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冒険と戦いの始まり

初めまして。拙い文章ですが、これから少しずつ書いていきますので、どうか見守ってください。

1.帝都を訪ねて


目を覚ますと、俺が乗った列車はタリン川を越えて間もなく帝都ヴィルシュの中央駅に到着しようとしていた。車窓から見える空は曇天で少し肌寒そうだった。


心機一転の気持ちと、なんとも言えない怠さの混じった微妙な気持ちで窓に寄りかかっていると、寝台個室のドアが開き1人の将校が到着を知らせにきた。「うん。」と小さく返事をし、将校をあしらって机の上にある帽子を取るとそれを深々と被り、またボーっと車窓から外を眺めた。とにかく1人にしておいてほしい気分だった。


列車が鈍い金属の擦れる音を立てながらやがてピタリと止まると、俺が乗っている車両のドアがガラガラと開き、今期から入隊する新米の将校たちが忙しなく大きな荷物を抱えて次々と降りる音が聞こえた。やがて忙しい音が鳴り止むと、先程到着を知らせに来た将校が俺の小さな四角いショルダーバッグを持って、勢いよく俺のいる車両のドアを開けた。


「将軍!7時間の長旅、お疲れ様でした!駅の中央口を出てすぐのところに迎えの車を呼んであります!それから…」


「わかった、わかったから。ありがとう。」


軍に入って3年しか経たないが、自覚があまりないまま電撃的な昇進を重ねてしまった俺には、どうも部下たちの至れり尽くせりが苦手だ。


駅の中央門を抜けて凱旋広場に出ると、迎えの車が広場の脇に停めてあり、その周りには3名ほどの将校が腕の時計に目をやりながら俺を待っていた。1人の将校が俺に気付くと慌てて皆が敬礼をした。車に乗り込み、窓から外を眺めているとやがて車はゆっくりと動き出した。


一体何日間、この曇り空が続いていることだろう。


我々が暮らすのは4の大陸と3の大海洋、そして山々や水源から成る美しき世界。12の種族が時には共生し、時には争い、何万年という歴史を形成してきた。


俺が生まれ育ったこの国はヴェロキア連合帝国。今年で建国15周年を迎える、北西大陸最大の帝政国家だ。

7つの中小国家とそれらを取り巻く諸領によって構成されており、帝国内には6つの種族が暮らしている。


連合の盟主は我々人間が統治するヴェロキア公国で、1人のヴェロキア皇帝の下に国家や諸領の代表が集う一院制の議会がある。


かつて北西大陸では、50年に渡る種族間の戦争が続いていた。そんな我々の争いに漬け込んで北西大陸諸国への侵略を目論んだ他大陸の国々の動きに対抗しようと、我々6種族は終戦と講和、そして強力な統一国家の建国という結果に至った。


「ヴィルシュでは種族間の対立は目立ちますか。」


俺は窓から街の様子を眺めながら、車を運転している少し老いた様子の将校に尋ねた。


「6日前の帝国議会で、吸血鬼たちが統治するヴェロニカ王国の議員が2大皇帝性の樹立を求める発言をしたことはご存知かと思いますが、あの一件以来帝都のあちこちで、ヒューマンと吸血鬼双方の過激派たちが衝突する事件が起きておりまして…。」


運転手は表情ひとつ変えず、淡々と俺に話した。


「そうですか…まったく、国家の結束を強めなくてはならない一大事の時だというのに…。」


「全くですな。吸血鬼という奴らにはどうも、自分たちを過大に評価し過ぎる悪い癖がある。先の戦争で多くの犠牲を出してもう懲りたかと思いきや…。」


運転手はバックミラーに写る俺の顔色を伺いながらゆっくりと喋った。


その運転手と鏡越しに目を合わせることは、敢えてしなかった。


(これだから、今日ヴィルシュを訪れるのにはあまり気が進まないんだ…。)


やがて連合帝国参謀本部の建物の前に車が止まり、将校の1人がゆっくりドアを開けた。「それでは。」と言って俺は車から右脚、左脚と外へ出し、大きな鉄の門を抜けて荘厳な正面玄関階段を登っていった。


