夢の眠る繭
私は瞼を貫く朝日に起こされた
重たい体を起こして時計を眺めるともう昼過ぎだった
どうやら朝日ではなかったようだ
昨日レイモンド博士と飲んだウイスキーが思いのほか効いたらしい、まだ頭がぼんやりとしている
私は眠気覚ましのコーヒーを飲みながら書斎へと向かった
レイモンド博士に頼まれた古い文献の翻訳をしなくては
昨日のウイスキーがやけに美味かったはずだ
目を通した所恐らくハイパーボーリアー時代の文字だろう、これはかなり手強い仕事になりそうだ…
ただ私はこの頭を悩ます時間がとても心地いいのだ
まだ誰も見たことのない世界がここには広がっているのだから
未知の世界を開く扉に心躍らせない者などいないだろう
私は数時間かけてその文献の解読を済ませてレイモンド博士の務めている大学へ持っていく事にした
外はもう太陽が沈みかけ、優しく夕日が花壇の花を照らしていた
その花壇には他の花に混じって一輪だけ紫色をした不思議な花が咲いていた
あの花…どこかで…う…頭が…
「大丈夫か!しっかりするんだ!」
私はレイモンド博士の声で目が覚めた
「気がついたか!驚いたよ君があまりにも遅いから心配で来てみれば君が玄関の前で倒れてるじゃないか」
どうやら私は気を失っていたらしい…酒のせいか?
ウィスキー数杯飲んだだけでこんなに体に異常をきたすだろうか…
とにかく私は博士に感謝と文献の翻訳文を渡して帰ってもらった
いったいどうしたのだろうか…まだ頭がぼんやりとしている
なにか大切な事を忘れている気がするのだ
なにか大切な物を無くした気がするのだ
いったい…なんだったのか…
う…まただ…頭が…考え込むとこれだ…
思い出せない…その記憶の箱を開ける鍵も見つからない…
鍵…鍵…鍵…そうだ!
あの本がこの部屋にはない、なぜだ
祖父の残した本がないのだ!あの本には…なにか大切な…鍵だ!鍵の作り方が!
私は…鍵を…鍵の作り方を…鍵を作り出したんだ…
ではなぜこんな…頭が…割れるように痛い…
あの花は…あの花…紫の…紫の綺麗な…あの花を…
彼女を…助けなきゃ
私はやっと目を覚ました
私は真っ暗の中にいた




