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三田一族の意地を見よ  作者: 三田弾正
第貳章 小田原編
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第拾参話 婚約者が決まりました。

お待たせしました。



天文二十三年十二月二十日(1554)


■相模國足柄下郡 小田原城 三田余四郎


小田原城では、年の瀬も押し迫ったこんな時期に武田晴信長女梅姫と北條氏康次男新九郎氏政の婚儀が行われていた。


本来であれば、今回の婚儀は先頃亡くなった長男新九郎氏時殿が主役のはずであった。又残念な事に、今年四月五日に幻庵爺さんの奥方花様が、七月二十四日には北條氏綱殿の後妻で近衛家出身の藤姫様が相次いで亡くなられた。


このため、北條家は本来ならば三重の喪中にも係わらず婚儀をしたことになる。よほど三国同盟を急ぐためか、そのまま次男に相手をスライドしての婚儀だった。


まあ、この時代の政略結婚だから相手の顔も知らないでいきなり結婚だし、氏政は十六歳、相手の梅姫に至っては数えで十二歳という小学生状態。まあこの時代の特徴かと思いつつ、人質の俺は1561年に起こるかも知れない長尾景虎の関東乱入時に実家の裏切りでどうなるやら判らないので、嫁までは考えていないのが現状だ。


婚儀の行列は、武田家側はよほど気張ったのか、郡内領主で武田家重臣小山田信有の弟、小山田信茂以下三千騎、総数一万人という大群で小田原まで送ってきた。小山田信茂と言えば軍記物とかでは武田勝頼を裏切った事で有名だけど、実は北條家からも所領を給付されているという、両属している領主なんだよな。


小山田家としても武田家の家臣と言うよりは独立した領主で同盟者って思いがあるんだろうから、落ち目の同盟者より強力な織田家に鞍替えを狙った訳だが、織田信長にはそれが通じずに、裏切り者として一族処刑されたのは気の毒と言えば気の毒だが、そのお陰で郡内は戦禍に飲まれなかったのは立派な行為とも言える。まあ実際この世界で裏切るかは決まった訳じゃ無いから、松田憲秀の件も有るので変な勘ぐりを見せて警戒されたり、無用な恨みを買うのは止めましょう。


北條家側からは、評定衆であり家老でもある松田盛秀、江戸城代遠山綱景、御馬廻衆桑原盛昌以下二千騎が甲斐上野原まで迎えに参上した。


花嫁の供回りなどの装束も凄まじく豪華で流石武田家だと皆は言っているが、甲斐の内情を知っている俺にしてみれば、精一杯無茶をしているとしか思えない。


何故なら甲斐では天文十九年に大地震が有って以来、二十年は大干魃、二十一年は凶作で飢饉、二十二年は又干魃、二十三年も大干魃と大風で領民が多数死んでいる。つまり五年連続の大凶作という状態での無茶な婚礼行列というわけで、この資金は侵略で賄っている訳だと思う。去年二十二年八月の小県侵攻も略奪のための出稼ぎだろうな。


婚儀は豪勢に進み俺も参加させられたが、他の人質連中も初めて見たな。他の人質は大半が小田原城内で管理されているからかも知れないが、自由に動ける俺のほうが異常なようだ。幻庵爺さんには感謝だね。


まあ参加したと言っても末席だから、氏政や梅姫の顔を見ることはなかったけど。梅姫ってあれだよな武田晴信の正室三条方の生んだ子だから、まさか公家風メークなのかな。白塗りの眉毛の無い姿とか。おじゃるとか言うのかな?まあ会うこともないだろうから関係無いや。


それより、宴の膳に俺創作の蒲鉾、佃煮、みりん、焼酎、天ぷらが出されて好評なので、その搬入で売り上げUPですー!!人質として実家からの仕送りで生活している身としては、貴重な現金収入ですから。まあ実際は幻庵爺さん家の扶養家族ですけど、その辺は気にしないで良いそうですから、その分の金額は貯めておけとのことです。花婆様のお優しさが思い出されて、ほろりと来ます。


