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三田一族の意地を見よ  作者: 三田弾正
第伍章 坂東怒濤編
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第百二十六話 予期せぬ帰国

大変お待たせしました。

今回は氏規関係のお話です。

相も変わらずですが、感想、メッセージは全て読んでおります。返答が出来ておらずに大変心苦しく思っております。必ずや返信いたしますので暫しご容赦くださいませ。

永禄元(1558)年十月十日


■駿河国安倍郡府中 北條助五郎


十月ともなれば流石に肌寒く感じ冬の訪れを示すように北の山々から寒風が下り始めた。私は相駿同盟の証人(人質)として駿河へ来て以来、日々勉学に軍学に努力の毎日。そんな中、朝の鍛錬をしながら季節の移り変わりを感じている。


鍛錬が終わり何時ものように朝餉を食していると突然、叔父(今川義元)の近習が書状を持ってやって来た。受け取って読むと『明日夕方に内々に宴をするので館へ来るように』と簡素に書かれていた。


はてさて、叔父とは叔父甥の関係ではあるが、証人としてきて以来、何かに付け私のことを、実子のようにかなり気にしてくれているので近習が迎えに来ていたのだが、この様な書状などで呼び出される事は無かった。


それに未だ未だ酒は早いと体を心配してくれ公式な宴以外には呼ばれなかったし、ここ数日以内に宴を行うような案件は無かったが、しかも私的な宴であれば尚更なのだが、これは一体全体何が有るのやら?


「若、平三郎ただいま帰りましたぞ」

叔父の召還の意味を考えていたら、近習として一緒に駿河まで来た平三郎(南条平三郎なんじょう へいざぶろう元高もとたか)が何時ものように酒に酔いながら帰ってきた。


平三郎は私より五歳しか年が違わないにもかかわらず、十四の時(天文二十二(1553)年)、父(北条氏康)と叔父(今川義元)が戦った泉頭の戦で軍功を上げている。戦自体は疑心暗鬼の中での偶発的なものであったが、一時は再度河東へ攻め込むかと大人衆が話していた事を幼いながら覚えている。


しかし、一転しこの直後に武田大膳大夫殿が仲介に立って事なきを得た。大膳大夫殿も新九郎兄上(氏政)と梅義姉上の婚儀が有るために仲介の労をかって出たのであろう。そして翌年には綾姉さんと義兄上(氏真)の婚儀によって三国の盟約が結ばれたわけだ。


その同盟が原因で、ここ(駿河府中)へ来る羽目になった訳だが、まあ隣の次郎三郎殿(松平元康)とも知り合えて仲良くなれたので良しとしなければ成らないだろう、なんと言っても人質とはいえ、一応、お婆様(寿桂尼じゅけいに)の実の孫にあたるわけで、此が新太郎兄上(氏邦)のように母上(瑞渓院ずいけいいん)の子でなければ監視などや出歩きも制限されて遙かに厳しい状態で有ったであろう。


「若、その様な顰めっ面をして、なんぞありましたか?」

「此を見よ」

私が、書状を渡すと、平三郎は『フム』と読み終えた。


「なるほど、此では何故宴をするか分からないわけですか」

「そうだ、それで考えている」

「いやはや、成るようになれと言うでは無いですか・・・・・・うー、気分が悪い、誰か酒を持ってこい」


「平三郎、又酒か?」

「いやー、府中の酒は不味いこと不味いこと、まるで馬の小便の様な物ですぞ。やはり酒は小田原から送られて来る、清酒が一番ですぞ」

まあ、確かに府中に来て驚いたのは酒も食事もあまり旨くないことだった。うーん、これはやはり長四郎義兄上の料理に慣れてしまったからだろう。


「お待たせいたしました」

考えていると侍女が酒と肴を持って現れた。

「待ちくたびれたぞ」


グイッと一杯飲み干して『プファー』と息を吐く姿はどう見ても十代とは思えない業の行った姿だ。そんな飲みっぷりを眺めていたら平三郎が徳利を持って私に勧めて来た。


「ささ、若も一献」

「平三郎、昼間から酒は」

「ま、ま、少しは飲んで頭を休めた方が良い知恵も浮かぶと言いますから」


まあ、確かに意味の分からん内容であるし・・・・・・

「判った一献だけだぞ」

「無論にございます。まだ酒の味も良く判らない若には勿体ない酒ですからな。いやー江川酒に勝るとも劣らない、いや都の柳(京で超有名な酒)にも負けませんな。流石は若の義兄殿ですな、ありとあらゆる事に如才ない事この上ない」


