21
凪は頬杖をついてぼーっと窓の外を見た。
雨は朝から降り続いている。
野球部の朝練は雨の日でも、ボールやバット、用具の手入れや掃除、その後は筋トレと時間ギリギリまであるらしい。
チョークの音が響く。
黒板に問題が書かれていた。
次の式で表される関数について考えよ。
y = (x - 1)(x - 3)。グラフの軸を求めよ。最小値を求めよ。
先生は手についたチョークの粉を落とした。
「じゃあこの問題を」
先生は悠真を見た。
「ふう」
「月城さんに」
⸻先生、絶対悠を見てたじゃん!⸻
数人の微かな笑い声がする。
凪は式と答えを書いた。
「軸x = 2。最小値=-1。です」
「はい、正解」
凪は悠真をチラリと見る。
中学の時と同様、真剣に授業を受けていた。
⸻ほーんと外ズラいいんだから。余裕なくせに。でも、運動部の人は授業中寝ちゃう人もいるから、やっぱ悠はすごいのかな?⸻
チャイムが鳴った。
「はい、今日はここまで」
先生は出て行き、みんな昼食を持ってどこかに行く。
優奈が椅子を持って来た。
ニッコリ微笑む。
「お昼にしましょう」
凪は不満げだった。
「さっき先生絶対、悠みてから私に変えた!」
「だって、悠真君じゃどんな問題も解いちゃうから」
「それ、どういう意味?」
凪はわざと頬を膨らます。
悠真の席を見た。
「悠、最近野球部の人とお昼食べてるみたいだね」
優奈は少し悲しげにうなずいた。
「少し縁遠くなっちゃったな、悠真君」
「どうして?」
「だって、小学校や中学の時は、ずっと同じ顔ぶれだし、それに」
「それに?」
優奈は困り笑をしている。
「もー、凪ったら。やっぱり高校まで来ると、みんな将来のことを考えてる」
⸻あなたは嫉妬しないの? あなたは悠真が好きなんじゃないの?⸻
咲良の言葉がよみがえる。
優奈が箸を置いた。
「ごめんなさい。私そんなつもりじゃ」
凪は手を振った。
「分かってるよ、大丈夫。⸻ねえ、優奈」
「なに?」
「私たちって友達だよね。里奈も美咲も」
優奈ニッコリ笑む。
「ええ、もちろん」
「悠だって、私の幼なじみ」
「ええ」
優奈は変わらず微笑んでいた。
凪は視線を落とす。
「将来か…」
「ねえ、凪」
優奈の視線が珍しく泳いでいる。
「私たち小学校からずっと一緒だった。だから言わせて、友達だから。本当に、夢が何もないの?」
凪は外を見た。
雨足は変わっていない。
窓ガラスに蛍光灯の光が反射している。
ふと、浮かんだ。
白銀の満月と清らかな泉。
ボロボロの服をまとった青年。
⸻なぎ。
静謐な声。
「あるんだと思う。でもまだ、答えが出せないの」
「なぎ…」
「ごめん、優奈」
⸻私は、彼が誰なのか知りたい。悠と同じ顔と声の、あの人を⸻