しかし、山國なのは判るし魚介類が少ないのも判るが、武田の随員達は海のものを大変珍しがって食している。しかも見る限りテーブルマナーも無い状態。まあ末端の兵にそれを求めるのも酷と言えるが、もう少し静かに食べようよ。酒かっ食らって、肴貪り食うのは恥ずかしいぞ。


まあこっちも鯛とか鮑は判るが、海豚は面食らうけど、まあこの時代だし鯨と同じと思えば良い訳でチャンと食してます。


宴が終わって爺さんの屋敷に帰ってきてから、町に出ていた兵庫介から聞いた話だと、武田家の随行員は一万人全員が正月過ぎまで小田原へ逗留するそうだ。武田晴信め、さては寒い時期の食い扶持を減らすために丸投げして来たな。そう思って幻庵爺さんに聞いたら、笑いながら肯定していた。


曰く『甲斐の飢饉は相当な物の様じゃ、晴信殿としても一万もの食い扶持を得る機会を逃したくはないじゃろう』と言われた。流石北條家の諜報部門の長だ。まあ未だ風魔小太郎には会ってないけど、居るのか不明なんだよな。風魔じゃなく風間出羽守っていうのは居るんだが、人質じゃ判らないのは当たり前だ。




天文二十四年一月二十日(1555)


■相模國足柄下郡 小田原城 三田余四郎


散々飲み食いしてお土産まで貰って武田家の随行員達が帰って行った。そんな感じで何時ものように屋敷で偽本を制作していたら、藤菊丸が近藤出羽守と一緒にやって来た。大分慌てている様子が判るけど何かあったのか?


「余四郎!すまん」

いきなり、当主の三男が傅役とはいえ家臣の前でたかだか人質に頭下げて謝ることはないだろう。

「藤菊丸様いったい如何したのですか?」


「金山のことが親父にばれた」

「はっ?」

金山の事って夢枕のことか?


「先週お前の言った所で金が出たんだよ。それで夢枕の話を聞いた梅姫姉様に話をする事に成ったんだが、辻褄が合わないと幻庵爺さんに見抜かれて、さっきまで爺さん筆頭に親父、叔父貴に搾られて、お前のダウジングの事を言っちゃったんだよ」


うげげー、ばれたら不味い事を言ってくれたもんだ。下手すりゃ武田に狙われかねんぞ!

「私はそんな話知りませんよ。藤菊丸さまの妄想ではないのですか」

「余四郎、逃げるな!!」


「いえいえ、きっと饗宴疲れが出たんですよ」

無視だ、トコトン無視だ。ここで認めたら負けだ!!

「無視するな、もうすぐ親父達がここに来るんだよ!!」


げっ、惚ける訳にも行かないと言うことは、狩りに行けばいいんだよ。

「あっそう言えば、此から山へ芝刈りに行かないと」

「何おとぎ話を言ってるんだ、桃太郎でも拾いに行くのかよ」


「いやいや、山で芝刈りのついでに蟹・臼・蜂・糞・卵・水桶等を家来にするんだよ」

「猿蟹合戦じゃないか!」

「いやいや、家の方じゃ犬猿雉じゃない桃太郎も伝わってるんだ」


「へー、其れは初めて聞いたな、って誤魔化すな!!」

「余四郎殿、もう手遅れですぞ」

出羽守の言葉に耳を澄ませたら、幻庵爺さんの声が聞こえるわ、逃げ損ねた!!


「藤菊丸、余四郎、其処に直れ」

氏康殿の野太い声に2人して畏まりましたよ。そりゃ戦国の名将ですよ逃げられる訳無いじゃないですか。


「はっ」

「はい」

氏康殿、氏堯殿、幻庵爺さんが揃って前に座って、出羽守は外へ出て廻りを警戒しているようだ。


「さて、先週だが、伊豆の土肥と瓜生野で相次いで金の鉱脈が発見された」

ここはおめでとうと言っておかないと。

「おめでとう御座います」


「そうだな、我が北條家としても慶事が続くことだ。しかしな、その発見が藤菊丸の夢枕に早雲様がお立ちになったと言う事だったが、梅姫が是非その話を聞きたいと申して、藤菊丸に話させたが、どうも辻褄が合わないのだ。余四郎はどう思う」

氏康殿の質問は真面目顔だし、氏堯殿と幻庵爺さんも真面目顔だ。ここは確りと意見ををしなければ。


「若輩者の意見で御座いますが、藤菊丸様は夢枕にての事であれば、記憶違いも御座いましょう」

「なるほどの、記憶違いか、それも確かにあろうな」

よっし、全て旨く行け!!


