方には申し訳ないです。

 

「なっ!?同時に三つもっ!?」


「っ!でも発動してるぞ!」


「有り得ねぇッ!どうせクソみたいなスキルに決まってるッ!」


(はいっ。ジョブスキルの三つ連続発動を確認っと。……レベルの話はどこ行った~?俺のジョブスキルはどこ行った~?)


 川上賢治は、発動させた三つのスキルをそれぞれ別の木製人形に、一体も外す事無く見事に命中させる事に成功した。

 その威力は、使用者のレベルが0とは思えない程強力なものであった。


【ボルケーノ】は、正しく流れ出た溶岩の様相を呈しており、直撃した木製人形はその勢いに押し倒されたまま鎧ごと溶かされていた。木や革の部分からは煙と炎が上がっており、この魔法を受けた者がどの様な末路を辿るのかを容易に想像させた。


【アイスエイジ】は、対象となった木製人形とその周囲を一瞬で氷漬けにしていた。一瞬で生まれたとは思えない程の分厚い氷は、一度この魔法に捕らわれてしまえば抜け出す事は不可能であると思わせた。


【フォトンレーザー】は、一瞬光ったと思った時には既に対象とした木製人形を貫いており、その軌跡をまともに辿れた者は一人もおらず、木製人形に開いた穴だけが確かにスキルが発動したのだという事を証明していた。


 三つのスキルの連続発動に成功した賢治は、少し顔色を悪くさせつつも、張りに張った胸は空を仰いでいて、それに合わせて上向いた顎は、本来の額とあるべき場所を交換しているような状況になっていた。


 しかし、その様な滑稽な賢治の様子を笑える者は無く、既に廃材と化した木製人形と賢治との間を、何度も何度も視線を往復させるだけに終わった。


「さて。メインディッシュの後はデザートと決まっていますが、果たして残りのスキルはデザートとしての役割を果たしてくれるのでしょうか?ふふっ。まぁ仮にメインディッシュが続いた所で誰が損をする訳でも有りませんし、手早く行いましょうか。【火魔法】【水魔法】【風魔法】【土魔法】ぐっ!これにも早く慣れないといけませんね。【ファイアボール】【ウォーターボール】【ウインドボール】【アースボール】」


 賢治以外の者が、未だ先程の衝撃から立ち直れない中、賢治は更にスキルを四つ連続で発動させた。


 それぞれの属性を宿す球状のスキルは、先程のジョブスキルと変わらず、四つそれぞれが別の木製人形へと着弾し、その精度と威力を周囲に見せつけた。


「ふふっ。流石に賢者たる私専用のジョブスキルと比較すると威力は各段に落ちるようですが、まぁ使えない事も無いでしょうか。ふふっ」


 賢治は、吹き飛ばされた木製人形の損傷具合を確認するとそう嘯いた。


「さて、今ので私の順番は終わりましたが、どうしました?大空君。次はあなたの番ですよ」


「あ、ああ」


「ふふっ。ステータスの発表の時は、あれほど焦らしてくれたのですから、あなたのジョブスキルにも期待していますよ」


「えっ?いやっ別に焦らしたわけでは、只自分のジョブが信じられなくて」


「そういえばあなたのジョブは勇者でしたか。成る程。まぁ精々頑張る事です。仮にも勇者たる者が名前負けしてしまうなど恥でしか有りませんからね。ふふふっ」


「ぐっ、あ、ああ。精一杯頑張らせて貰うよ」


「ええ勿論。言葉を重ねるようですが、私も期待していますよ。ああっ!私としたことが申し訳ない。先程の試し打ちで残っていた人形の殆どを破壊してしまいました。勇者のジョブスキルを思えば、残り一つの人形など有って無い様な物でしょうに」


「っ!いやっ構わないさ。今からやるのは飽くまで試し打ちなんだから。人形は一つ有れば十分さ。それじゃあ俺も行くとするよ」


「どうかご武運を。メインディッシュは、静かにあなたを見守っていますよ。ふふっ」


 勇人を散々に煽って満足したのか、賢治は満面の笑みで見送った。


 反対に勇人は、表情を険しくして口内で何事かを呟いた後は、残る木製人形を只静かに見つめていた。

 その背中を大村大地や土屋樹は、先程の賢治と勇人の会話を思い出しながら、苦虫を噛み潰した様な表情で見つめていた。


(ようやく最後か。にしても勇者ねぇ。実は大空君も剣術なり武術なりの経験者だったりするのかね?確か大空君と御剣さんって仲が良かった筈だから、同じ道場とかで学んでいても可笑しく無いよな。これは楽しみになってきたぜっ!)


