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第一話

 隣国との国境が近くにあるそれなりに発展した街、その外れにある一軒家の広い庭で一人の青年が重りの付いた模造刀を振っていた。一つ一つの動作を確かめながら、それでいて常人には不可能な速さで振り続ける。毎朝の日課であり一日が始まったことを確かめるための運動。

 近くに他の家がないから出せる轟音を鳴り響かせながら一つの事に集中し続ける。自身を鍛え、遥か彼方にいる目標に少しでも近づくために。その為に20年近くカタナを振りこれからもまた振り続けるだろう。全ては強くなるため、それだけの為に。


(少し前まではそれだけでよかったんだがなぁ……)


「お父さん!もう朝ごはんの時間だよ!!お母さん起こしてくるからね!!」


「味噌汁あっためておくから父さんはシャワー浴びてきなよー。また母さんが匂いがどうのこうのって言ってくると思うし」


 思考が少しずれた瞬間家の中から庭に『娘』と『息子』の声が響いた。共に8歳ころの年頃。同じ髪色、同じ瞳の色、双子だと思われるだろうそっくりの容姿はしかし異性差で違いが分かりやすかった。色合いは同じでも『娘』は青年と同じようにそれなりに長い髪を後ろで括り、『息子』は『母』と同じように肩辺りで髪をそろえ端をはねさせていた。


「どうしてこうなったんだか……」


 ほんの一か月前にはこんなことになるとは思っていなかった。何せ彼には子供どころか恋人すらいなかったのだから。この地に家を建てたのはただ自分の目標の為長くこの地にとどまる可能性を考えあぶく銭を消費する為。それが今では家族と呼べる存在と一緒に住む空間に。彼は一家の大黒柱になっていた。

 自由だったはずの過去を自分を呼ぶ子供たちの声を聞きながら思い出し始めた。



※※※



 「王国」、そう呼ばれる国の王都では煌びやかなパレードが行われていた。王も貴族も、平民も王都に住む多くの人々がそのパレードに参加し誕生したばかりの英雄に向かい喝采を浴びせ続けた。

 そんなパレードの主人公となった青年は傍らの婚姻相手である王女と共に笑顔で手を振り続けている。彼こそが最新の英雄、誰にも成しえなかった偉業を達成した存在、王都で騒ぐ人々には、いやこの青年の偉業を知った者は全員がそう思うだろう。


 世界最高難易度『七つの迷宮』、その一つをクリアし、その迷宮を永遠に封じ込めた英雄。これによりダンジョンが生み出す魔獣が外に出てくることもなくなり死人も減る。国すら脅かす「龍」を打倒した。

 それは一つの国の王女との婚姻を許されるほどの、それでは足りない程の偉業なのだから。


 ダンジョンとはこの世界の始まりから存在している「人が超えるべき試練」と呼ばれる土地。その中では外の常識は一切通じず外が灼熱の炎天下であっても中は豪雪地帯だったという場所もある。ダンジョンの中に存在する資源は人の生活を豊かにし、ダンジョンの中に存在する魔獣と呼ばれる存在はその多くが恐ろしい強さと凶暴さを持っていた。故にこのダンジョンに挑み生還する者達「冒険者」、彼らを勇気ある探究者と呼ぶ者も少なくない。

 しかし薬も過ぎれば毒となるもの。強大なダンジョンにはその中で得られるだけの価値ある資源以上の脅威があった。魔獣達はダンジョン外にまで生息範囲を広げ始め人を襲い、ダンジョンから漏れる瘴気は訓練していない者の身体を脅かす。

 そもそもダンジョンの数はその全てを把握できないほどにまで存在している。故に国が定めたダンジョン以外はどれであっても攻略し、数を減らすことが許されていた。そしてダンジョンを閉じた冒険者は英雄として扱われる。多くの冒険者は地位や名声の為にダンジョンをクリアすることを目指すことが多かった。

 しかしそんな冒険者も避けるような絶対の死地と称されるダンジョンが存在している。それこそが『七つの迷宮』。ありとあらゆるダンジョンの悪意を煮詰め、挑戦したほとんどの冒険者は死に絶え、生還した冒険者はその恐ろしさに引退を決意し、その上で毎晩のようにうなされ直に死ぬとされる。迷宮の最奥に存在するのは人を含めたあらゆる生命の頂点とされる「龍」であるという噂まで流れていた。

