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白くきらめく満月。
音のない深淵。
「ありがとう」
真っ直ぐ悠真を見た。
悠真は珍しく頬を染める。
「まあ喜んでくれてよかったよ」
「ほんとうに、嬉しい。ありがとう」
悠真は黙って、黙々と寿司を食べる。
⸻悠はあの人じゃない。それでも⸻
凪はネックレスを今もらった物に変えた。
⸻俺は時を待っているんだ。彼の決断を⸻
もしかして彼って、悠のこと?
でも、悠真の決断って何?
それが私と何か関係があるの?
悠真は伝票を持って立ち上がった。
「そろそろ行こうぜ」
外はまだ明るい。
悠真は振り返った。
「どこに行きたい?」
「あの公園がいい」
「そうだな、あそこが落ち着くな」
来た道を戻る。
高崎駅から電車に乗って、最寄りのバス停で降りた。
こじんまりした敷地に、ブランコとベンチがあるだけの公園。
2人はベンチに腰掛けた。
凪は顔にかかった髪を耳にかけた。
「昔、ここでよく遊んだね」
「どっちがブランコを高くまでこげるか、な」
「鬼ごっこもした」
「まあ、俺の圧勝だったな」
「悠のうちでゲームもしたね」
「これも俺の圧勝だった。お前、嫌じゃなかったのか?」
「なんで?」
「なんで、って、勝てない勝負なんてつまらないだろう?」
凪は見上げた。日が少し傾いていた気がする。
「⸻勝ち負けじゃないの。私たち、高校生になっちゃったね。こうして会うのも久しぶりな気がする」
「寂しいのか?」
悠真はニヤリと笑った。
凪はネックレスに視線を落とす。
日の光できらめいた。
しかし太陽ではまぶしすぎる。
「そうなのかもしれない」
悠真の顔が赤くなる。
「悠? どうしたの?」
凪は目をつぶった。
風の音。
葉がサラサラと触れ合う音。
遠くから人の声がする。
「また、会いたいな」
「会おうと思えば、いつでも会える」
「そうなのかな…」
「そうさ」
凪は腰を上げた。
「そろそろ帰ろう」
玄関を開けた。
「今日はありがとう。とても楽しかった」
悠真はそっぽを向き、頬をかく。
「じゃあ、また学校でな」
凪は手を振って、扉を閉める。




