第一話 絶体絶命ですねー
第一話です!
午後8時ぐらいに更新していきますね!
あれ? おかしいですねー。
確かに丘を下ったところに山村があったはずなんですが。
見渡す限りの焼け野原。夕暮れと合わさって、今も燃え続けているように見えますよ。
家があったと思われる箇所には炭になった柱が横たわり、ボロボロになった骨がそこらに散在していまして、幽霊とか出そうな雰囲気です。
「コレはどういうことですかねー?」
誰に聞いたわけでもないですよ? ここには誰もいないことぐらい僕にもわかります。
「あれ? まだ人間が残っていたのね」
ああ、しまったですねー。誰もいないじゃなくて、僕がいました。ん、誰でしょー? あれ。
灰に突き刺さっている炭の棒の上。どうやってバランスをとっているのか知りませんが、黒い羽を生やした女性が立っていますねー。
「ゴメンね、皆殺しっていう命令だったから、坊やも殺さなくちゃいけないの」
人外少女でした。強そうですが、黙って殺されると思ったら大間違いですよ? それより、ステータスはどんなものでしょう。
ローレン・フランクリン
種族 ハイヴァンパイア Level.170
体力9800
魔力5400
力 4600
速さ7200
精神4000
防御3490
特殊能力/魅了の魔眼,吸血,眷属召喚
魔法/火炎,氷結,雷光,闇夜
はは、笑うことしかできません。文字通り格が違いますねー。
さて、どうしましょう。何れにせよ、黒騎士君は出しておきませんとね。
ゆっくりと懐にあったカードに魔力を流していきます。やや、思わず汗が流れてしまってました。ハイヴァンパイアは、まだ気づいていないようですねー。何か話しかけてきていますが、生憎と返事をしている余裕はないのです。
魔力を規定値流し終えると、ハイヴァンパイアの背後に魔法陣が現れ、黒刃がハイヴァンパイアに襲いかかりました。
「なにこれ⁉︎」
しかし、決死の攻撃も、ハイヴァンパイアの異常な反応により止められてしまいます。
しかも、素手でつまむようにしてですよ?
あれは相手にしてはいけない部類の敵だと、僕、理解しました。なんとしてもこの場から逃げなくてはいけませんねー。
「あ、ちょ、待ちなさい!」
黒騎士君にあとは任せて森に向けて走り出しましょう。「さらば、黒騎士くん」森に入って仕舞えば、いくら相手が人外とはいえ、探すのに時間がかかると思ったのです。しかし、世の中そううまくいかないものですねー。
カキーンという一際大きな金属音が辺りに響き渡りました。
それから一瞬置いて、僕に回り込むようにして一つの影が迫り来たわけですよ。
「もう、何処に行くのよ、ボ・ウ・ヤ♡」
整った顔がどアップで目に飛び込んできますねー。あ、犬歯長いです!
はは、だめですね。攻撃、速さにおいて完全に上回られている現状、僕に勝つ術はないと言えます。失敗しました。これなら、もっとガチャを回しとくのでした。そうすれば、時間稼ぎぐらいにはなったかもしれません。
背後で黒騎士の胴体が今更二つに分かれ、落下する音が響きます。
「ねぇ、坊や? 私と一緒に来ない? 命だけは助けてあげる」
「冗談じゃないですよー」
どんな扱いを受けるかわかったもんじゃあありません。自由のない人生は、死と同義と思ってます。
じゃ、どうするか、ですか? 案がないわけじゃないんですよ。ただ、成功する確率が著しく低いってだけでですねー。
「坊や?」
「へ?」
さすがに無視しすぎるのもまずいですか。作戦の準備ができるまでは何としても時間を稼がなくてはいけないのですからねー。
「さっきの精霊召喚?」
「それが何なんですかー?」
正確に言えば違いますがねー。このハイヴァンパイアが言う精霊召喚というのは、普通の精霊召喚でしょうから。
あなたは、人間がどうやって魔術を使っているか知ってます? 知らないんですか⁉︎ 無知は罪ですよ。
ま、説明してあげましょう。人間が魔術を使える理由、それはですね、精霊契約にあるのです。
生まれた時から、この世界のほとんどの人間は精霊と契約しています。それがなかったのが僕なのです。そう、分かりましたか? 僕は生まれつき精霊契約は為されていなかったのです。故に、魔術が使えない、魔術適性がないとなったのです。
何故そんなことが言えるのか、ですか?簡単なことです。魔術とは、人が自身に秘めている力なんかじゃあないんですよ。魔術とは、人が魔力を対価に精霊から借りてる力のことなのです。
人は、魔力を精霊に捧げることで、人外の力を行使できます。精霊は人に従って力を貸す代わりに、食事として魔力を頂きます。互いにWinWinな関係、それこそが精霊契約、魔術の真髄と言えるでしょうねー。
さて、普通の精霊召喚というものについての説明に移りますねー。え? 僕の安全を心配してくれてるのですか? それはそれはありがとうございます。優しいですねー。ですが、心配ご無用ですよ。相手の話なら適当に相槌は打ってますから。
普通の精霊召喚というのはですね、さっき話した精霊契約により、深い絆が精霊との間に芽生えた場合、その精霊自体を顕現させられるというものなのですよ。
とはいえ、その術にたどり着ける人間は1000人に1人。このハイヴァンパイアが驚いているのは大方それが理由だろうと推測します。
「ちょっと、聞いてるかしら⁉︎」
「あー」
この通り、ちゃんと相槌打ててますよ?打ててない、ですか? そんなバカなぁー。
「あ、準備できましたー」
(まずいですね! このままでは殺されてしまいます〔棒〕)
あ、本音と建前が逆になって出てしまいました。これでは、怪しませてしまいますねー。あ、やっぱりとんでもない怪訝な顔でこっちを見ておりますねー勘弁してくださいよもー。
「準備?」
「あ」
まず第1ステップですねー。顔をそらさせます。お、見事にかかってくれましたー。
「ねぇ、あっちにいったい何があるの?」
第2ステップはですねー、こうします!
体の腹辺りにぐるぐる渦巻いてる魔力を一気に放出します。するとあら不思議、ハイヴァンパイアは向こうに吹っ飛んでしまいましたー。
ま、時間は稼げて10秒といったところでしょうかねー、でも、それだけあれば十分です!
僕は、懐にあった別のカードを手に取り、魔力をたっぷりと吸わせます。
すると、僕の魔力によって、黄金に輝く龍が現れましたー。
あ、ハイヴァンパイア、結構びっくりしておられる。ですが、もうちょっと吹き飛んでてくださいねー。
「皇龍リグア、僕を助けてくれませんか?」
「お主は、まだ我を使うには早いと言ったはずだが?」
「緊急事態なのですよー。このままではあなたの出番なくなっちゃいますよ?」
「構わないが?」
「乗りますねー」
「お主、我の話を聞いておったのか⁉︎」
「はい、ビューン!」
「ああ、仕方なし!後で相応の対価を請求するぞ!」
おおー高い高い! 上手く行ってよかったですよー。最初召喚した時はレベルが低くて使役できないって言われてましたから。この龍の人徳ですかね、人ではありませんが。
これだけ速かったら大丈夫でしょう。さ、どっかの街にでも行きましょうかねー。
「主、何処で降りる?」
「人間がいるとこでお願いしますー」
皇龍リグアがため息をつきました。はは。意外に面倒見のいい龍ですね。
僕と龍は、朝の爽やかな陽気に包まれながら、雲を切って超高速で飛び回るのでした。
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