流石は平三郎だ、長四郎義兄上の事を褒められると嬉しいな。

「旨い旨いな」

「おお、若も酒の味が判るようになりましたか」


小馬鹿にされている様な気がするが、まあ此が平三郎なりの気の使い方だから気にはしない。


その様な状態でついつい飲み過ぎて意識がなくなりぶっ倒れたらしい。私が気がついたのは二刻(四時間)ほどの後のことだった。


「うー、頭がガンガンする」

「お目覚めどすか?」

ハット気づくと、居間ではなく寝所へ運ばれ布団に寝ていた。

それだけなら良いのだが何故か布団には女子おなごが添い寝していた。


「ななななな」

「若、騒がしいですぞ」

よく見れば、隣では顔中に女子からの口吸い(キス)で紅を付けまくった平三郎が。


「何が有った?」

とにかく冷静沈着にだ。

「単に、若が酔いつぶれたので起きるまで、寂しかろうと思って俺が囲っている馴染みの芸子とその妹を呼んだまでですが」


「な、なんだって!」

「若、声が大きいですぞ」

そうは言ってもこの様な悪戯をされては・・・・・・と言うか、女子と寝るなどしたこともないし、いや母上の侍女に添い寝して貰って以来か・・・・・・?


「若、ご安心くだされ、一線は越えていませんから」

「あ、当たり前だ!」


恥ずかしいったら有りはしない、この様な所を姉上にでも見られたら、それこそお説教の嵐では無いか、綾姉様は昼間っから酒を飲んでいるような事を好まないと言うか、私のような若年者が深酒するのを嫌っているからな。正に父上と大叔父上の影響か、先だっても大叔父上の嫡男たる三郎殿(時長)を朝酒、深酒、徹夜酒をするから注意をしたそうだからな。私も気をつけなければならないな。


「きゃー、平三郎様、そこは駄目です♡」

「ここがここが良いのか」

「あれ~♡」


しかし、私が考え込んでいる中で、平三郎は相変わらず、女とイチャイチャしている。平三郎兄上(氏照)

と同じ仮名けみょうだが、女癖は超悪いようだ。その上、敵地でも有った駿河で平然と怪しいところへしけ込んでいるのも平三郎らしくて大胆不敵で呆れるやら感心するやらだ。まあ仕事などは確りとやるし、機転も利くのだから、平三郎はこう言う男だと考えて、あきらめが肝心かもしれない。


「若も一緒に混じりますか?」

私がジーッと見ていたら、あろう事かとんでもない事を言い出した。

「出来る訳が無かろうに!」


「あら、あらあら、お坊ちゃまには筆下ろしが必要かもしれまへんね」

「ほんまですの」

女達の言葉に思わず憤慨しそうになるが、この程度の口撃で動揺してはならん、散々平三郎兄上と長四郎義兄上の行動と言動に慣れさせられたのだから。


「おいおい、言い過ぎだぞ、若はもう少しすると、今川様の覚え高きお方のご息女と祝言をあげる事に成るそうだから、今少しの辛抱という事よ」


なっ、その様なことは聞いていないが?

「平三郎、その話は真か?」

「真も真にございます」


「私は、聞いておらんぞ」

「拙者も若が寝ている間に去る筋から聞き知ったばかり成れば、若が知らぬも当たり前です」

「つまり、明日の宴はその話か?」


「そうらしいです。此で若も立派な大人ですな」

それはそうだが、その様な大事を部外の女に聞かせて良いのか。

「それより、その女達を下げろ」


俺が言うと、平三郎は女達に一言二言呟いた。すると女達は手を振りながら部屋の外へ出て行った。

「何をしに行ったのだ?」

「ああ、風呂の支度をさせに行かせましたよ。一戦交えるには先ずは身綺麗にしてからの方がよいですから」


「お前という奴は・・・・・・」

「この程度でお怒りでは、幻庵様のお相手は出来ませんぞ」

そうなのだよな、平三郎は大叔父上(幻庵)が使わした人材、こいつのせいで以前に増して我慢強くなった。仕方ない諦めて話を聞くか。


「で、相手は?」

「お相手は、朝比奈左京亮あさひな さきょうのすけ泰以やすもち)殿のご息女、古知殿でございますよ」

朝比奈左京亮? 朝比奈一族にその様な人物がいたであろうか?