 誰も達成したことのない『七つの迷宮』、その一つがつい先日消滅した。

 人々は沸き立ち、冒険者を管理する組織である「ギルド」は誰がそれを行ったのかを調べ、王族はその血を手に入れる為に手を回した。


「アラン様ばんざーい!!!」


「我らが英雄にかんぱーい!!!」


 そして行われているのがこのパレード。最新にして唯一無二の偉業を達成した大英雄を称える祭り。来年からこの国ではこの日は祭日になるだろう日。

 英雄と呼ばれた青年アランは晴れやかな笑みを浮かべていた。




 そんな王都中に響くパレードの声が小さく聞こえる程中心街から遠い場末の酒場。そんな中で一人の青年が酒を飲んでいた。

 髪の色はこの国で珍しい漆のような黒。長い間切っていないのか無造作に伸びたそれを後ろで一つに結んでいる。長い髪に左目は隠されているが外から見える右目は店の電球で紅く光り、目つきは鋭く獲物を逃さない鷹のようだった。

 腰に差した剣もまたこの国では見られない片側にしか刃がない物、彼の故郷ではカタナと呼ばれるそれは素人目に見ても業物であろうことを容易に想像させるほどの存在感を放っていた。

 かろうじて服をこの国に合わせ、それゆえにその容姿と武器が尚更に浮き立つ彼は誰もない酒場でちびちびグラスの中身を飲みながらただ呟いていた。


「あー……世の中クソだぁ……。」


 そんな端正な顔を台無しにするような苦々しく、世の儚さを呪うようなくらい口調は店長以外誰もいない店内を暗い空気で満たす。その空気に耐えられないというより無視するのが面倒になったとばかりにこの店の頂点に立っている女性は青年、「フジヒノアキラ」に話しかけた。


「こんな場所で飲んだくれてる青年はあの勇者様のせいで目標なくなった系?最近多いらしいよ、冒険者やめるか王都を離れる人達。まぁ目指していた迷宮がなくなったんだから続ける理由がない、って考えも分からなくもないんだけどさ。若そうだしこれから新しい目標なんてどんどんできるから頑張りなって。」


 そういいながらアキラのグラスに新たに飲み物を注ぎやさぐれている彼を慰める言葉を告げるエルフの女性。彼女の店は表は武器屋、裏は酒場としている。彼女にとっては今目の前にいる飲んだくれの青年は将来の商売相手になるかもしれないのだからこの程度は言っておいて損はないと考えたのだろう。


「中には逆にやる気出しまくってる連中もいるみたいだし、青年も奮起しなって。」


「あー、まぁそういう連中もいるのか……。店長さんもその恩恵を受けた側か。」


「まーね。新規冒険者とかいっぱい来るだろうから今から稼ぎ時!勇者様様だよ!」


 事実この後王都では彼の英雄に肖りたいと思った冒険者や冒険者志望が多く来てこの店は繁盛することになる。王都の裏路地とはいえ長年この店を続けていた店長には確かに商才があるのだろう。

 そんな店長の言葉にも「あー、よかったねー」と気の抜けたアキラは返す。そんな彼に少しの苛立った様子もなく店長は忠告するように語り出した。


「青年もさ、珍しい武器持ってるみたいだしそれが手に馴染んでるのも分かるけど他の武器を持ってもいいと思うよ?狭い場所じゃ振り回しにくいでしょそれ」


「狭い場所なら壁やら天井やら斬ればいいだけだし別に困らないよ。体術だってそれなり以上にはできるしオーガくらいだったら絞め殺せる」


「実際にやってみたかのようなセリフ……。だけど君の想像以上の場所だってあるかもしれないよ。同じオーガでも場所や土地、生息している迷宮によって強さは変わるからね」


 どんな生物であろうと適応力というものは存在する。魔獣も普通の生物とは呼べないがその特性は持っていた。事実として最下級のダンジョンと上級のダンジョンでは同じ種類の魔獣であっても強さが桁違いとなっており油断した冒険者が殺されるということが多発している。

 店長の言葉は新人冒険者に最も必要な知識の一つだろうこと。別に言う義理はないがそこには裏などなくただ相手を心配する人の好さがあった。


「……『怠惰の迷宮』より上位の所があるんだったら納得するけど、そうじゃないならあんま心配しなくていいよ。それにその程度のことは実感としてもう分かってるから」


「……………………は?」


「だから心配しなくていいって」


「そこじゃなくて!!今『怠惰の迷宮』って言った!?『七つの迷宮』の一つで、今表にいる英雄アランが攻略したっていう!?」


 アキラはその疑問に顔をしかめて自分の失敗をさとり頭を抱えそうになったが、冷静に考えて今目の前にいる人物に隠す理由があるのかを考え隠す程の事でもないと判断した。基本的にこの青年は無鉄砲で考えなしで行動することが多い。