2.聖魔術騎士たち


参謀本部館内の大きな階段を登り、赤い絨毯の敷かれた長い廊下を真っ直ぐに進んでいく。昼間の忙しい時間だというのに、館内を歩く者はほとんどいない。


やがて廊下の最奥、突き当たりにある大きな扉の前に立ち、呼吸を整えると俺は上品なノックをして名を名乗った。


「レイド・リューベック聖魔術騎士です!帝国参謀本部の命により、参りました!」


「入りたまえ。」


大きな木製の扉は静かに開いた。部屋の中央には小型自動車ほどの大きさがありそうなシャンデリアが下がり、その下には巨大なテーブルと18の席が用意されていた。奥の3席には陸海空軍の大臣が座り、他の椅子には軍服を纏ったヴァンパイア・エルフ・獣人族といった他種族の面々が座っていた。性別も様々であったが、皆襟元に俺と同じ大きな十字の勲章を着けていた。


"聖魔術騎士十字勲章"だ。


「待っていた、いやすまないな。本当ならもう少し護衛を付けて特別列車にて来て頂きたかったんだが、今回の任務は極秘でな…いやすまなかったね…そちらへ。」


陸軍大臣が指定した席に歩いていくと、3人の大臣を除くその部屋にいた者たちは俺が席に座るまでじっとこちらを見つめてきた。


「人間?若すぎない?」


人間でいうところ15歳の少女のような容姿をした1人の女エルフが、隣に座っていた人間のご老人に耳元で囁いた。こちらの老人は70歳くらいいっているだろうか?


「そうじゃな、噂には聞いていたが…。」


俺が席に着いてからおよそ20分が過ぎた。


突然、海軍大臣が隣の陸軍大臣に向かって


「もう時間はとっくに過ぎている。それなのに今ここにいる騎士はたったの6人だ。サーペント陸軍大臣、貴方の計画は私の予想通り妄想のまま終わりそうですな。」


すると、サーペント陸軍大臣は自分の白くて豊かな髭を指先で弄りつつ、小さな溜息を吐いてから


「相変わらずガント海軍大臣は私の事前説明をまったく聞いておられないようですな。これでは我らが連合帝国の繁栄もそう長くは続かないやもしれん。」


と海相に言葉を浴びせながら話を続けた。


「我が帝国は形式上の統一を果たしてあるとはいえ国内の民族の溝は未だ残ったままであることは既知の事実。初めから聖魔術騎士を招集するこの命令に従うところなどこの程度の数だろうと思っておった。6人…十分ではないか。伝説級の騎士方が6人も同じ席に会するだけでも2度とない光景やもしれぬ。今日お集まり頂いた諸君には心より感謝を申し上げたい。」


そういうとサーペント陸相は手元の資料を開き、1人ずつ騎士たちの顔を確認していった。


「リドリア王国(獣人族)からはベリア陸軍大佐とタレス陸軍中佐」

「エトルリア侯国(エルフ)からはハートウェイ陸軍中将」

「ヴェロニカ大公国(吸血鬼)からはエリカ・シャルンハイツ陸軍大将」

「そして我がヴェロキア公国(人間)からはロイド・リッツェン特殊作戦参謀とレイド・リューベック海軍大将」


今日集まった英雄たちの名を一通呼び終えると陸相は再び皆に感謝の意を表した。その後、再び手元の資料に目をやってからヴェロニカのエリカ大将に尋ねた。


ヴァンパイアの中でも血統の高い高級貴族の出身者はほとんどが白髪で紅い瞳に誇りを持っているというが、エリカ大将は如何にもそんな感じの気の強そうな、そして人間の18歳かそこらの少女のような見た目をした人だった。


「エリカ大将、ヴェロニカには貴殿を含め4人の聖魔術騎士がおられると把握しているが、残りの3人はどうされたかな。」


すると、エリカ大将はその質問を待っていたと言わんばかりに得意げな表情で、ゆっくり席を立ってこう話した。


「私が本日ここへ参ったのはヴェロキア公国への協力のためではございません。私はヴェロニカ公国国王であるエミリア・マーウェル女王陛下の声明を届けるためです。」

「我々ヴェロニカの民は現在の連合帝国の在り方に異論を唱えます。7つの国と6つの民族がらありながら、1人の皇帝による実質的専制支配を強行する盟主ヴェロキア公国の協力要請に無条件で応えることはこれ即ち不可能であり…」


長々と自国の女王陛下の声明を読み上げるエリカに対し、エルフの少女ハートウェイが口を挟んだ。

「うるさいわねぇ、私たちだって別にヒューマン共に従うために来たんじゃないのよ。貴方たち吸血鬼も、人間もなっが〜い名前して、私たちから見たら似たようなもんよ。はいはい、この話はおしまい。あんたもここに来たんだったら取り合えずお話は聞いて、反論はその後でね〜」

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