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【番外編】呪に至る混沌




「おめでとうございます」


元気な女の子です、と、いう声と。


「そうか」


労いの言葉を発する夫の顔は三女の時とは違い、にこやかだった。

それが一層、心を不安にさせた。


「また、女児か」


バトラズとは違い、父と母は溜め息を残して王宮を後にした。

女児しか産めぬ皇后。世継ぎを絶やす戦犯。


「……女王が誕生するのも良いと思うんだがな」


その時は、バトラズのその言葉が嬉しかった。

男児にこだわる必要はない、気にするな、そういう言葉だと。


「なら、制度を変えなければなりませんね」


この国の国王は男児のみという暗黙の了解があったのだ。


「確かにな」


なのに何故だろう?心がざわざわする。

本当にそうだろうか?その言葉を信じるしかなかった。



夫が外に子供を作っていたと知ったのは、その少しあとだった。



「マーリン様」


その言葉を信じたのが間違っていたと気が付いた時。


「アーサー・ペンドラゴン、ムー大陸の皇太子」


足元がなくなったような、底知れぬ闇の中に落ちていく、、そんな感覚。


「……ついに待望のお世継ぎですか、おめでたい」


隣から聞こえた声は私の心を混沌とさせた。


「あれ、でもマーリン妃の四人目のお子様は、“また女児”だったと聞いた気が。これは失敬」


なにか言わねば。否定せねば…。

ムー大陸には他にまだ2ヵ国あるではないか。

バトラズが私を……私を………。


「しっかし、長い間24だったのに。25柱目か。不吉だ」


その男は自分の名前を見て、そっと撫でていた。


「(テスカトリポカ ティベリアの独裁王 -2年 082日か。なるほど)」


(わたくし)はお先に……」


「本来あるべき場所を奪って産まれ落ちた気がしてならない」


そう思わないか?その問いを否定出来なかった。



「だいじょうぶ、、彼が本当に愛しているのは、私の子供だけ、そうでしょう?」


忍んで出るバトラズは見逃してやっていた。

大丈夫、、可愛い子供たちがいるんだもの。少しくらいは多めにみましょう、他の王だって他に、、そうでしょ?


「……マーリン。少し話そう。世継ぎのことだ」


「……」


「他が何か言おうと、娘たちから王を選ぶつもりだ。“君の国は女王制度を取り入れている”から、問題ないだろう」


「私の、、国?」


“アーサー・ペンドラゴン、ムー大陸の皇太子”

この10年以上、あの文字を忘れたことなど一度もない。


「……この、、王都は…?」


「…………」


「いえ、わかりました」


立ち上がり、バトラズが何かを発するよりもはやく部屋を出る。

だいじょうぶ、まだ考えが纏まっていないだけ、そうでしょ?



あの日、あの景色を見るまでは。



「父上、見ていて下さい!」


「見ないうちに随分と成長したな」



バトラズの王家に伝わる王宮剣術。

大太刀の構えはバトラズと重なり、太刀筋はどの王族の子供達ともひけを取らない。


「扱いにくいだろう?」


「少しだけ!」


「すぐ、大きくなる。そうしたらさして気にならん」



その笑顔は、私が子供達に向けてほしかったものだった



「ふふ、私の子にはそんなの、教えもしないというのに……」




――本来あるべき場所を奪って産まれ落ちた



あぁ、そうか。


その場所は本来、、

わたくしの子供の居場所だったのだ。





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