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挿絵(By みてみん)


凪はスタートラインに立った。体育祭委員からカードを受け取る。

「カードはまだ裏返しにしてください。合図が鳴ったらカードをかえして、書かれている物や人をゴールまで持って来てください」

咲良が隣に並んだ。

「またカード勝負ね、凪ちゃん」

凪は顔を赤らめる。

「そ、そうだね。咲良ちゃん」

咲良は豊かなまつ毛をぱちぱちさせて、嬉しそうに笑む。

「お互い、真剣勝負! ね」

凪は頬を掻く。

「今回のカード勝負は私負けちゃうと思う」

「もー。やる前から諦めちゃだめ」


「はい。位置について、よーい」


パーン!


凪はカードをかえした。


野球部の人。


「やったー! ラッキー!」

凪は鋭い目付きで、悠真をにらんで手招きする。

悠真は、俺? と自分を指差して立ち上がった。

凪はダッシュでクラスの陣地に行く。


牧たち女子が察して、悠真を前方に出した。


凪は悠真に手を伸ばした。

「はあ、これなら。⸻え?」


咲良がいた。


凪は悠真の服を掴んで引っ張った。

「おいおい、やめろって!」

「野球部の人! しっかり走って、はあ、はあ」

「まったく」

悠真は凪の腰に手をまわした。

「しっかり走れよ!」

ぐいっと押されて、凪は前に倒れそうになる。

「ちょっと! 転んじゃう!」

「転ばないように足を出せ!」


テープが見えて来た。


悠真は自分の前に、凪を走らせてテープを切らせた。


「ゴール! 1位は月城凪さん。続けて2位もゴール!」


凪は振り返った。


咲良だった。

別のクラスの女の子を連れていた

咲良も息を切らせて膝に手を置く。

呼吸を整えて、ニッコリ笑った。

「今回は惜しかったな。ねえ凪ちゃん。何のカードか見せて」

凪は咲良にカードを渡した。

表情が一瞬曇った。

「咲良ちゃんは、何のカードだったの?」

咲良は微笑んでカードを見せた。

悠真も覗き込む。


幼なじみの人。


咲良は踵を返す。

「また機会があったら勝負しましょう」

凪はカードを係に渡した。

「咲良ちゃんて、真面目な人だね」

悠真は「ん」と気のない返事をした。

「だって、誰でもいいじゃん。係の人はその人との関係性まで、つっこんで聞かないのに、悠のところに来るんだもん」

「だから言っただろう。あいつは、負けず嫌いなんだよ」

「ねえ、悠。また機会があったらって…」

「お前は、勝負ごとに向かない。あいつの真剣勝負に付き合ってやる必要はない」

「…うん」


クラスの陣地に戻ってきた凪は、大歓迎をされた。

牧がスッと前に出る。

「月城さん。いい走りだった」

「そんな。借り物が楽だったから」

男子たちは大笑いしている。

悠真は息をはいた。

「お前な、人を物呼ばわりして」

「でもクラスに貢献できた」

凪は得点盤を指す。

ペラペラ紙がめくられ、凪のクラスは二位とさらに点数を広げた。

「ありがとう。か、り、も、の」

凪はツンツンと席に戻った。


アナウンスが入った。


「さあ、いよいよ最後の種目! クラス対抗男女混合リレーです!」

「よし!」

悠真が立ち上がると、キラキラモールが付いた団扇を持った女子たちが集まってきた。

「頑張ってね! 悠真くーん!」

得意のスマイルをし、女子を沸かせて、テントに行った。


「一位はほぼ確定ね」

優奈が凪の隣に座った。

「そうみたい。ほーんと、借り物競走で恥かかずに済んでよかった。…ねえ、優奈」

「ん?」

「咲良ちゃんのカード、幼なじみの人、だったんだって。それでウチの陣地に…」

凪はうつむいた。

「また機会があれば勝負しましょうって…」

「なーぎ。星野さんは、誰かをいじめるような人じゃない。それはみんな言ってる。明るくて、みんなに優しい子だって」

「うん」

「大丈夫。ほら、始まるよ!」


パーン!


合図と共に走り出した。

牧は得意そうに鼻を鳴らした。

「優勝は決まっている。後は」

牧は凪と優奈にキラキラ団扇を渡した。

女子たちも忙しそうに、男子たちをどかしている。

「いい? アンカーの悠真君にバトンが渡ったら、これを掲げて」

「さあ、そろそろ来る!」


実況にも熱が入る。

「おっ! 今、佐藤悠真選手にバトンが渡りました。1位とは距離があいています!」


「ゆうまくーん! 負けないで!」

バッと横断幕が立てられた。


「ぐんぐん距離が縮み、今! 佐藤選手が一位になりました!」

凪はペラペラと団扇を振る。

優奈が凪の肩を叩いた。

「待って、あの二位の人。悠真君に負けた陸上部の人。距離が詰められてる」

女子の悲鳴が響く。


悠真がチラリと振り向いたその瞬間に、二位と並んだ。ゴールにビデオカメラが設置される。


実況もさらに熱がこもった。

「さあ、体育祭最後の種目! 勝利はどっちの手に」


ゴールテープが切られるも、ビデオ判定となった。


「一位は…。佐藤選手です! おめでとうございます!」

悠真はクラスの陣地に拳を上げた。

女の子たちは感激の涙を流している。


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