28
飛来音と、爆弾の地響き。
人々の悲鳴と、断末魔。
⸻またあの夢。どうしていつもここから始まるのだろう⸻
言い争う兄たちを、腰を抜かしてただ見ている。
⸻兄さん! 逃げて⸻
体が動かない。
視線も動かせない。
熱風と煤塵を吸い込み、胸が痛いくらい咳き込む。
⸻これがもし、彼の記憶なのだとしたら⸻
お願い。
私は、あなたに会いたい。
白い光に目がくらんだが、すぐに暗闇になった。
凪はゆっくり目を開ける。
白銀の満月と、水面に満月を映す泉。
「凪」悠真と同じ、でも柔らかく優しい声。
凪は駆け寄った。しかし青年の直前で止まる。
「彼の決断って、悠のことでしょ? どうして悠の決断を待っているの?」
青年はいつもの困った笑みを浮かべた。
「君のためなんだ」
「わたしの?」
青年は静かにうなずく。
「もし、悠が決断をしなかったら、どうなるの?」
「俺は、そうならないことを願っている。心から」
凪はそっぽを向く。
「あなたの話はいつもよく分からない」
「⸻さすがだよ」
「え?」
「よくあの記憶の世界から、ここに来ることができたね」
「それは⸻」
⸻あなたに会いたいと、思ったから⸻
青年はなぜか照れて、うつむいた。
「やっぱり、あれはあなたの記憶なのね。でもどうして、いつもあの場面なの?」
青年は真っ直ぐ凪を見つめた。
「それは、俺の口からは言えない。今は」
凪は半歩前に出た。
「じゃあ、いつか話してくれるの? あなたのことも、私とのことも、兄さんのことも」
青年はゆっくり腰を下ろした。
「俺は迷っている」
「なぜ? どうして教えてくれないの?」
⸻私は、あなたのことが知りたいのに⸻
「悠の決断と関係があるのね」
青年はうなずいた。
「もう、時間がない」
凪も腰を下ろす。
「また、ここに来てもいい?」
「もちろん。君を待っているよ」
夜の世界と青年が白く霞んでいく。




