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TempusObserver  作者: 九十八 九十九
2/6

「氷の中の恐怖」


この鍵を使ってわかったのはこれはタイムマシーンと言われるような都合の良い代物ではないらしい

行く時代、場所、世界の全てがデタラメなのだ

なんとも不完全な道具だが規則性もあるようだ

どうやらこの鍵は奇怪な場所にばかり行きたがるらしい


私が光の扉を抜けて降りたったその先は凍てつくような寒さの世界だった

視界の全てが真っ白で身体中を凍てつく吹雪が殴りつけてくる

一瞬自分がなにをしているのか、なぜこんな所にいるのか

それすら忘れるほどの極寒だ

とにかく寒さを防げる場所に行かなければ死んでしまうと思い私は体を縮こめながらゆっくりと歩いた


吹き荒れる吹雪、前はろくに見えず今自分がまっすぐ歩けているのかもわからないほどだった

寒さで意識が遠のいていく


数分歩いて、いや体感としては何時間も歩いた気分だったが

とにかく歩き続けて行くと目の前に薄っすらと巨大な黒い塊のような物が見えてきた

私は一直線にその塊に向かって歩いた


深い雪道をかき分けてやっとの思いでそれにたどり着いた

それは巨大な岩だった

ゆうに30メートル以上はあるのではないだろうか

私はその巨大な岩に隙間のような物がないか探し始めた

するとその岩に穴が空いているのに気がついた

2メートルはあるだろう綺麗な縦型の楕円形の穴である

しかもよく見るとその周りには何かしらの文字のような物が彫られているのだ

どう見ても自然に出来た物ではないだろう

それがなんなのか、なぜこんな所にあるのか、そんな事を考える余裕などその時の私には皆無だった

その穴の中はとても広く洞窟のようになっていて

どんどん奥に続いてるように見えた

私はカバンからランプを持ち出し明かりをつけてその先へと進んでいった


洞窟の奥には小さな通路のような物があり下に向かっているようだ

通路は計算されたかのように綺麗な形状で自然に出来た物ではないだろう

そして明かりをつけて気づいたのだが壁に壁画のような物が彫られていた

寒さも少し和らいで意識がはっきりして来た私はその壁画に描かれた文字が古代エジプトの象形文字に近いものだと気付き始めた

魔道書を読み解くのに古代文字を学んだ事がこんな所で役に立つとは

その壁面をなんとなくではあるが読み解いていくに恐らくここは南極大陸なのだろう

とんでもない所に来てしまったようだ…


しかしなぜ南極にこんな洞窟のようなものが

象形文字が使われた時代にこんな巨大な穴を開ける技術があったとは思えない

しかも南極大陸にそんな技術を持った人類がいたとは到底考えられない

そう考えていると急に広い場所に出た


そこはまるで神殿のような作りになっており

複雑な装飾が壁一面に施されているように見える

壁の壁画や装飾を見るにどうやら古代エジプトのファラオの墓に似ているように見えた


そして私はその奥に明かりを向ける


私は息を飲んだ


南極大陸にある地下空間


そこに「それ」はあった


数メートルはある巨大な氷の中に前屈みに座っている人のような形の何かが入っていた

「それ」の皮膚は紫色で爬虫類のようにもタコ表皮のようにも見える

背中からは二枚の翼が生えており、それは枯れかけた植物の枝に皮膜が貼ったような形状をしていた

顔は腕に隠されよく見えないが頭部が異様に長いようにも見える


これはいったいなんなのか

私には見当もつかなかったが、どう見てもこの世界の生き物ではないだろう


その神々しいまでの恐ろしい姿に私は好奇心が駆り立てられた

私が探し求めた未知がそこにあるのだ

私は「それ」の調査を始めようと明かりを近づけた

そして「それ」の向こう側にある壁画にふと目がいった


それを見て調査するのを取りやめた



そこにあったのは「それ」が人々から恐れられ神として崇められる姿


生贄に捧げられた人々の生き血を飲み干す姿



そして「カミヲオコスナ」の文字だった



end

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