 静かに息を吐き木製人形を見つめていた勇人は、嫌でも視界に入る賢治が為した惨状を意識的に無視すると、意を決したようにスキルを唱えた。


「【神装召喚】!」


「うわっ!チッ!何回光るんだよっ!」


「この光っ!これなら期待できるっ!」


「ふんっ。又コレですか。いい加減見飽きましたよ。全くどいつもこいつも芸の無い事ですね」


「何か、ユミちゃんやメーちゃんの時の光と少し違うね」


「確かにそうね。でも光の輝きは一番強い様に見えるわ」


(アレも刀か?……いや全然違うな。あれは西洋の剣か)


 天宮聖子が感じた通り、聖子と乙女と優美が放った光は正しく純白といった白一色の輝きであったが、今勇人から放たれている光は、白の中に赤や青や緑といった、所謂光の三原色と呼ばれる色の光が見え隠れしていた。


 そしてその光の中から産れる様にしてその姿を現した勇人の手には、光り輝く幅広の剣が握られていた。

 所謂ブロードソードと呼ばれるその剣には、救世主達の持つ異世界言語を持ってしても読み取る事が出来ない言語の様な、はたまた絵柄の様な紋様が浮かび上がっていた。


 あまりに神秘的なその光景に、周囲で見ていた異世界の者達は、その剣の事を神剣と呼ぶようになった。


 得も言われぬ神秘を帯びた神剣をその手に掴む勇人の姿は、あれほど煽り立てていた賢治から見ても、文句の付け様も無い程に完璧な勇者の姿に見えた。


「ふぅ。何とか発動出来たか。よしっこのまま次のスキルを使うぞっ!【ブレイブハート】!」


 勇人が続けてスキルを唱えて発動させた瞬間、まるで勇人の大きさが二倍に膨らんだかの様な錯覚をその場の全ての人間は覚えていた。


「おぉぉぉぉっ!はぁっ!」


 スキルの効果で気持ちが昴ったのか、勇人は突然蛮声を上げると、木製人形へと駆け出して手にした神剣を力任せに振り下ろした。


(あぁ。大空君には剣術の経験は無さそうだな)


 勇人が見せた素人丸出しの太刀筋とは裏腹に、神剣が齎した威力は、圧倒的といっても差し支え無い程であった。


 神剣の直撃を受けた木製人形は、爆発したかの様に吹き飛んだかと思うとその頭部は既に無く、上半身部分も殆どが消し飛んでいて、まともに確認出来たのは人形の腰から下のみであった。


 その腰から下も既に真っ二つになっており、それがレベル0の素人が剣を力任せに振り下ろした結果とは、見ていた者達ですら理解するのに時間が掛かっていた。


「はぁはぁ。これが勇者の力……いやっ、俺の力だッ!」


 神秘の光を纏ったままの勇人は、ゆっくりと元居た位置に戻ると、熱に浮かされた様な顔色でそう賢治に宣言した。


「おぉ。まさしく勇者の名に違わぬ、いやそれ以上の力じゃな。誠に素晴らしい!その輝く姿も既に伝説の勇者といっても過言では無かろう」


 賢治が勇人に何かを言い返す前に、アレキサンダー王がそう勇人を讃えた。


 機先を制された形の賢治は、僅かに顔をしかめたものの、特に何かを言う事も無く事態を静観していた。


「っ!流石は俺の親友の勇人だぜっ!期待以上だったぞっ!」


「そうだよっ!流石は俺達のリーダーだよっ!オーラが違うよオーラがっ!どっかのガリ勉とは雲泥の差だよっ!」


「おいおい樹。褒めてくれるのは嬉しいけど他の者を貶めるのはやめよう。俺を基準にしちゃあ可哀想だろ」


(隙あらばギスるなこいつら。っていうか結局ジョブスキル発動しなかったの俺だけじゃんっ!何で!?何で俺だけっ!?俺だけレベルがマイナスなのっ!?)


 そう言いながらスキルを解除した勇人は、賢治に一瞬意味深な視線を向けるも、特に何かを言う事も無く最後のスキルを発動させるべく、木製人形が有った位置に向き直った。


「あぁ、最後の一体を消し飛ばしてしまったんだった。参ったな。こんな事になるんだったら手加減すれば良かった。まぁどうせスキルも最後の一個だし別にいいか。【光魔法】ぐっ、うん?これって……まぁいいか。【ライトボール】」


 勇人が発動させた【ライトボール】は斬り飛ばされて下半身だけになった木製人形に着弾すると、そのまま吸い込まれる様にして消えていった。


「あれっ?今のスキルって?」


「確か最初にセイちゃんが使ったような?」


「うん。私が使った【ライトボール】と同じみたいだよ」


「ふむ。確か天宮さんの【ライトボール】は、【神聖魔法】でしたか。ここから察するに【神聖魔法】は【光魔法】も兼ねているのか【光魔法】が【神聖魔法】を兼ねているかのどちらかでしょう」


「あぁ?それの何が違うんだよガリ勉?」


「はぁスキルの優位性が違うでしょうが。先の場合なら、【神聖魔法】は【光魔法】と同じ魔法が使えますが【光魔法】はその限りでは無いという事です。後の場合なら、【光魔法】は【神聖魔法】と同じ魔法が使えますが、【神聖魔法】はその限りでは無いという事です。分かりましたか?蛮族さん?」


