36
窓際のいつもの席。
優奈はいつものアールグレイ。
凪はいつものレモンティー。
優奈は一口飲んで外を見た。
「私たち、変わっちゃったね。中学の頃はさ、可愛い制服着て、華の高校生活を満喫しよう、って話してたのに。里奈と美咲は部活。私は結局勉強をとった」
優奈は天を仰ぐ。
「こんなはずじゃなかったのにな、って。ふとね、寂しくなっちゃう」
「私は、変わってないと思うよ」
凪の胸には、あのネックレスがあった。
優奈はニヤリとした。
「悠真君の誕生日プレゼントでしよ。ずいぶん気に入ってるみたいね、学校にネックレス持って来るなんて」
凪はネックレスに手を当てる。
温まっていた。
優奈はまた一口飲んだ。
「正直、あなたと悠真君が羨ましい。離れていても、環境が変わっても、関係は変わらない」
「塾にいい人いないの?」
「勉強でそれどころじゃない。それに」
優奈はカップを置いた。
凪に悲しみ混じりの微笑みを向けた。
「ねえ、凪。小学校の頃、私が悠真君好きだったこと、知ってるよね」
凪は静かにうなずく。
「嫌じゃなかったの? 大切な幼なじみの周りをウロウロしてて、あなたから悠真君を遠ざけようとした私が」
凪の笑みは静かだった。
「悠がカッコいいのは、私だって分かってる。勉強は国立難関大学レベル、野球は強豪校レベル。ルックスは、優奈に話したっけ?」
優奈は小首をかしげる。
「悠の両親と東京に遊びに行った時、悠、スカウトされたの」
優奈は驚き、カシャンとソーサーを置いた。
「で、どうしたの?」
「自分で断ってたよ。俺、げいのーじん、興味ないから、って」
凪はレモンティーを飲んだ。
「ヒエラルキーのトップってやつだよね、悠は。だからみんなが悠を好きになるのは、自然現象だと思ってる」
優奈は吹き出しそうになるのを堪えた。
「もう、凪ったら。悠真君が聞いたら怒るわよ。…だから、あなたは私を嫌いにならなかったのね」
「うん、嫌いになる理由は、私にはないからね」
「そんな凪だから、いつの日か。友達になれたんだね。それに」
「それに?」
「なんでもない」
優奈はアールグレイを飲み干した。
「そろそろ行こう。今日は付き合ってくれてありがとう」
「気になるな…」
凪たちはお会計を済ませて店外へ出た。




