無体……
野に咲く可憐な野花一輪
その生命を一顧だにせず君は踏み付けた
彼女にも
陽ならぬ父があり
雨ならぬ母があった
慈しみ共に風雪を耐え春の陽射しを共に味わったこともあろう
ようように咲き始めたその花を
恐らくは君がそうであったように
愛でる者があった
育む者もあった
己の楽しみにのみ故に手折ったか
であれば苦しみ抜け
その命は果つるときまで
偶さかの過ちであったか
であれば共に哀しめ
そして誰よりも
いずれは天地に帰するそのときまで
終わることのない深い闇を彷徨え