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三田一族の意地を見よ  作者: 三田弾正
第六章 畿内動乱編
139/140

日刊歴史部門一位記念SS 織田家の兄妹関係

久々の更新で歴史日間一位記念です。

永禄二(1559)年 四月三日


尾張国春日井郡清洲村 清洲城


「猿!猿はおるか!」

織田信長の朝は早い。

「へぃ、殿様、猿はここに」


「猿、直ぐにカステラと飴を買ってこい」

「へぃ」

信長が猿(木下藤吉)に実家で甘味を買って来いと命じる。


「殿、朝餉でございます」

猿が帰ってくる間に朝餉が用意されて信長は食べる。

「殿、焙じ茶にございます」


「うむ、美味よ」

信長は焙じ茶を啜る。

暫くすると藤吉郎が息を切らしながらかえってくる。


「殿、カステラと新作の色水飴を仕入れてきましたぞ」

「うむ、猿出かけるぞ」

「へぃ」


いきなり何処かへ出かける信長を藤吉郎や近習が慌ててついて行く。



永禄二(1559)年 四月三日


尾張国春日井郡清洲村 清洲城下 柴田屋敷


子を産んだばかりの市の事が心配な信長は清洲城下の柴田家屋敷に市を留めていた。

その屋敷の廊下をドスドスという足音が響かせながら奥へ進む中で信長の声が響く。

「市、市は居るか!」


「お方様、大殿がお見えになっております」

赤ん坊をあやしていた市は女中の連絡と兄の大声を聞いてため息を吐いた。

「はぁ。全く兄上は」


「市、どこじゃ?」

「兄上、何ですか喧しい」

市が障子越しに答えると、ガラッと障子が開かれた。


「おお、市、ここにおったか」

「兄上、何なんですか、喧しいですよ」

市の苦言も無視して目の前にドスンと座る。


「市よ、ほれカステラじゃ、色水飴も持ってきたぞ。ささ、鬼市郎きいちろうに食べさせてやろう」

信長は藤吉郎から引ったくってきた包みを市に渡した。

「兄上、カステラと水飴ですか」


「そうじゃ、旨いぞ。これぞ尾張銘菓よ」

信長はにこやかにそしてどや顔で市に自慢している。

「それは良いのですけど、鬼市郎とはどなたですか?」


不思議そうに質問する市に対して信長がドヤ顔で答えた。

「我が甥で市の子ではないか」

「はぁ?」


「良い名で有ろう」

信長の答えに市は額に青筋を見せながら冷たい声でユックリと話し始めた。

「あ、に、う、え! あれほど言いましたよね、兄上の名付けは奇妙殿、茶筅殿を見れば分かるように滅茶苦茶ですよね。だからそれをしないと約束いたしましたよね。それになんですか、鬼市郎とは?」


信長は市の剣幕にタジタジになる。

「いや、それは、まあ、権六は鬼柴田と呼ばれておるから鬼を、それに市の名と嫡男であるから、太郎の郎を、なっ良い名じゃろう」


「はぁ、兄上、この子は於国丸です、於国丸!」

「いやしかし」

「あ、に、う、え、あの時は、五郎左の顔を立てて烏帽子親をさせてあげることで妥協したんですよ。それに元服もしてないと言うか僅か四月の赤子ですよ。仮名の介三郎だけならまだ良いですけど。それを反故にして蒸し返すのならそれも無しにしますよ」


笑顔だが目が笑っていない市に信長も後ずさる。

「いやな、市よ烏帽子親は儂がするから」

「はぁ?」


信長は市の威圧にビクリとする。(目の座ったスケバンがガンつけてる状態が近い)

「いっ市よ、お前が男で有ったら儂など廃嫡されておったかもしれんな」

「まあ、父上も女にしておくのが惜しいとおっしゃっていましたね」


ホホホと笑う市を見て信長もやっと落ち着いた。

「市、それでな」

「兄上、何かほかに用が有るようですね」


「流石は市だな」

「それは、兄上は素直ですから、何かあるか判りますよ」

「うむ、実は母上の事じゃ」


市は母と言われて下の兄の事を思い出す。

「勘十郎兄上の事ですね」

「うむ」


「確かに勘十郎兄上の事以来、兄上と母上は没交渉ですから」

「そうなのじゃ、儂とて勘十郎が憎くて討った訳ではない、今でも後悔しておる」

「三郎兄上の葛藤は今なら分かります。判りました。母上と犬にカステラと甘味を渡して来ますから、それとなく兄上の事を伝えておきますよ」


そう言いながら市は兄上も母上も素直じゃないと思いながらニコリと笑った。

「すまぬ」

「良いですよ、それより家へ来てますけど、類殿や帰蝶義姉上には甘味を持って行ったのですか?」


「類には持って行ったが、帰蝶にはまだだな」

「兄上、駄目ですよ、義姉上は正妻なのですから」

市の指摘に信長が困った顔をする。


「帰蝶はな、何とも言えぬ雰囲気が有っての」

「ああ、兄上との初夜に短刀を隠していたという」

「市、何故それを」


市の話に信長が慌てる。

「いえ、女の世界はいろいろあるんですよ」

「うむー」


まあ、それが原因で、義姉上の前では立たなくなったらしいけど。誰からか聞いた兄の情けない話を思い出しながら、市は兄の背中をおした。


「それ、三郎兄上もサッサと土産を持って義姉上元へ帰りなされ」

「うむ」

そう言って信長は追い立てられたのであった。


「猿! 帰蝶に土産を持って帰るぞ。用意せい!」

「へぃ」

歴史日間一位になったので以前織田家の話も見てみたいとの感想があったのでSS書いてみました。

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― 新着の感想 ―
更新、お疲れ様です。 藤吉郎さんは、この日は、清洲~熱田間を2往復 ご苦労様です。 大人気のカステラの在庫が残っているといいですね。 次回の更新を楽しみに待っております。
身内には激甘だった事が史料からもチラ見えしてる信長ですからね〜実際甥や姪ができるとこんな感じだったのかもしれませんねw
日刊トップおめでとうございます! シスコンなのか伯父バカなのかは分かりませんが、この信長微笑ましいなぁ…
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