「……あー、口滑った。まぁいいや、もう喋っても大丈夫だろうし」


「あの『ダンジョン』をソロクリアはおかしいと思ったけど、その話マジで……?」


 冒険者は基本的に何人かの専門職で構成されている。無論全てを一人でこなす者もいるだろうがごく僅かの例外ばかり。その例外が偶然誰もが知っているあの『ダンジョン』をクリアしたなんてあるわけないと考える者も少なくはなかった。必ず彼には仲間がいると、そう考えていた一人である店長にアキラは自らがその一人だと言ったのだ。


「アランは基本的にスカウト、探索とか物資の調達とか剥ぎ取り専門だったし。まぁ戦えないわけじゃないし防戦だったら俺も手こずるからやり合いたくはないな。アイツ普通以上に強いし」


「で、でもそれだったらなんで『英雄アラン』だけがパレードに出ているの?貴方達にもあそこにいる権利はあるんじゃないかしら」


 店長は言いながら自分が触れてはいけないモノに触れようとしているのかもしれないという警告を頭の片隅においてそれを聞く。

 彼らは何か知ってはいけないものを知ってしまったのではないか。国や世界に狙われるような壮大なナニカを。もしそうだったとしたら……と思いつつも期待は止まらない。長命種であるエルフの彼女もまた幼いと言われる時に好奇心に負け故郷を飛び出し冒険者になったのだから。引退した今も酒を飲みながら冒険話をする若い冒険者たちの話を聞くのが彼女のルーチンワークの一つだった。



「いや権利とかそういうのいらないし。ただひたすらに面倒だったからその後の厄介事から逃げる為にアラン生け贄にして逃げて来ただけ。陛下達からは是非とかなんとか言われたけど、準備してくるって仲間だけになった時アイツ縛り上げて逃げて来た」



 店長は開いた口が塞がらず沈黙した。唖然としたと言ってもいい。

 目の前の自分の半分以下しか生きてないであろう青年はあろうことか厄介事を避ける為だけに逃亡者になったと言った。そりゃ呆然ともするし理解も出来ないだろう。大半はそうだ。

 そんな彼女の表情に気付いた様子もなくアキラは続きを話し始めた。


「縄で縛って魔法で縄を固定化して魔力切れか魔法解除するまで動けなくしてねー。馬鹿魔力の持ち主の魔力を使った特級魔法師の固定化魔法で固定された縄は流石にアイツでも短時間では縄抜け出来なかったようで助かった。もしも縄抜けされてたら俺達の方が捕まってたな。」


「えっと、なんて言ったら分からないけど、その……本当に面倒ってだけで逃げてきたの?」


 店長は何とか再起動して質問を投げる。アキラの話を信じれば彼はこの世界で得られるであろう一番の名誉を切り捨てて逃げて来たらしい。確かにそういうものを嫌う人種もいないわけではないが、権威や権力というものが人を争いに駆り出す理由の一つでもある以上俄かには信じにくかった。

 だからこそ何かほかに理由があったのではないかと考えたのだ。というかあって欲しいと、そんな理由で逃げ出されてたらこう、もやもやするから。


「あー、実はもう一つ大事な理由があってな」


「ッ!!なになに!!!」


 本当に、心の底から嫌そうな顔をしながらアキラは大きい溜息をついた。その様子におかしいと少し思ったが逃げ出した理由が他にもあるなら、それがまともな理由であってくれればと店長は祈った。数多の冒険者がいつか攻略すると目標にしていた『七つの迷宮』。それを攻略しながらもこうして逃げ出した彼らに、逃げ出すに値する理由があることを。


「いや実はアランの馬鹿が第三王女様抱いてな。それであの王女様かなり嫉妬心とか強いからアランの奴を生け贄にせざるを得なかったんだよ。痴話喧嘩なんかどう処理していいか分からないしあのまま一緒に居たらどうなるか分かったもんじゃないし」


 祈りは無惨に砕けて散った。彼女の祈りは届かず、アキラ達が逃げ出した理由はもっと庶民的な理由だった。なんだかもう聞きたくないし今日は店を早じまいして眠りたいと店長は心の底からそう思った。

