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凪はリビングのソファーで、テレビを見ていた父の横に座った。
「お父さん、あのね」
「ん?」と父はテレビを見ながら言った。
「今日、悠が歴史の授業で難関国立大学の問題を、一発で解いちゃったの。野球だって、強豪校に行けたのに」
凪は拳を握った。
「悠にとって学校はどこでもよかった。たくさん選択肢があるから」
父はゆっくり微笑んだ。
「凪にだってたくさんあるんだよ」
「でも悠ほどじゃない」
「優奈だって、国立大学目指して塾に通っている。それに⸻」
凪は言葉をのみ込んだ。
⸻咲良ちゃんは、悠と結婚したいと思っている⸻
「私は、どうしたいんだろう」
凪の脳裏に浮かんだのは、悠真とそっくりのあの青年だった。
「ねえ、もしお父さんは気になる人がいたらどうする。しかもなかなか会えない人」
父は笑っていた。
「どうしたんだ、突然。そうだなあ。その人がよく行く喫茶店なんかがあったら、そのコーヒーを飲みに行くとか、会話のきっかけになる話題を作りにいくかなぁ」
父は凪の頭をポンポン叩いた。
「どうしたいか分からないのは、大人だって同じなんだよ」
「お父さんもそうなの?」
「仕事のこと、日本のことや世界情勢、年をとった時のこと。たくさんあるんだ、だから⸻」
父は湯呑みを持って立ち上がった。
「分からない自分を責め過ぎてもいけない。お父さんにとっては、凪やお母さんがいるここが、帰るべき場所だと思っているよ」
にっこり笑みを浮かべて、お茶を汲みにいった。
凪は自室に戻る。
⸻あの人のこと、もっと知りたい⸻
ピコーン。
悠真からのメッセージだった。
「今度の休み、遊びに行こう」
「そういえば、イオン行ったきり、全然行ってなかったなあ。私は勉強見てもらいたかったけど、悠にとってみれば、たまの休みだもんね」
凪はスマホをベッドに放った。
⸻夢で見た景色とかをネットで調べれば、何か分かるかも知れない⸻
悠真と青年。
「全く同じ顔と声。でも違う」
クッションに顔を埋めて、足をバタバタさせる。
そして仰向けになり、カレンダーを見る
凪はベッドのスマホを取った。




