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1年生上毛かるた大会当日。
5限に生徒たちは集められた。
組み合わせ表の周囲が騒がしい。
凪は優奈に聞いた。
「星野さんが出るんだって。私も見てきたけど、凪と当たるとしたら決勝戦みたい」
「ふーん」
悠真は呆れた。
「お前な、ふーん、はないだろう。いいか。手加減をしろ」
凪はニヤッとした。
「そうね。地区の子ども会で、何度もあなたに敗北を味合わせてきたものね」
放送部のアナウンスが入った。
「それでは選手の方は、中央に来てください」
クラスの代表が集まる。
星野咲良がいた。
⸻星野さん。今日も綺麗だなあ⸻
咲良がクスクス笑っている。
「よろしくね、月城さん」
凪は頬を赤らめた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
凪は一枚の札も落とすこともなく、勝ち進んだ。
会場は凪のあまりの強さにどよめく。
優奈はクスクス笑っていた。
「凪ったら、相変わらずね」
悠真も苦笑いをしている。
「上毛かるたの公式全国大会があればな」
「あっ! 星野さんが勝ったみたい」
会場全体から拍手が起こる。
互いに礼をして、一休みをした。
放送部のアナウンスにも熱が入る。
「さあ、いよいよ決勝戦です! 今まで一枚も札を落としていない月城凪さん! そして相手は星野咲良さん。どのような戦略で戦うか注目です!」
凪と咲良は互いに礼をした。
咲良は観客席を見た。
そこには悠真と優奈がいた。
凪が言った。
「手加減しなくていいですか?」
咲良は視線を落とし、キリッと凪を見る。
「もちろん! 全力で戦いましょう!」
札読み係が声をかけた。
「じゃあ、二人ともいいですか? じゃあ始めましょう」
札読み係が息を吸う。
「あ」
凪は札を叩いた。
会場から音が消えた。
優奈が「はは…」と笑った。
悠真はがっくりと項垂れる。
「最初の文字だけで札を叩く。相手は札を探す余地なんてないんだ…。俺はあれに何度心折られたことか…」
結果。
凪に全ての札が渡った。
咲良は両手をつけて項垂れている。
悠真と優奈が観客席から寄って来た。
悠真はため息をつく。
「凪、もう少し手加減をだな」
「いいの、悠真! 私が真剣勝負をお願いしたの」
咲良が顔を上げた。
そして爽やかに微笑む。
「完敗! でもいい勝負だった。ありがとう。⸻凪ちゃん」
凪の顔も明るくなる。
「優奈! 星野さんに、凪ちゃん、って呼ばれちゃった!」
優奈は少し困った顔で「はは…」と笑った。
放送部のアナウンスが入る。
「優勝者は、月城凪さん! おめでとうございます!」
会場から拍手が起こる。
凪は立ち姿の写真を一枚撮られた。
新聞部の先輩が駆け寄って、マイクを向ける。
「今のお気持ちは?」
「え? 別に普通です」
「じゃあ、佐藤悠真君との関係は?」
「は? それカルタと関係ないんじゃ…」
先輩はわざとらしく、困ったように頭を回す。
「ごめんなさい月城さん。新聞部には、これに関して、たくさんの要望がきていて、無視できないのよ〜。で、どんな関係なの?」
「ただの幼なじみです」
「いつから?」
「家が近いの?」
「中学も一緒に登下校してたの?」
先輩の追求は止まらない。
悠真は腹を抱えて笑いを堪えていた。
「も〜、勘弁して〜!」
会場は笑いに包まれた。