うむー、思い出せないが、仕方ない平三郎に聞くしかあるまい。


「平三郎、私の記憶には朝比奈左京亮殿とはとんと判らないのだが左京亮殿とはどの辺りの領主なのだ?」

平三郎がニヤニヤ笑いながら答える。

「朝比奈泰以殿は先年亡くなられた朝比奈備中守あさひな びっちゅうのかみ泰能やすよし)殿の叔父です」


「備中守殿の叔父と言うことは相当な高齢では無いのか?」

「そうですね、生きていれば百は越えているのではないでしょうか?」

「はぁ? 生きていれば百?」


「はい、あくまで生きていればですが」

「では、既に亡くなっているのか?」

「はい、聞いた話では永正十五(1518)年に亡くなられたとか」


「四十年も前では無いか、ならばその古知殿はいくつなのだ?」

「聞いた話ですが、四十一とか」

「平三郎は私を馬鹿にしているのか!」


あまりの巫山戯に頭に来た瞬間に後ろから先ほどの女の姉が現れて耳元で囁いた。

「若様、あちきは、幻庵様の手の者、全ては今川家中の澱から来る嫌がらせです」

いつの間にやら現れた女の妹が幻庵殿からの委任状を見せ説明してきた。


幻庵殿のお墨付きでは仕方ない、ここは芝居を踏むか。

「四十一の姥では立つ物も立たん、ここは平三郎の話に乗ってやるわ」

「あい」


「精一杯、頑張りますね」

「若もやっとやる気が出ましたか、此は楽しみです」





「今宵の宿直とのいは俺がするので下がるように」

平三郎が宿直に来た近習を下げさせる。近習は何か言いたそうであったが、平三郎が『今宵若はお楽しみだ』と告げ、姉妹が顔を出すと納得した様に下がっていった」


「近習に人払いさせた理由が女子と遊ぶためとは、問題も生じようが仕方の無い事か」

「まあ、あの者は口が堅くは無いので噂ぐらいは流れるでしょう」

「姉上に知られるか・・・・・・」


「まあ、その辺は大丈夫やと思います」

姉がそう言うが不安はある。

「さて、阿主沙あずさ、今宵は寝かさぬぞ」


「あれー、帯を回すのは酷いでありんす」

平三郎が姉の帯を持って引っ張るとクルクルと回って帯がほどけ服がはだけてなんとも良い香りが漂う。

なるほど姉は阿主沙と言うのか。


「平三郎よ、そのような・・・・・・」

私が注意しようとしたが、妹の方が私にピタッと着いて胸を押し当ててくる。

「お主、そのような事は・・・・・・」


「あら、緊張してますかえ?」

そう言いながら、俺の手を持って着物の間に手を入れされ胸に触れさせる。

「お主」


「だめどすで、あちきの名前は沙羅紗さらさですえ」

「沙羅紗、今はその様な・・・・・・」

そう私が言うと、耳元で囁く。


「若様、今はまだ周りに気配があります。今は楽しむ振りを為さってください」

変な都言葉から一転しての確りとした言葉づかいに驚くが、確かにそれはそうだ。しかしその程度の事を失念しているとは、未だ未だ修行が足りないか。


暫し時がたち頃が良くなったのか沙羅紗が耳元で細評を告げ始めた。そんな中でも平三郎は阿主沙と一戦交えている・・・・・・


「今回の件は、以前三田様に散々虚仮にされた瀬名源五郎が中心になり動いたものです」

「義兄上達に絡んだ末に漏らした源五郎殿か」

「はい、彼の者は自尊心、いえ自惚れが誰よりも大きいようですから、漏らしたことが屈辱と感じ常日頃、『金で五位を買った俄典厩ごときが公方様との縁続きで由緒ある源氏の名家で九州探題今川了俊様の末裔、そして氏親公の孫でもある俺に対して屈辱を与えるなど甚だ我慢ならぬ』と酒の席などで気勢を上げているようです」


なんと、かの了俊殿の子孫とは思えぬ体たらく、しかも母上の甥で偉大なるお爺様、お婆様の血を引いているとはとても思えない。義兄上が申しておられたが『育った環境が人を作る』とは身にしみて判るか、彼の者は名門の家だけを誇りに思い。それ故に傲慢になったのであろう。私も明日は我が身と考えて身を正さねばならないな。


「阿呆で我が儘なガキの浅はかな嫌がらせですか」

「そうなるが、叔父上は何故私を宴に誘ったのであろうか?」

「なんでも『助五郎殿も早十四、そろそろ元服の時期なれば宴になれておくのも良いことでは』と御曹司(氏真)を取り巻きが誘導したとか」


「何と、従兄殿(氏真)も付き合う者の本質を見極めなければ駄目であろうに」

私が渋い顔をすると平三郎が茶々を入れてくる。

「御曹司殿は蹴鞠に連歌、最近では三田様がお教えした蹴鞠しゅうきく(サッカー)に夢中で蹴鞠大会なども開いてますから、治世の能臣、乱世の奸雄などを見切ることなどできないでしょうな」


