黒き狼
アナザーアース
ここは第二の地球
この世界には4つの種族が存在している。
1、神族
2、人族
3、亜人
4、怪物
神族は太古の神々や英雄の名をもつ者達。
オリンポスの壁画にその名が刻まれ、世界のどこかでその名の神託を受けた子が産まれるという。
今は24の神族が各地の守り神として崇められている。
「柱」「守護者」「天使」「支配者」呼ばれかたは国により様々ではあるが、基本的にその国を統べる存在。
人族は地上の支配者であり、各国の王族が人族の覇権を取り合っている。
亜人はこの世界で一番数がいるが、昔人族との戦争に負け、それ以来人族は亜人を奴隷のように扱っている。
そして怪物。いわゆる化け物やモンスターの類いだ。
時折町に出ては人を虐殺する恐ろしい生き物。
どこから産まれているのか、いまだ謎大き生物。
「おはようございます、ご主人様~」
起床時間ちょうどに部屋へと入り、カーテンを開けて朝の日差しを部屋にふんだんに取り込ませる。
ベッドから寝坊助の“ご主人様”が長く白い髪の毛をぐしゃぐしゃとかき揚げながら、不機嫌を全面にした仏頂面で睨み返してきた。
「やめて下さい、私の事はトゥルムと」
「それは無理ですよ~、ご主人様?」
この仏頂面の顔を眺めるのにもだいぶとなれた所。
せっかくの綺麗な顔立ちも、これでは形無しだ。
しかし、それが楽しくて止められない。
「ごめんごめん。でもこの姿の間はちゃんとなりきらないとな。だろ?」
俺は今、真っ黒い狼の亜人の肉体になっている。
逆にトゥルムは人の姿をして目の前に座っている。
説明するとややこしいのだが、それが原因で母親から屋敷を追い出されたに近い。
「私がちゃんとお守りできなかったばかりに…」
16歳の冬。屋敷が襲撃された。
襲撃犯に呪術をかけられて殺されそうになり、トゥルムが庇ってくれたまでは記憶にある。
そして、起きたら体が亜人になっていて、トゥルムが人の姿に。
入れ替わってしまった、というわけだ。
「気にするな」
下手人は大方の予想はついているが証拠がない。
世界を回りながらこの呪術を解く方法を探すしかないのだ。
幸い父親から旅に行く資金はそれなりには貰えた。
「さて、オリンポスまではあと少しだ」
あとは旅をしながら各地のお尋ね者や政府からの怪物の討伐依頼をこなせば、旅の資金に困る事はない。
「……壁画を見ろ。答えはそこにあり、、ですか?」
「半分信じてるが、半分信じてねぇ」
数日前に立ち寄ったギルドにいた、占い師と名乗る女性。
呪いの事を聞けば、いきなりそう言われたので、藁にもすがる思いで今オリンポスへ向かっている。
「呪詛は5年、解けねば万年。残された時間はあと3年もない…」
正直亜人も悪くないと思っている。
亜人族でもガタイの良い、大型の狼亜人だ。
大型犬科亜人・大型猫科亜人、大型鳥亜人、熊科亜人族は類い稀な力があり、どの国でも傭兵や兵隊として奴隷身分ではあるが宝されている。
中には軍人階級を獲得している亜人もいるくらいだ。
そして、その大型亜人で“黒曜色”は当たりにも等しい。
「人間の姿は嫌か?」
が、トゥルムがそうは思っていない。
庇いきれなかったことをずっと気にしているし、元の姿に戻ろうと必死なのはむしろトゥルムの方だ。
「鏡を見るたび、不甲斐ない気持ちになります」
差別されることも虐げられることもない。
飯は床で食えと泥水を啜らされるような亜人もいる世界で、人の姿を手離したがる事は珍しいどころか奇人変人の類いだ。
「俺は意外と気に入ってるけどなぁ、この姿」
「そんな事………、言わないで下さい…」
それでも奴隷は奴隷の地位でしかない。
一部の階級を取得出来た亜人以外は、街中で食事をすれば机で食事は出来ないし、泊まりで部屋を取れば大半が部屋に入ることを拒否する。
人様の使うベッドで寝ることなど言語道断なのだ。
「俺が元の姿に戻ったら、父を説得して国を変える。“桃源郷”のような国を作ろうと思う」
「命尽きるまで御一緒致します」
この世界には10の国がある。
エリシオン、オリンポス、ルンビニ、ティベリア、シャンバラ、ムー大陸、ティル・ナ・ノーグの大陸続きの7つ国と、アトランティス、イズモ、桃源郷の何処とも大陸が繋がっていない海に囲まれた3つの島国だ。
そして桃源郷は全ての種族が平等に暮らしていると言われていて、亜人はみなその国へ行きたがる。
実際はそう簡単には行けないのが現実なのだが、そんな国がもう1つあっても良いだろう。
「よし、さっさと先に進むとするか」




