金色の獅子 前編
少し安堵。
ゆっくりその場に座って息を吐く。
「ゆっくり休憩も出来ないのかよ」
水溜まりに波紋。
大きな振動、揺れる木々。
そして聞こえて来るのはかなりの数の足音と、再び現れたゴブリンの軍。
「鎧着てやがる」
しかし、先ほどとは明らかに違うゴブリンの軍だ。
先ほどのゴブリンの目は真っ赤だったが、こちらは真っ黒。
統率感もなければ知性も感じない。
「ギァアァ!!!」
「ゴァ!ゴァ!」
しかも闇雲になにか喚いているだけで人語をしゃべることもない。恐らく奴ら引き上げる道中のゴブリンの巣をつついたか何かししたのだろう。
これなら、そう思ったが追いかけていたと思われる斥候が息を切らせて飛び込んできた。
「ダメだ!ハイオークの軍団だ!防衛砦まで逃げろ!!」
「なに!?」
その言葉の直後、ドスンドスンと大きな足音が響く。
なるほど、先ほどの波紋はこっちだったか。
「邪悪な者を食い止めよ、光防壁」
黒い狼亜人が光魔法を使った事にびっくりしたのか、全員が一気に俺を見つめる。しかも使い手が少ないと言われている光属性だ。
出来れば俺も使いたくなかったよ。
「俺が壁を展開して時間を稼ぐ」
ここで戦闘しても良かったが、兎に角今は残った討伐隊を安全な場所まで下げることに舵を切り替える。
そして今考えられる一番の安全な場所。
「あんたらは砦まで下がってくれ!」
亜人の俺が言ってもあれか、と、思ったがどちらかというと「一般人を置き去りにするのは」という思っても見ない反応だった。
「私たちはA級冒険者です」
すかさずトゥルムが補足をいれる。
A級、良かったという声と同時に「砦まで撤退!」の声が響く。
「トゥルム、やれそうか?」
「ゴブリンなら」
ここまで連戦し、トゥルムは大きな魔法もいくつか撃っている。
そして、一番の問題は…。
「ニガスナ」
ゴブリン軍の背後から2メートル程のモンスターが20体程姿を表す。ハイオークだ。B級モンスターだが、魔法耐性が極めて高い。そして何より数が多すぎる。
「なら俺達も砦まで下がろう。撤退だ」
「大丈夫ですか!?」
下がりながら徐々にトゥルムの顔が曇りはじめる。
それもそのはず。もう20は防壁魔法を置きながら撤退しているからだ。
縦5メートル横10メートルにもなる光属性の壁だが、魔力コストがあまり良くない。
「大丈夫。まぁ、あと10個くらいが限界だけどな」
しかし、前進してくるハイオークの斧十数発でバリンバリンと音を立てて割られていく。
「人間ハ始末スル」
砦まで到着すればあとは籠城戦に持ち込む。
こちらの回復を優先しながら討伐隊をオリンポスの都市へと逃がせば良い。
流石に大都市オリンポスの城壁を突破出来るモンスターではない。
「ま、上手く行けばだけどな…」
討伐隊が砦に全員撤退したのを確認し、二人も急いで砦の中へと撤退した。