「平三郎、仮にも同盟相手の御曹司をあからさまに扱き下ろすとは」

「ハハハハ、若も大概ですな」

「まあな」


こうでも言わんと、今川家中の体たらくに腹が立って仕方が無くなる。

「若様、今現在は我らが監視をしておりますが、若様には努々相手の手に乗りませんようにしていただきたく」

「しかし、明日の宴を欠席するわけにも行かないぞ」


暫し考え続ける。その間にも平三郎は相変わらずで、時々茶々を入れてくる。

「ならば若、諦めますか、それとも病にでもなりますか『持病の癪が』とか言って」

絶妙な茶々にだんだん腹が立ってきた。


「報があるようにございます故、一旦離れます」

沙羅紗が身を正して寝所から退室していく。

「おやおや若、寂しゅうございますか?」


また平三郎がニヤニヤしながら茶々を入れてくる。

全く、此奴といると我慢強くなってくるわ。十年も一緒にいれば悟りが開けるかもしれん。


そんなこんなで、一刻ほど悶々と過ごしていると、先ほど一旦外へ向かった沙羅紗が帰ってきた。

「沙羅紗、何か判ったか?」

急かす私に対して沙羅紗は笑みを浮かべる。

「若様、茶でも飲まれて一旦落ち着きなさいませ」


確かに焦りは禁物だと考え茶を貰うと、実に肌理細やかで円やかな茶であったため、心が多少でも落ち着いた。私が『ほう』っと息を吐くと沙羅紗がニコリと笑い話し始める。

「件の件はご安心を、既に寿桂尼様の元に仕えている者に、一部の阿呆が良からぬ事を企てているとそれと無しに伝わりました故に、早ければ昼前には済むはずです」


「はぁ?」

一瞬間抜けな声をだしたが、仕方が無いと言えないか?

あれほどどうにかしなければと思っていたことを既に対処済みとは、それならばこの様な乱痴気騒ぎをする必要も無かったのではと・・・・・・


「いやはや、待てば海路の日和ありとも言いますから。これで安心ですな」

「平三郎、ならば最初からお婆様に伝えれば良かったのでは無いか?」

私の質問に平三郎は平然と答えた。


「いやー、あまり簡単だと、若が考える事をしませんから、此も修行の一環と考えれば腹も立ちますまい」

「おい話の後で、小声で『ここで遊べるし、若も女子を知ることが出来るから』って聞こえているぞ!」

「いやいや、良いでは無いですか、此で世間では若は既に大人と認められましょう」


ちい、嵌められたか、しかし義兄上(康秀)の様に私も女運が悪くなったのか?

「若、何れ通る道ですぞ」

此は平三郎の策じゃ無いな、恐らく父上の黙認で大叔父上が差配したか、大叔父上も義兄上だけではなく私にまで仕掛けてくるとは恐ろしいことだ。




永禄元(1558)年十月二十五日


■伊豆国田方郡三島 黄瀬川大橋 北條助五郎


あれから十日がたち、沙羅紗の言うとおりお婆様の手配により企みは雲散霧消した。

それだけでは無く、征東大将軍様に仕える北條から人質を取るのは問題ありと言う理由から、私は急遽小田原へ帰還することが決まった。私は四日後にその事をお婆様から伝えられて驚いた。