「そうじゃな、左京殿、藤菊丸が寝ぼけたのであろう」

幻庵爺さんナイスフォロー!

「兄者、そうしておいた方が良いかも知れん」


「そうするか。余四郎よ。藤菊丸が寝ぼけたのだな」

「はいそう思います」

よっし、勝訴だ!!


「と言うと思うか!金山の事として藤菊丸が余四郎の商売の売り上げの一部を受け取っていることなど、既に小太郎が把握済みじゃ」

「小太郎曰く、風魔を舐めて貰っては困るとの事じゃ」


爺さんからのカミングアウトだ!!風魔小太郎居たのかよ!!それも密かな事もばれてる!!って藤菊丸も相当やばそうだ。目が泳いで居るぞ。


「余四郎のダウジングとやらで金山を予想したことはもう判っている。しかし儂等としては、甚だ不味い事にも成りかねない事でな。梅姫に伝わったと言う事は判るであろう」


もう仕方ない、真面目に行かないとか。

「武田家に知られたと言う事ですか」

「その通りだ。其処で余四郎の力が知られれば、お前の身も危なくなろう。晴信は強欲な男だ、間違いなくお前を攫うぞ」


「父上、同盟相手をそれほど悪し様に言うのは何だと思いますが」

藤菊丸の言葉に氏康殿は苦い顔をして話し出した。


「藤菊丸、この戦国の世、親兄弟といえ殺し合うのが普通だ。家督争いが起こらない我が家が珍しいだけで武田も今川も皆兄弟親子で殺し合っているのだ。ましてや同盟相手や義兄弟さえ騙し討ちにする武田晴信を信じる事自体狂気の沙汰よ。今はお互いに向かう先が違うからこそ良いが何れ牙を向けてくるかもしれんのだ。精々利用してやるぐらいの気持ちで行かんと寝首を掻かれるぞ」


「そうよ、兄者の言う通りだ。敵なら敵と叩き潰せるが、味方ではどうしようも為らんからな。苦戦中に背中から刺されたら堪らんぞ」

「世は海千山千と言う事じゃ」


藤菊丸を教育するようにありがたい言葉を言う三人。鉾先が此方に来る前に終わって欲しいが、無理でした。


「さて、余四郎。今回の事や鉄砲の改良と鉄砲を担ぐための擦輪具スリングの開発、塩田などの博識を見せて居る。このままお前を放置することは、北條家としても看過できないことになって来た」

うげー頸ちょんぱの可能性か、やはり北條は怨敵だ!!


「其処で、今回の金山のことは、既に小田原中に小太郎の手の者により藤菊丸の夢枕の話を広めさせているので、余四郎のことがばれる心配は無用じゃ」

ありゃ、少し違うのか、幽閉か?


「そうよ、知っているのは、兄者、俺、幻庵老と小太郎だけだ。のう小太郎」

そう氏堯殿が言うと障子を開けて近藤出羽守が入って来た。

「叔父上、出羽はどうなのですか?」


藤菊丸が質問するが、俺もそれはそう思うぞ。出羽守も聞いてるじゃないか。

「ハハハ、本物の出羽殿は今日はお風邪を召されて屋敷で寝込んでおりますぞ」

出羽守が笑い出した。と言う事は、此が風魔小太郎か?


「小太郎、見事な物だ」

「はっ、お褒めに与り光栄に御座います」

うちら二人はポカーンですよ。スゲーぞ風魔小太郎!!