 そんな彼女の様子に気付くこともなくアキラは当時のことを思い返す。アランを捕えて逃げ出したあの時のことを――――。




「お、お前ら!!俺を裏切るのか!?俺だけにこの後を処理しろと!?お前らいないと俺に来る被害が大きいだろうが!!!」


「裏切り者の言葉など聞こえませんね。知っているんですよアリーヌ王女に手を出したこと。一人で脱素人童貞おめでとうございます死ね」


 『王国』の王族が住む城、英雄としてこの後発表されるはずの五人の冒険者がそこにはいた。それぞれ違った服装をしほぼ何の共通点もない青年四人と一人の女性。青年の一人はアキラ、カタナを帯刀した彼は縛り上げられた絶世の美青年、「アラン」に冷たい視線を浴びせていた。縛り上げたアランに罵倒を吐いた少年といってもいい背丈の魔法師「クルト」はその莫大な魔力を外に漏れないよう器用に操作し美しく煌めく金の髪を無造作に腰辺りまで伸ばした少女「ロス」に分け与えていた。


「あんな脂肪の塊に興奮する異常性癖には困ったもんだ。ロリっ子こそがこの世の真理であり幸福であるというのに。13才以上はBBAなんだよ分かる?それは置いといて童貞脱却とか羨ま死ね」


 城の内部でありながら半裸の男、「ラインハルト」はその性癖と本音を思う存分ぶちまけている。ちなみにそれに対してこの場にいるそれ以外の四人は(分かったら人として終わりだよ……)と思っていた。とは言え彼もまた英雄の一人、そんな視線には一切傷つくことなくこいつら理解できないとか終わってんなと思っていた。王族もいる城でこんなことやってる連中が言える事ではないが。


「いずれ私のものになるはずだった女性に手を出すとは……それだけで万死に値しますね。という訳で死ね」


「ねぇ俺を縛り上げる前にこいつら縛り上げた方がいいんじゃないの?俺なんかよりこいつらの方がよっぽど危険人物だと思うんだけど。ねぇ」


 目の前でこんなことを宣う少女を見ながらアランは言う。絶対にコイツより俺の方がまともだという意思をこめて自身を縛り上げた少年に。クルトはその言葉に深く頷きながらも作業をやめない。ロスに魔力を与え、ロスはその魔力を使い縛った縄に「固定化」の魔法を使い続ける。彼女の詠唱を聞きながら仲間の疑問にクルトは答えた。


「そうですね、若干後悔してる所もないわけではないです。でもこの人達縛り上げるよりアラン君一人生け贄に捧げた方が楽なので」


「生け贄って言った!!今この腹黒ショタ生け贄って言った!!!」


「真面目な話、お前逃げたらあの王女様地の果てまで追って来るぞマジで。あれは獲物を見つけたドラゴンの目だ。諦めて墓場に行っとけ、人生の。お前のためを思っての言葉だ、いや本当の話」


 幼子に語り掛けるように縛り上げられたアランの肩に手を置き静かに説得するアキラ。その目には深い同情があった。「こいつら今は元気だけど明日には肉になってるんだな」という家畜を見る時と同じ深い同情が。どのみち手を出したのは事実なので早かれ遅かれこうなるのは確定だったんだと事実を述べる。

 だがそれで納得できるほど人間が出来ているなら前人未踏のダンジョンに突入するなどという事はしない。この場にいる全員どこかおかしいのだから。


「まぁイケメン税って奴だ諦めろ」


「イケメンってのは罪なもんだな……」


 頭がおかしいからこの程度の言葉で納得してしまう。それほどまでにアランは自身の容姿に自信があった。実際十人が見れば十人が振り返るほどの美青年なのだから自惚れとまでは言えないだろう。それ故か彼はスカウトという職でありながら自身に絶対の自信があった。


「という訳で諦めて生け贄になってください。なぁに、そのうち冒険者やめたいって言ってた願いが叶うだけです。良かったですねクソが」


「クルト、最後に本音が紛れ込んでますよ死ね。

魔法使いは常に冷静であれと言っていたのは貴方でしょうもげろ。

今は冷静にさっさと縛って分かりやすい所に放置しておかないと地の底に引きずり込んでやる」


「……俺、脳筋だって自覚はあるけどこの二人よりはましだと思う。この二人頭おかしいぞ」


「お前の場合その半裸って格好と性癖がヤバいってことを自覚しろ。話はそれからだ馬鹿野郎」


 その後彼ら四人は縛り上げたアランを分かりやすいよう放置し厳重に警戒されてるはずの城から誰にも気づかれることなく脱出した。この手の事に関しての一流以上の腕を持つアランがいなくてもこの所業が出来る辺り笑えない程の実力があることはわかるだろう。

 こうして世間に顔出しできないような性格破綻者四人は自由の身になったのだった……。





「そんな感じで俺達四人はアランを囮にすることで王城から脱出することが出来ましたとさ。いやー、ダンジョン攻略者の詳細発表前に逃げ出せてよかったよかった」


 店長は内心でやべーのが四人も世に解き放たれてる件、どうしようと頭を抱えていたが表には出さなかった。彼女の表情筋はしっかり仕事をしている。ただ今の話で少し疑問が湧いたので毒を食らわば皿まで精神で聞いてみる。


