表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

4

挿絵(By みてみん)


終礼が終わった。

皆、荷物をまとめて教室を出る。


桜はすべて散ってしまった。


色褪せた花弁は、

だれの目を引くこともなく、山になって、

土に帰るのを、ただ待つ。


雲は夕日の輝かしい光をまとっている。


凪はカバンのボタンを止めた。

「優奈。ちょっと野球部の練習見に行ってもいい?」


凪と優奈は野球部のグラウンドに来た。

カーンと、バットでボールを打つ音が響く。

「悠真く〜ん!」

女の子たちの黄色い声で賑わっていた。

凪はネットをにぎった。

悠真がベンチに戻って来た。

咲良とハイタッチし、飲み物を受け取った。

ボードを見ながら話をしている。

優奈が言った。

「リトル経験があるから、星野さんに決まったらしいよ」

「そうだってね。悠が言ってた」

優奈が驚いて振り向いた。

「自分から聞いたの!?」

凪は首を横に振った。

「登校時に、悠から言ったの」

「そう」

悠真はベンチを離れた。

優奈が息を大きく吸い込んだ。

「悠真君ー! 頑張ってね!」

凪がギョッと優奈を見る。

「ちょっと! 優奈」

悠真がこちらに気がついた。

手を振っている。

「ああ! ありがとう! なぎ! 俺がいなくても真っ直ぐ帰れよ!」

グラウンドはドッと湧く。

「ああ、あの子が凪ちゃんか」

「凪ちゃーん! 気をつけて帰れよ!」

凪は顔を真っ赤にした。

視線を感じる。

咲良だった。

真っ直ぐ、凪を見ている。

「もー! 悠のバガ!」

凪は優奈の手を引っ張って、校門に向かう。


バス停へ向かうなか、凪はくるっと振り向いた。

「優奈。何もあんな大勢の前で言わなくてもいいじゃない」

凪か頬を膨らますのを、優奈はクスクス笑った。

「私は悠真君の応援をしただけです」

「優奈のいじわる」

バスが到着し、乗り込む。

序列が決まっていて、一般の人優先。次に三年生、二年生。一年生はまず席には座れない。

吊り革に捕まる。

バス停は動き出した。

凪がぼそっと言った。

「あのね、優奈」

「なに?」

凪は口にしかけた言葉を飲み込んだ。

「ゆ、優奈も部活やらないって決めたんだな、って」

優奈は優しく微笑んだ。

「私は、やっぱり国立を目指すって決めた。もちろん、高校生活もバッチリ楽しんでね。⸻ああー、彼氏欲しいなぁ」

凪は驚いた。

「優奈もそう思うの?」

「当たり前でしょ」

凪は肘で小突いた。

「もしかして、もう好きな人、いるの?」

優奈はわざとらしげに、人差し指を唇に当てている。

「頭が良くて、スポーツ万能。自信過剰なところもあるけど、優しいところもある人、かな?」

凪の頭にぼんやりと、あの幼なじみが浮かんだ。

苦い顔で言う。

「優奈、あんなデリカシーない男がいいの?」

「じゃあ凪はどんな人がいいの?」

「⸻思いの通じ合う人、かな」

「へぇー。具体的にはどういう感じ?」

「分からない気持ちも分かってくれる人、かな?」

「それじゃあ、分からないよ」

優奈は一瞬車窓を見て、すぐカバンに視線を落とした。

車内の人の会話が聞こえる。

優奈は顔を上げて、軽く微笑む。

「…そっか。そうだよね」



電車に乗り換え、改札で別れた。

家に着いて、いつも通り就寝する。


⸻思いの通じ合う人。なんでそんなこと言っちゃったんだろう⸻


まぶたを閉じた。


ざわついていた気持ちが落ち着く。

頭が冷え、

体の熱が引いていく。


音が徐々に、消えてゆく。


葉の擦れ合う音も、

生き物の声もしない。


⸻なぎ。


静謐な声。


響いた波紋が鎮まった。


凪は静かに寝息をたてた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