混沌種
エリシオンに召集された、各国最大手ギルドのマスター達。
その顔ぶれは、SSクラス以上の猛者ばかり。
石造りの円卓に魔法灯が淡く揺れ、空気は重く沈んでいた。
報告は淡々と進む。
発生したスタンピードの数。
被害総数。
壊滅した討伐隊。
魔石の異常。
それに対してのギルドの成果。
議論は白熱し始めたが――
その時、扉もなく、音もなく。
一人の守護者が姿を現した。
場が、静まる。
「……その変異種」
低く、しかし不思議と響く声。
「魔界からの干渉。歪みによるアナザーを、混沌へと傾けようとする“意思”を感じる」
“意思”。
その単語に、数名が眉を動かす。
だが、反論は出なかった。
守護者の言葉は、世界の指標だ。
「名称は?」
誰かが問う。
わずかな間。
守護者は、僅かに笑ったように見えた。
「混沌種」
その瞬間、円卓の魔法灯が一瞬だけ、揺らいだ。
決定は早かった。
“混沌種”――
それが、公式名称となった。
「混沌種?」
「はい。どうやらそういう名前がついたみたいで、今魔法通信で速報が」
ギルドへ報告に戻ると、やはり慌ただしくやり取りをしている真っ只中だ。
「今後、混沌種に関する依頼は制限されます」
受付嬢の声は固い。
「Aランク以上二名、四人以上のパーティ。もしくは討伐経験者のみ」
ギルド内がざわめく。
ランク制限の変更は、冒険者の経済に直結する。
たがトゥルムは小さく、それが良いと呟く。
元々、モンスターの群れのボスはC級以上に設定されている。
このモンスターの階級は討伐可能かどうか、冒険者ランクに直結する問題だ。
「今回のワームはかなり混沌化が強かったみたいです。ワームのボスはギリギリC級くらいのハズなので」
「本来なら、B級でも討伐は可能、と踏んだ…」
「はい。でもそれは間違いでした」
混沌化が強かった。その言葉に、胸の奥がざわつく。
あの瞬間。紫黒の脈動が見えた。
斬った感触は、刃で切ったそれではなかった。
何かを“拒絶”したような――
「発生からどれくらいでしたか?」
トゥルムの質問の声がわずかに低くなる。
「一週間です」
一週間。
それだけで、あれほどの歪み。
(放置すれば、どうなる)
嫌な想像が脳裏をよぎる。
「発生と同時に叩かないと…、今回みたいに大災害に発展するって事か…」
「はい。他から受けている報告では、基本的に“物理特化型”か“魔法特化型”か“指揮特化型”の3種類です」
なるほど、と呟くと考え込むトゥルム。
何か引っ掛かったのか、何かに気が付いたのか。
「あ、王都に行かれる予定だったんですよね?」
「ええ」
「実は王から今回の事、直接お礼がしたいと連絡が…」
その言葉に、アーサーは生唾を飲み込む。
ここから近い王都、つまり、バトラズとマーリンが住まう王城だ。
「思ってたより速い再会になりそうですね」
「ああ」




