第一話 (プロローグ)
初投稿の見切り発車です。取り敢えず完結を目指します。宜しくお願いします。
「ようこそ参られた、救世主殿……たち?……うっウォホン!ようこそ参られた救世主殿達よ!」
僅かな戸惑いを含んだ、しかしながら、確かな重みを感じさせる低い声音は、突然の状況に頭を働かすことができていない9人の高校生を、聞き流すことが出来ない言葉で歓迎した。
「えっ救世主?俺たちが?」
「んなことよりどこだよココ!っていうか誰だよオッサン!」
「やっやめなよ!なんか鎧着て、剣とか槍とか持ってんじゃん!絶対カタギじゃないよ!……ってか日本じゃないよ!」
途端に騒ぎ出す面々をよそに、一人の生徒が小さく、しかし確信を持った声音で呟いた。
「異世界召喚だ。選ばれたんだ僕たちは」
その小さな呟きは、騒ぐ生徒や呆然とする生徒、油断なく周囲を見回していた生徒などの、その場にいる全ての生徒の耳に届いていた。
そしてその言葉の意味に理解が及んだ生徒達から、期待するような、もしくは正気を疑うような視線を向けられた推定オッサンの謎の男は、その場にいる生徒全員に視線を向けると、静かに、されどその場に響き渡るような声色で語りかけた。
「ふむ、流石に理解が早いな。実に頼もしい事だ救世主殿達よ。ではまずは我が国、いや我々の世界が迎えるであろう悲劇について話そうか」
そうして語られた悲劇の内容は、要約すると、100日後に魔王が軍勢を引き連れて世界中を滅ぼして回る、通称【ハルマゲドン】が発生するというものだった。
「しかし神は我らを見放さなかった。避け得ぬ滅びを前に怯えるしかなかった我らに、一つの奇跡を授けて下さったのだっ」
僅かに声を震わせた推定オッサンから放たれた言葉に、ある生徒は期待を、またある生徒は不安を、そしてある生徒は不信を抱きながらも次の言葉を待った。
「そうっ!それこそが異世界から魔王を滅ぼす力を持った救世主をこの地に遣わす【異世界召喚魔法】であるっ!」
推定オッサンから、まるでおとぎ話を語る子供のような振る舞いで語られた内容を、9人の高校生達は理解した瞬間、拳を突き上げて喜ぶ者や、顔を伏せて何かを堪えようとする者、まだ頭が働かずに呆然とする者や、これからの話の展開を予想して不安を隠せない者、そして推定オッサンの情緒についていけずに白ける者などに反応が分かれた。
「そうして召喚に応じて、この場に遣わされたそなた達こそが、この世界を滅びから救う救世主なのだっ!」
推定オッサンから決定的な言葉が放たれた瞬間、その場の生徒達は、来る未来に心を震わせた。
それが歓喜による震えなのか、恐怖による震えなのかは、本人達にしか分からない事であった。
ただ一つ確定した事は、その場にいる生徒達が救世主であるという事だった。
それすなわち、その場にいた生徒の一人であり、家庭環境や性格に、僅かな問題を抱える少年である、地井斗真、高校一年生、16歳。
どうやら彼も救世主の一人となったようであった。