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~プロローグ~歪な世界





「○○○○、はやくいらっしゃい」



じゃらじゃらと高級な石ころをみにまとい、朝から使用人に2時間もかけ、とにかく幼いながらも全身をフルカスタムした見た目の母親がにこやかに笑いかけてくる。


「父さんと会えるのは3時間だけなんだから、お母さんをガッカリさせないでね?」


父親は“この世界では有名人の一人”だ。

父親には正室と呼ばれる人が1人いて、母親はそうではないその他多数の内の一人。

母親は巷の有名な娼婦で、父親を口説き落として俺が産まれたといつも自慢気に話している。


「おお、○○○○。大きくなったな」


年に3~4回、平均3時間だけの再開。

父親には自分以外の男児が居ない。

養育費は他よりうんと貰っているらしい。

だから、生活に困ったりはしていないし、母親も俺の事を金蔓として愛してくれてはいる。


「そうだ○○○○。誕生日には少しはやいが、プレゼントがある。誕生日くらいは会いたいけどな。なかなか難しくて」


「本当に。唯一の男児なのに可哀想だわ」


トゲトゲしく吐き捨てた母親の言葉に苦笑いを浮かべるしかない父親。

父親の正室とは政略結婚だとかで、そう簡単にはいかないらしい。

このまま18歳を迎えるまでに正室との間に男児が産まれなければ、王国の掟により俺は王太子として認められるそうだ。


「入りなさい」


「やだ、亜人?」


「この子が……亜人?」


狼の顔立ちに真っ白い毛並み。

燃えるような真っ赤な瞳。

まだ子供で小さいが、その姿は神々しい。


「いやだ、亜人な上にアルビノ?」


「私の国ではアルビノは神からの使いと呼ばれていてね。それにアルビノは……」


そんな会話を小耳にしながら、白い狼の亜人へと近付いていく。

ふわふわの尻尾を左右に揺らしながら、小首を傾げる姿が愛らしい。


「名前はなんていうの?」


「?」


名前と聞いてもピンと来ていない白い狼亜人。

困惑したように父親とこっちを目で往復させる。


「それは奴隷亜人だからね。名前なんてないんだよ。あー、確か十七番と呼ばれていたかな」


“それ”という言い方と、“十七番”という無機質に感じる番号と。


「そっか、名前がないんだね」


その時の、“まるで生き物ではない”ように呼んだ父親への不快感、そのときはまだよくわからなかった。


「ならトゥルムにしよう。父上と行った神殿の名だよ」


その名前を聞いた父親が母親との会話を止め、振り返ってこちらを見つめる。


「おいで、今日から君はトゥルムだ」


「とぅ、るむ?」


「そう!そうだよ、来て!屋敷を案内するよ」



歪に回ってる世界で、この瞬間だけは今でも鮮明に覚えている。







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