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「よーい」
パーン!
「さあ、一斉に走り出しました! と、佐藤悠真選手が引き離していきます!」
「ゆ〜まくーん!!」
他のクラスからも名前こそ書かれていないが、キラキラ団扇が掲げられている。
優奈は笑った。
「いったい誰の応援しているのやら」
凪は苦笑いをした。
勢いのある音楽が校庭に響いている。
口笛が聞こえて、凪は振り向いた。
「美咲、里奈!」
美咲は腰と顎に手を当てて、観察している。
「2位の人、確か陸上部だよ?」
「さすが悠真君ね」と里奈。
「ゴール! 1位は佐藤悠真選手でした」
2位の人はガックリとうなだれて、クラスの陣地に戻って行った。
悠真は颯爽と戻ってきて、みんなのハイタッチを受ける。
「イェーイ!」
美咲もタッチした。
悠真は吹き出す。
「お前たち、何にでるの?」
「私たちはリレー」
「そういえば、凪は何に出るの?」里奈が言った。
優奈が気まずそうに顔をそらす。
凪は小首を傾げた。
「え? 借り物競争」
美咲と里奈は「えー!」と声を揃えた。
「星野さんと同じだよ! ってか、優奈! あんた凪に伝えてなかったのね」
「私だって知ったのは、凪が借り物競争に出るって聞いた後だったんだもん」
凪はさらに首を傾げた。
「うーん。私、運動苦手だから負けちゃうかもだけど、どうしたの?」
「もー! 凪ったら」
美咲はプンプン凪の肩を叩く。
「はいはい、それくらいにして、私たちも戻ろう」
里奈は美咲の手を引いて行ってしまった。
「安心して、月城さん」
立っていたのは、クラスの体育祭委員、牧さんだった。
「借り物競争に必要なのは、その物をいかに早く見つけるか。既に調査済み」
ダンボールに入った物を凪に見せる。
「すごい…」
牧はうなずく。
「だから真っ直ぐクラスの陣地に来て」
「は、はい」
優奈が立ち上がった。
「じゃあ私、そろそろ応援合戦の準備があるから行くね」
「うん。頑張ってね! ところで何を歌うの?」
優奈は指を振った。
「それは、ひ、み、つ」
凪はぼーっとクラスの点数盤を見た。
数字がペラペラめくられていく。
凪のクラスは一年生で一位だった。
「想定内ね」牧だった。
「でもやっぱり圧勝は難しいか…」そう呟きながら去っていく。
⸻私は、貢献できそうにないな⸻
「よ!」
悠真だった。
凪の隣に座る。
「ちょっとあんた」
凪はキョロキョロと見渡す。
「なーにしてんだよ」
「だって、あんたのファンがいたら」
「いたらなんなんだよ? 俺が俺のやりたいようにやって、何が悪いんだ?」
「私が迷惑するの」
凪はそっぽ向く。
「俺はお前と応援合戦が見たい」
凪はゆっくり振り向く。
悠真はニカっと笑った。
「悠…」
凪は静かに頷いた。




