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梅雨の晴れ間。
折りたたみ傘を一応カバンに入れてきたが、必要なかったかもしれない。
「おーい!」遠くから悠真の声が聞こえた。
「こっち!」
悠真は時計を見た。
「よし、行こうぜ!」
今日来たのは高崎駅にある駅ナカだ。
凪は化粧品売り場を素通りした。
後ろで悠真が笑っていた。
「お前さ、高校生になってもかわらないな」
「何がいいたいの?」
凪は眉を上げた。
「いいや、別に」
「あなただって、デニムパンツにTシャツじゃない」
「お前だって、いつもの白いワンピースだろう」
凪はプイと向いてツカツカ歩き出した。
悠真はさらっと追いついて、凪の顔を見る。
「ばーか、違うことくらい分かってるつーの。袖や丈の長さもだが、生地や柄も違う」
「…悠は、服屋とかつまらなくないの?」
悠真は顎に手を当てて、眉を寄せた。
「男のおしゃれは難しいんだ。まず、小洒落た服屋に入るのも、難しいもんなんだぞ」
「服を買う服、ってやつね。女子も同じ」
凪はパッと目を見開いて、悠真を手招きした。
「ねえ、これ着てみて」
凪は服を渡した。
悠真は首を傾げながらも、試着室に入る。
茶色のジャケットに、黒のパンツ。おしゃれなネックレスを付けてみた。
凪がひょっこりのぞく。
「あの普段着よりマシでしょ?」
「まあ、そうだな」
「…あのう」
女性の店員さんだった。
「すごくお似合いですよ。モデルさんか何かされているんですか。」
悠真は得意のキメ顔で言った。
「ええ。実は⸻」
凪は悠真を試着室にぶち込んだ。
「ごめんなさい。ただの高校生なんです。おしゃれな服だから、つい着てみたくなっちゃって」
店員さんも何やら気まずげだ。
「ああ、そうだったんですか。さっきの服は入荷したばかりで、とても人気なんですよ」
悠真が試着室から出てきた。
丁寧にたたまれた服を、そっと定員さんに渡す。
腕が触れ合った。
「すみません。俺なんかには、似合わなかった見たいで」
店員さんは顔が真っ赤だ。
「ま、またのご来店をお待ちしております」
凪は息をはいた。
「洋服を試しただけなのに、いったい何をしているの」
「今日は服じゃないからな。エレベーター行くぞ」
凪と悠真はガラス張りのエレベーターに乗って、上の階へ向かう。
凪はすーっと上がっていく景色を眺めた。
「これがさ、ヒューって落ちたら怖くない?」
「怖いのはお前だろう?」
悠真は顔を近づける。
「いいんだぞ、俺は。今度そういうアトラクションに乗っても」
凪は言い返せず苦い顔をした。
チン。
エレベーターが到着した。
悠真の後をついて行く。
「ここだ。ここの寿司が美味いって聞いたんだ」
凪は飛び上がりそうになった。
「ここ、回らないお寿司屋さん…。ちょっと大丈夫なの?」
「大丈夫だって。ほら、行くぞ」
凪は手に冷や汗を握って、店内に入った。




