父とパパは別かよ~っ!
毎晩でも、今でもバリエーションを変え、繰り返されてる話だと思います。
もうすぐ卒業という頃、博多は中洲の夜の女性を好きになったことがある。
一度、店がハネた後、デートしようと誘い、デートしたことがある‥‥今なら、「アフター」した、で済む。
待ち合いに決めた喫茶店で待ってると、女は、自分の部下と思われるような女と二人で来た。
「帰る方向おんなじだし、ちょうどおなかも空いてたし、いい?」
「うん、いいよ」
サンドイッチ、その他の軽食をとり、店を出たら、さすがに師走、目を凝らすと白い雪が降ってきて、彼女の黒いコートの上で消えた。
店内からイーグルスの『呪われた夜』が聞こえてきた。
いつの間にか、彼女が連れてきた女もいなくなっていた。すると彼女は、
‥‥この頃わたし、いつも考えてるんだけど、この商売は長く続けてはいけないと思うの。前に簿記とか珠算、勉強してたんだけど、もういちどやりなおして、ちゃんとした職に就きたいの。
‥‥いいことじゃないか。
‥‥で、お願いがあるんだけど。
‥‥何?
‥‥お金、貸してほしいの。
‥‥百万なんて無理だよ、学生だし。
ふふ、と笑い、
‥‥二万でいいの。
僕は貸した。
社会人となり、関東で過ごした。
なかなか返却されなかった。
いくらヒトのいい僕にも、騙されたと理解できた。
僕は彼女に手紙を書いた。はやく返却してくれ、とは書かなかった。
返事が、来た。「なんだか、あなたの書くことに皮肉を感じます。いえ、分かってます。わたしがいけないのかもしれません。もう少し持ってください」とあった。
夏休みが近づいても返却されない。
もはや返してもらうこともないとは解っていた。
そして夏休み。
帰省のついでに、彼女の家をさがしてみることとした。
博多区の町名だった。
何かしら、「貧民窟」という言葉が連想された。
住所を頼りに女の家をさがし当てた。
崩れかけたような暗い家の前、250ccくらいのバイクが置いてあり、幼稚園児であろうか、二人の男の子がサドルにのって遊んでいた。
「石村里子さんのとこって?」
「ここやけど、いま、おらん」
「お父さんは?」
「死んだ」
「じゃあ、それ、だれのバイクなん?」
「パパの‥」
里子さんは、子供に、父さんは死んだ、今いるのはパパだ、と教えていたんでしょう。今の僕なら、喫茶店に女を連れてきた段階で、あ、フラれたと理解する。