「ま、まぁそれが本当だとしてなんでさっきまで飲んだくれてたの?話を聞く限り最高の結果だったんじゃない?」


「俺以外の脱出した三人の内二人な、どこで知り合ったか知らんが親しそうに美少女と王都を離れやがったんだ。ロスはロスで理想の美少女見つけるとか言って飛び出して行ったし、あの人格破綻者共がモテて俺がモテないという事実が認められなかったんだ。酒に逃げても仕方ないだろ?」


 城を脱出した後、魔導具で姿を変えながら各自それなりに王都で羽目を外し楽しんでいたがしばらくした後合流した。合流した時アキラ以外の二人の男の傍らにはなぜかかなりの美少女がいた。最初は幻覚かと思ったが現実であり、次に脅迫を疑ったがそこまで人間性腐ってないと思い直し、最終的にナンパに成功したのかと納得した。

 二人がナンパに成功したことに関しては納得したが自分は失敗したという事実に打ちのめされたこともあり酒に入り浸ったのが真相である。なおアキラが女性に声をかけた時カタナを強く握り鞘口がなっていたため危険人物だと思われ断られた。彼は基本残念である。


「ま、ラインハルトはともかくとしてクルトとロスはどこでも生きてけるだろうから心配してないけど。アイツら全員殺しても死にゃしねぇし、俺も国境近くの村に活動場所移すよ。王都だと斬っていい奴少ないし、田舎の方が魔物討伐依頼多いって話だからな」


「王都にも討伐依頼あるけど定期的に軍が出てくるからねぇ。行商とか考えると仕方ないけど。それでも繁殖時期は手が回らないから依頼量も増えるけど今の時期は落ち着いてるからその手の依頼は少ないね」


 今後の予定を話し終え酔いも冷めたのかアキラは懐から一枚の白金貨を取り出しカウンターに置く。それは今飲んだ酒の代金としては十分すぎた。長命種として様々な経験を積んできた店長も思わず汗を流す程に。


「んじゃこれで。釣りはいらないから好きにしてくれ」


「……ちょっと、これ王都でも使用数の少ない白金貨でしょう?金貨一枚でもお釣りが来るってのに流石に受け取れないよ」


「愚痴聞いてもらったのと、後は 迷惑料(・・・ )の先払いだ。それでも多いと思うなら今度王都着た時頼むから今回以上に美味い酒仕入れておいてくれよ」


 そう言い残しアキラは店長の呼ぶ声にも振り向かず店を出た。店の扉が閉まると同時に現在出せる速度で走り出す。向かう先は王都の中心街の反対、人のいない廃墟街。元々中心街に人が集まっていたのか途中で人とすれ違う事もなく走り抜けた。

 たどり着いた廃墟街では街灯の明かりはあまり届かず店のあった場所よりさらに暗くなり先を見るのも難しい。そんな中でも通常と同じようにアキラは立ち止まり振り返る。


「そろそろ姿を見せたらどうだ。店内の様子まで覗き見しやがって、悪趣味すぎるぞ馬鹿野郎」


 もしこの場に他に誰かいたのならば眉を顰めるだろうことを堂々と誰もいない空間に言い放つ。そこには誰かがいるという強い確信と何かあればすぐに斬るという意思があった。

 はたして一呼吸あった後その言葉に対し反応があった。クスクスというこの場に合わない笑い声が聞こえたと同時に廃墟街一体に結界が張られる。


「流石は最新の英雄。私の隠蔽魔法も無視してお見通しなのね」


 ふと気づけば最初からそこにいたかのように暗闇の中に美しい少女が立っていた。

 肩まで伸ばした髪は白金のように闇の中で輝き存在感を強く出し、その目は最高品質のエメラルドと比べても遜色ないどころか上回るような輝きを持っていた。白い肌を隠すようなローブから聞こえる声は鈴がなっているような凛とした響きをもたせる。その全てがあわさり少女は一種の美術品のような美しさを誇っていた。


「月夜がこんなにも美しいのだから、良い記念日になるわ」


 少女は、誰をも魅了する笑顔でそう言った。


とりあえず一章は書き上げたい。その後は需要があればやる感じでー。

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[良い点] 次が気になる位置で話を切れていると思う。 [気になる点] 誤字報告 城を脱出した後の所で 「最初は厳格化と思ったが現実であり、次に脅迫を疑ったが」 厳格化→幻覚か [一言] 好きだったスレ…
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