「おそらくは、賢者殿の考えに相違無いじゃろう。先程の神剣といい【光魔法】といい、誠に勇人殿は勇者そのものであるな」


 賢治の言葉に大地が何かを言い返す前に、アレキサンダー王が勇人を誉めることで、話の矛先を勇人に戻した。


「いえっそんな。俺は只、自分に出来る事をやっただけなんで」


 アレキサンダー王の賞賛に、勇人は照れたように、去れども満更でも無さそうな表情で答えた。


「これから皆のレベルが上がって、使える魔法が増えてくれば、自ずと先程の賢者殿の推測の答えも分かる様になるじゃろう」


 アレキサンダー王は、最後にそう締めくくって場を治めた。


「あのっ!全員のスキルの確認も終わりましたが、この後は如何されるのでしょうか?」


 辺りが沈黙に包まれた瞬間聖子は、先程までの女子同士の砕けたやり取りからは、想像も出来ない程堅い口調で、アレキサンダー王に問い掛けた。


「うむ。聖女殿よ、儂にも先程迄の様に振る舞っても良いのじゃよ。それからこの後は救世主殿達に、我が国の王宮に来て頂こうと予定を立てていたのじゃが、如何かな?」


 アレキサンダー王の問い掛けに、救世主達は俄かに騒がしくなった。


「私達に対する多大なお心遣い感謝致します。ですがどうか私の振る舞いについては、お気に為さいませぬ様お願い申し上げます」


(王宮かぁ。王宮なら魔王の詳しい情報とかあるのかなぁ。ついでにゴーレムマスターに関する手掛かりとかなっ!絵本ヒゲが知らなかった時点で期待は出来ないけどなっ!)


「おいおい。王宮だってよ!どんなトコなんだろうなっ」


「あぁ。確かに楽しみだな」


「俺さっ!日本の城にも行った事無いんだよっ!これ絶対自慢出来るぜっ!」


「お城かぁ。やっぱりお姫様とかいるんだろうなぁ」


「そうだな。日本に居た頃の私達では、決して会えないような身分だからな。会えると良いな優美」


「うっうん!そうだよねっ!でも御剣さんもお姫様みたいなものだよっ!」


「急に何を言い出すんだ優美は。全く」


「おっ王宮!伝説の始まりにしてハーレムの原点!やれるのか?僕はやれるのかッ!?」


「まぁ賢者たる私程のスキルの使い手ともなれば、この程度の待遇は当たり前では有りますがね」


「ハァッ!んじゃあようガリ勉!この中でたった一人だけまともにジョブスキルを使えなかった無能野郎はどうなんだろうなぁ!」


 大地がその言葉を放った瞬間、一瞬前まで騒々しかったにも関わらず、まるで時が止まったかの様に、周囲一帯が静まり返った。


「おっおい大地!なんて事を言い出すんだ!」


「あぁ?でもおかしいだろうが!あいつだけがジョブスキルを使えなかったんだぞ!」


「今は未だってだけだろう?俺達は未だレベル0なんだから」


「勇人君。地井の事は俺もおかしいと思う!」


「樹まで何を言い出すんだ!今は魔王退治の為に全員が協力すべき時だろう!全員の命が掛かっているんだぞ!」


「命が掛かっているからだよ勇人君!勇人君はさっき俺達がまだレベル0だからって言ったけど、それなら地井以外にだってジョブスキルが使えない奴が出てきてもおかしくないのに、結局使えないのは地井だけだったじゃないかっ!」


「それは……でも……」


「それに勇人君、魔王退治に俺達の命が掛かっているって言ったよね?俺もそう思うよ」


「ならっ!?」


「そう思うからこそ言うんだっ!これから俺達は命懸けの魔王退治に挑むんだ!ならジョブスキルも使えない様な役立たずの面倒なんて見切れないはずだ!それこそ皆の命が掛かっているんだ!一人の我が侭なんて聞いてる余裕は無いはずだ!」


「だからって役立たずかどうかを今決める必要は無いだろう。時間は未だ十分にあるんだ。こんな所で立ち話で決めるんじゃなく、どこか腰を据えてしっかりと見極めるべきだ。それに地井君にもチャンスは与えられるべきだと俺は思うよ」


「そんなのっ!今の段階でジョブスキルを使えないどころか、その理由さえ分からない奴に期待したって時間の無駄だよ!」


(俺を置き去りに俺の話が進んでいく……しかもやたら熱いなこいつら。命懸けの魔王退治とか覚悟決まりまくってんじゃん。これは俺も気合いを入れ直さないとな!)


 斗真を置き去りにしたままに、勇人と樹の意見のぶつかり合いは平行線を辿っていた。

 そんな中斗真は、特に意見を述べる事も無く今一度自身に気合いと覚悟を入れ直していた。


 そんなどこかそれぞれの思惑がかみ合わない中で、賢者である川上賢治の放った言葉で事態は更に混迷を深めていく事になった。


「まぁ君達と違って僕には既に、地井君がジョブスキルを使えなかった理由についての見当はついていますがね」


(えっ?マジでっ!?教えてっ!教えてっ!!教えてぇぇぇぇぇっ!!!)




読んで頂きありがとうございます。

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