その柱の名は…
━4日後━
「…一体、、一体何を……」
部屋は荒れていた。
何かに当たらなければ、怒りの衝動は消えないのだ。
その後に掃除をする者を思えば情けない気持ちになる。
「あぁ、あんな戯言に……。唆されて……」
違う。違う…。違う……!!
これは私の弱さだ。
まだ誰かのせいにしようというのか!!
「………」
整理しなければと思う。
良いように掌で転がされた事実と向き合わねばと思う。
しかし、まだ見つめたくない自分がいる。
事実を認めたくない自分がいる。
「情けない……」
お母様と外で心配そうに声をかける我が子の声。
「お母様、泣かないで、、私たちがいるよ」
深く暗く淀んだ心にようやく光が届いた。
「お前たちがいれば何もいらなかったというのに……」
間違ったなら、正せば良い。
今からでも。
気が付くのに時間が掛かりすぎた。
「もう私は間違わない、、首を洗って待つが良い」
その名をゆっくりと口にした。
━同時刻、オリンポス壁画━
「テスカトリポカ」
ヘラの視線を感じたのか、にこりと笑い返す褐色の肌をした男。
身の丈190センチ程の細身ではあるが筋骨粒々。ドレッドのような、編み込みのような髪と民族衣装を着た、オリンポスでは浮いた見た目。
「……壁画に何用じゃ。貴様は壁画に用はなかろう」
「壁画を見ると落ち着くのさ。我が国にしばらく貸し出してくれたら、顔を合わせる事もなくなると思うんだが」
「貴様のざれ言は面白くない」
「なんだ、軽い冗談だったが…刺さらなかったか」
指ですっと名前をなぞっていく。
ガブリエル
エリシオンの四大王
テスカトリポカ
ティべリアの独裁王 -18年188日 混沌
ケツァル……
やや薄くなった自身の名前と、マイナス18年という表記をしばし見つめる。そして日付の8が下へとスライドした。
-18年189日。やはり、増えたか。だがこの男の感想はそれだけ。
25番目に追加された「アーサー」の名前が光ったように見える。
アーサー・ペンドラゴン
ムー大陸 “混沌を晴らす王”
未だに背中に刺さるような視線を送るヘラ。
さて、どうする?
少しだけ揺さぶってみようか?
力を使うのは賢い選択ではないが、少しくらいなら良いだろう?
「ところで、ゼウス殿は相変わらずかい?」
わざわざヘラクレスの名前を指差して「増えてなきゃ良いんだけどねぇ」とにこやかに笑いかける。
「貴様には関係ないことじゃ。去れ」
皇后の鉄面皮は一ミリも動かない。
「面白くない女だ。また会おう、愛されない女王陛下殿」
あの女は嫌いだ。混沌の力が上手いこと入って行かない。
マーリンは性質が似ているからか上手く行ったのだ、あの女もと思ったが暖簾に腕押し。面白くないのは興味が失せる。
マーリンに入れた混沌の気配は消えた。もはやこれまで。
「はぁ。また“暇潰し”を探さねばならんな」




