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教室の席に着くなり、クラス委員長となった優奈が紙を一枚持って入ってきた。
「みんなごめん! ちょっと聞いてもらえる?」
皆、優奈に注目した。
「新人歓迎会の一環で、1年生上毛かるた大会があるんだって」
クラスがざわざわする。
優奈は続けた。
「問題はここから。先生がこの紙を渡し忘れたのに、今日気付いたって、朝イチで言われたの」
クラスが静まりかえる。
「代表者選出の締切日、今日なんだって!」
「えー!」と皆が声をそろえた。
クラスの男子、坂口がつまらなそうに言った。
「たかが上毛かるただろう。めんどくせー」
凪が、不敵に笑った。
「たかが、ですって」
優奈はクスクス笑い、悠真は額に手を当ててため息をついた。
坂口が鼻で笑った。
「ただのご当地カルタに、何ムキになってるんだよ」
「じゃあ、私と勝負してよ」
坂口が袖をまくった。
「よーし! いいぞ! ただし条件付きだ」
凪が首を傾げる。
「条件?」
「俺が勝ったら、この場で悠真に、告白しろ!」
男子たちが指笛を吹く。
いつも大人しい桑原陽菜が引いた。
「つ、月城さん」
優奈が微笑む。
「大丈夫。見ていれば分かるから」
皆で机をどかしてスペースを作る。
優奈が持ってきたカルタを並べてた。
「じゃあ、私が読むからね。いくよ!」
言葉を発する者はいなかった。
札は全て凪の手元だ。
クラスの男子、羽鳥が唾をのんだ。
「なんだ、今の…」
悠真が再びため息をつく。
「凪はな、上毛かるたじゃ敵なしなんだ」
別の男子が言った。
「俺、地区大会に出たことあるけど、月城なんて名前、聞いたことないぞ」
「ああ、それはな。勝つことが分かっている試合に出ても面白くないから。なんだと」
優奈はがっくりと項垂れる坂口の肩を、ぽんぽん優しく叩く。
「凪、もう少し手加減してあげなよ」
凪はニコッと笑った。
「じゅーぶん、手加減しましたよ」
坂口は土下座した。
「月城、俺が悪かった! さっきの発言は取り消す!」
凪は鼻を鳴らした。
「分かればよろしい」
羽鳥が驚き混じりに悠真に聞いた。
「上毛かるたでこれだけ強いなら、百人一首だって」
悠真が吹き出す。
「それはな、百人一首が覚えられないから、なんだってさ」
クラス中が笑った。
凪は顔を真っ赤にする。
「もー! 鈍感! サイテー男!」
優奈が手を叩いた。
「じゃあ、代表は凪で決まりね。机を戻しましょう」
クラスはいつもの落ち着きに戻った。
優奈が凪に耳打ちする。
「そのヘアアクセサリー。確か悠真君が誕生日プレゼントでくれたやつでしょ?」
凪は顔を明るくしたが、すぐそっぽを向く。
「悠真は、なんだよ、ってニヤニヤしてさ。ほんと感じ悪い。似合ってる、の一言も言えないの」
「ただ照れてるだけよ」
優奈は少し手を振って、自分の席に戻る。
チャイムが鳴った。
担任の先生が申し訳なさそうに入ってきた。




