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「それは…。やはり俺が言っていいことではないんだ」
「どうして?」
青年はぱっと凪を見るも、うつむいてしまった。
「あなたと悠は、顔と声は同じなのに、性格は全然違うのね」
青年は笑った。
「彼みたいに自然体でいられる人間になりたいよ」
「自然体と自分勝手って違うのよ」
凪はネックレスを満月に当てた。
暗黒の空を突き刺すようなきらめきを放つ。
「やっぱりここが一番きれいに輝く。…なんでだろう。私、この光、すごく好きなの」
青年が手を出した。
凪が触れようとしたら、慌てて引っ込めた。
「分かってる。ネックレスの方でしょ?」
青年も同じく照らしてみる。
「そうだね。俺もそう思う。君に相応しい輝き。いや、君そのものだ」
凪は頬を赤らめる。
「あなた、よくそんなこと言えるわね」
「本当のことだからね」
青年は照れることなく笑む。
「死の世界すらも照らす、純白の乙女の光」
「そのネックレスが?」
青年はウインクした。
凪は顔をそらした。
青年は凪にネックレスを返した。
凪はネックレスを頬に当てる。
「冷たい…」
「…それを偽ってはいけない」
「誰が決めたことなの?」
「俺自身」
水面の満月は波紋すら立たない。
「あなたはこの空間に一人で寂しくないの? 兄さんのところに行きたくないの?」
青年も泉に視線を落とす。
「寂しいと思ったことはない。君がいつもいてくれるのだから」
青年は凪の瞳をとらえる。
凪は耐えられなくてそらしてしまった。
「…兄さんには?」
青年は口を開けるも、つぐんだ。
「それもまだ言えない。ごめん、凪」
「私こそ、ごめんなさい。聞いちゃいけないこと、よね」
水面が揺れた。
「時間がきたよ、凪」
世界が白い光に包まれる。
「私、また来るから!」
青年はまた困った笑を浮かべた。