「小太郎、紹介しておこう。藤菊丸と三田余四郎じゃ」

「はっ、藤菊丸様、お初にお目にかかります。風魔小太郎で御座います。普段は別の名で奉公しております故、素顔は勘弁して頂きます」

「あ、ああ、藤菊丸だ宜しく」


「余四郎様、風魔小太郎で御座います。」

「此はご丁寧に、三田余四郎で御座います」

「余四郎様とは、一別以来でございます」


「えっ。何処かで会いましたか?」

「勝沼で黒板を買い求めました商人が拙者でして」

「ああ、あの小田原から来た」


「覚えて頂いておりましたか」

「はい。あれほど評価して下さった方は居ませんでしたから」

「あの時は、余四郎様の調査をしていた訳です」


なるほど、あの頃から目を付けていた訳か。情報駄々漏れジャン!

「そう言う訳で、我らが余四郎を人質に求めたのは、余四郎の才能を買ったからと言う事だ」

「その通りだ。最初は半信半疑だったが、色々見ていて感心することばかりであったからな」


「従って北條家としては、お前を金輪際実家へ差し戻す気は無い」

「それどころか、余四郎には妙の婿に成って貰う事が決まっている」


はぁっ!!!!妙姫って確か史実では千葉親胤に嫁ぐんだろう!!!それが俺の嫁ですか!!!しかも北條一門入りですか!!!どうするんだよ!!!ドラ○もん何とかして!!!


「良かったな、余四郎。此で名実共に兄弟だ!!」

藤菊丸が喜んで俺の肩をバンバン叩いて痛いが、そんな事はどうでも良い。どうすんだよー!!!


「其処で、来年早々余四郎の元服と妙との婚姻を致す」

「余四郎には三田姓を捨てることはせずとも良い。未だ未だ家中には他國衆に北條の名を名乗らすを良しとせん者も多いからじゃ」

「それと、余四郎には台所領として相模酒勾村三百八貫を与える事とする」


えっと其処って実家に加増されてませんでしたっけ?

「酒勾村だが、先年弾正少弼から、余りにも所領より遠すぎるとの申し出で領地替えを行い、入間郡内に替え地を与えた」

あちゃ、遠いからって海に面した良好な土地を捨てるんか。実家マジ遅れてる!!


しかも三百八貫って近藤出羽守の所領が百五十貫ぐらいだから倍だよ。しかも三百八貫と言えば江戸時代の石高だと一貫四石ぐらいだから千二百三十二石、台所領としては凄いぞって喜んでいる訳にも行かないが、婚姻は決定だろうな。Orz


「従って、今日より余四郎は妙の婿として扱う故、その旨を承知せよ」

頭下げて、諦めモードです。藤菊丸の喜ぶ様が恨めしく思えます。


「所で、そのダウジングとやらを見せてみよ」

「はっ」


もう矢でも鉄砲でも持ってこい!!!


と言う訳で知っている秩父鉱山とか和銅鉱山とかの位置を占いましたよ。それに水銀アマルガム法を書いた偽書とか技術チート本も提出しました。技術チート本は沢庵和尚の受け売りとしましたけどね。大秦ローマの話がシルクロード廻りで来たとか、ソグド人の安一族の本からの知識とかと言う形で偽書を作りまくってましたから、その辺の提出でOKでました。


あーーー父さん母さん、人生って面白いか?北條綱成ルートってどんな無理ゲーだよ!!坂東太郎と戦うのか俺が!!あんな化け物相手できるか!!ああ一騎当千の家臣が欲しい。それに我が子房よ何処に居る!!


前田慶次郎とか竹中半兵衛とかが切実に欲しいぞ!!!

スリングですが、本来なら負革とするところですが、当時の鉄砲の持ち方が銃口を下向きにして背中に斜めで挿すという方式も有ったので、銃口を擦らない輪っか機具という感じで、擦輪具としました。


みりんは以前は酒としても飲まれていました。


台所領について、その言葉ののままで、日常生活に必要な資金や資源を供給する所領の事、大概、軍役の為の所領計算には入らない。



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[一言] 美濃まで行くのはとおすぎます
[一言] 安心してくれ、一部以外の人は皆知らん笑。(その代り丁寧、丁寧、丁寧に歌うようにー)
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