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凪は玄関で伸びをした。
今日はアラームより少し早く起きられて、余裕を持って支度ができた。
悠真がやってきた。
「よ! 今日は早いな」
大地から力を吸い上げた枝はぐんぐん伸び、水々しい葉をつけている。
真っ青な空、とまではいかなくても、薄青色の空。
そして白い雲。
「⸻綺麗な雲」
「俺には同じにしか見えないな」
「そうね、それでもいいと思う。はい」
凪はメッセージカードの束を渡した。
悠真は頭を何度も下げて感謝する。
「ほんと! 毎年すまん!」
凪は息をはいた。
「確かに言えないものね。プレゼントもらい過ぎて甘い物が苦手になった、って」
悠真は頭をかく。
「おまえなら、分かってくれると思ったんだ」
「分かってる。言わない」
悠真はわずかに視線をそらした。
「もう少ししたら、1年も朝練に参加するらしい。先輩から聞いた」
「悠なら大丈夫でしょ? リトルからやってるんだから、先輩より強いかもよ」
凪はクスクス笑う。
悠真は眉を寄せた。
「私ね、カルタ大会で星野さんに、凪ちゃん、って呼んでもらえたの! 私も咲良ちゃん、って呼んでいいかな?」
悠真は立ち止まった。
「悠?」
「お前、馬鹿だよ」
「え?」
悠真は凪を置いて足早に行ってしまった。
凪はしょんぼりと席についた。
優奈が心配げに声をかけてくれた。
「どうしたの? 悠真君と喧嘩したの?」
「私、なんか言っちゃったみたい」
優奈はかがんで、凪に視線を合わせた。
「何の話をしてたの?」
凪は朝、悠真と話したことを優奈に言った。
優奈は沈むような面持ちだった。
「…ごめんなさい。私の口からは言えない」
優奈は凪の手を握った。
温かい。
凪も優奈の手を握る。
「ありがとう優奈。自分でもう少し考えてみる。だって私は、悠の幼なじみ、なんだから」
教室の雰囲気が落ち着いた頃、悠真が教壇に立った。
紙を整えている。
優奈が微笑んだ。
「体育祭委員からのお知らせ、ね」
悠真は紙を配り始めた。
「みんな! 体育祭のスケジュール表と、出場種目の希望表ができたから、できたら今日明日中に、出たいやつに丸つけて出してくれ!」
男子たちから「え〜!」と声があがる。
「種目が被ったら、振り分けるのが大変なんだよ」
女子たちが立ち上がった。
「悠真君は、部活もやってるんだから協力しないと」
「俺たちだって、やってるつーの!」
「悠真君ー! 私紙配るの手伝う」
女子たちがいつも通り、悠真に集まる。
悠真はいつものキメ顔をした。




