表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
野菜や果物についての短編集  作者: 紅茶やもり
1/7

『ピーマン男』

 『ピーマン男』


 ある朝、目覚めるとピーマンになっていた。正確に言うと、頭が巨大なピーマンになっていた。頭頂部からヘタが伸びている。

 何故、俺はピーマンになってしまったのか。あれか、ピーマンの恨みでも買って、呪いをかけられたか? そういえば、昨日の夕食はチンジャオロースーだった。じゃあ、あれか、細切りにされたシャキシャキピーマンの恨みなのか? いや待て、調理したのは妻だ。だったら、呪われるのは妻なんじゃないか? ――ああ、なんてことを考えているんだ俺は!? 妻のあの美しい顔がピーマンになったら大変だ。人類共通の宝がこの世から失われるようなものじゃないか!

 焦るな、俺。まずは冷静に状況の確認だ。今日は日曜日、会社は休みだ。ということは外に必ず出なくても良いということだ。――ああ、しまった。今日は床屋に行く予定だった。――待てよ、今の俺には頭髪は生えていない。生えているのはヘタだけ。――そうか、妻に切ってもらえば良いのか。料理上手な妻ならば、ピーマンのヘタを切ることなど造作も無いはずだ。

 その時、妻が部屋に入って来た。そして、俺のピーマン頭を見ると、表情が二転三転し、涙を流し、蒼白になり、口から声にならない声を出しながら走り去って行った。

 俺は慌てて追いかけようとしたが、巨大なピーマン頭になったせいで、自らの身体のバランスが分からなくなっていた。転倒し、頭を床に強かに打ち付けた。頭皮、いやピーマンが割れ、青い香りと共に中身――種やワタ――が飛び出した。

 緑色だったピーマンは赤くなり、甘くなったが、誰にも食べられることはなかった。――俺は死んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