帰還が決まれば早いもので、僅か十日で支度と挨拶回りを済ませ、姉上、お婆様、次郎三郎殿などと別れを惜しんで帰国の途についた。


「いやはや、これでユックリと小田原で遊ぶことが出来ますな」

平三郎は相変わらずだ。

「私が帰国することで北條と今川の間で問題が起こらないかが心配だ」


「それは心配するほどでは無いでしょう。今、今川は尾張侵攻の準備で精一杯ですから」

「それは判っているが、万が一と言うことがあるだろう」

「その辺は御本城様と幻庵様に任せるしかありませんな」


「確かにそうだが、父上に怒られはしないか不安だ」

「まあ、その時はその時と諦めましょう」

「お前は・・・・・・」


「それにしても、僅か数年でこれ程の大橋を架橋するとは、御本城様の面目躍如ですな」

話をそらすように、平三郎が橋の話をし始めた。此は義兄上が設計した橋であるから思わず自慢したくなる。


「確かに、コンクリートとか言う物らしいが、普通の洪水くらいではビクともしないらしい」

「話では、酒匂川と早川にも同じような橋が出来ているとか」

「ああ、馬入川にも架橋するそうだ」


「ほう、源頼朝公の砌に有った橋を架けるとなれば、御本城様の名声は日の本に轟きますな」

「だな」

「おっ、対岸に迎えが来ておりますぞ」


「本当だ、あれは平三郎兄上と義兄上の馬印だ」

「お二方が迎えとは愛されておりますな」

「言うな」


兄上、義兄上ありがとうございます。助五郎はかえって参りました。




永禄元(1558)年十月二十五日


■伊豆国田方郡三島神社 北條助五郎


帰国に関して一抹の不安はあったが、三島について平三郎兄上と義兄上が迎えに来てくれた事で不安も一掃された。


久々の再会に大いに喜ばれ、兄上と義兄上から『大きくなった』や『精悍になったぞ』などの手厚い歓迎をうけて今宵は三島神社に世話になることになった。


久々の開放感に大いに飲み食いし大いに満足した。今回も義兄上が腕によりをかけてくれた、懐かしい料理や新作の料理などを沢山作ってくれた。


宴も終わり人払いの後、兄上、義兄上、平三郎、私、久々にあった小太郎(風魔小太郎)と話を始めた。

そこへ、あの夜を共に過ごした阿主沙、沙羅紗姉妹が若侍姿で現れた。

思わず、あの夜のことを思い出して顔が赤面してしまった。

それを見て兄上達はニヤニヤしている。全て知っているわけだよ・・・・・・


その様ななか、阿主沙と沙羅紗から放たれた言葉に驚きを隠せなかった。


「今回の件は義元の嫌がらせです」

「馬鹿な、何かに付けて私のことを心配してくれている叔父がその様な事をするわけが無い!」

いきなり飛躍した話に驚いたが、冷静になってみれば叔父上が何故嫌がらせをするのか判らない。


「若様、それは義元の擬態でございます」

「しかし・・・・・・」

「詳しく申しますと・・・・・・」


沙羅紗の話を聞いて驚いた。なんと叔父はお婆様の実の子では無く、お爺様(氏親)が都から来た公家の娘に手を付けた子であり、母親は産後の肥立ちが悪く亡くなったために、お婆様が育てたそうだ。


それだからこそ仏門に入れたが、伯父二人が相次いで亡くなったので仕方なしに実子扱いにしたそうだ。その上、叔父は北條を家来筋ぐらいにしか見ておらず、その北條が征東大将軍様の後見人に成ったのが気に障ったらしい。


そこで、一部家臣が企んでいた今回の件を黙認する気になったらしい。無論お婆様には露見しないよう宴でしこたま酔わし、そのまま古知殿と同衾させ既成事実を作らせ、『全ては私の致したこと』とお婆様にも認めさせるという事だった。


海道一の弓取りと言われている叔父がこの様な児戯の様な話に乗るとは呆れて物が言えない状態だった。しかし冷静になって考えれば、それほどまでに将軍様の件が叔父上を追い詰めたのか。矜持と言うのか、はたまた面目が立たぬと言うのか、私には今ひとつ判らない事だ。


世の中はままならない事ばかりだと、義兄上が言っていたが正にそうかもしれない。


まあ、後は、父上、大叔父上に頑張って貰うしかないか。明日はいよいよ小田原だ楽しみだ。




永禄元(1558)年十月三十日


相模国西郡小田原 北條助五郎


そう思っていた、僕を殴りたいかも?

小田原へ着いて父上母上を筆頭に皆に挨拶回りを終えて久々の小田原の町並みに散策していたら事件に巻き込まれてその結果・・・・・・

「其方、気に入ったぞ妾の婿になれ!」

この子誰???????????


なろうの執筆形態が更新されから、書き辛くてたまりません。

上書きにしてないのに上書きで文字が消えるし、文字変換したら、カーソールがその文字の前に行くので何度も文字が消えてやり直し、何とか出来ない物ですかね?


助五郎の最後の独り言で私から僕になっているのは、気が動転しているからです。

しかし、謎の少女はいったい誰なんだろう?


氏規の正室は北条綱成の娘なのですけど、今川人質時代に朝比奈泰以の娘が嫁いだという話もありまして、ただ書いたように1518年に亡くなっているので、矛盾が生じているんですよね。伝承の間違えか、孫娘とかなのか、はたまた朝比奈違いなのか不明なのですが、その辺を鑑みて話にしてみた次第です。

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