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凪は軽く階段を下りて玄関を開けた。
「おまたせー」
悠真は不機嫌そうに待っていた。
「おまえ、わざとだろう。早く学校行きたかったのによ」
「なんのこと?」
凪は悠真より後ろを歩く。
悠真も凪にペースを合わせる。
後ろから女の子が走って来て、凪はぴょんと跳ねるように下がった。
悠真は苦々しく凪を一瞬見るも、いつものモードに切り替えた。
「悠真君、今日誕生日よね! これ!」
手紙やらお菓子やら、悠真に続々と渡して去っていく。
下駄箱、ロッカー、机。プレゼントはいたるところに置かれていた。
クラスの男子は不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「モテる男は辛いなあ〜」
悠真は静かに肩を落とした。
プレゼントを袋に入れてロッカーにしまう。
男子から冷たくされている悠真を見て、優奈が凪に耳打ちした。
「なんだかかわいそうになっちゃう」
「普段から愛想振りまくからこうなるのよ。それよりも、明後日はいよいよ体育祭ね。私体育苦手だから気が重いなあ」
「凪は結局何に出場するの?」
「借り物競争。みんなで近年出た借り物を、分析して準備したんだって」
「それじゃまるで、試験対策ね」
また日が沈む。
終礼のチャイムが鳴り、生徒たちは教室を出ていく。
優奈も塾があるから、と先に帰った。
凪は野球部のグラウンドに寄った。
いつも通り、悠真ファンが黄色い声をあげている。
「みんなー! その調子!」咲良だ。
悠真は一年生同士でキャッチボールをしている。
凪は背を向けた。
母に今日は少し遅くなることを伝えた。
校舎に戻って自習室に向かう。
音を立てないように開ける。
皆一生懸命勉強していた。
凪は窓際の席に座る。
悠真は一年生にボールの投げ方を教えているようだ。
凪は頬杖で微笑んだ。
もう辺りが薄暗くなりかけていた。
悠真は女の子に囲まれている。
最後の一人が去った後、凪はグラウンドに戻った。
「悠」凪はそっと声をかけた。
悠真は目を見開く。
「凪! お前、どうしたんだよ!」
他の部員がニヤニヤしながら帰っていく。
悠真は左右に視線を動かす。
「まあ、帰るか!」
悠真は袋の中を凪に見せた。
紙袋の上まできているプレゼントに、凪は驚いた。
「中学の時より増えてない!?」
悠真は困ったように頭をかく。
「彼女たちはさ、俺の誕生日を祝ってくれたんだ。甘い物が苦手だなんて、言えないだろう」
電車やバスに乗っても、黎明高校の生徒はちらほらで、悠真にプレゼントを渡す人はいなかった。
「なあ、凪」
悠真は立ち止まった。
凪が振り返ると、視線を逸らす。
「どうして今日は待っていてくれたんだ?」
凪は悠真に背を向けて歩き出した。
「私なりに考えたから、かな? 体育祭が終わったら、一年生も朝練が始まる。そうしたら一緒に登下校できなくなる。それに⸻」
「それに?」
「あとは内緒」
悠真はニヤリとした。
「ははーん、さては」
凪の一撃が炸裂した。
「まだ何も言ってないだろう!」
「ふん!」凪はそっぽを向く。
凪の家まで来て、悠真は手を振った。
「じゃあ、また明日な」
「待って!」
凪はカバンを玄関に置いて、キッチンに行った。両手に抱えるほどの大きな箱だ。
「誕生日、おめでとう」
悠真は目を輝かせた。
「ありがとう凪! お前のプレゼントが俺は」
悠真は背を向ける。
「父さんが、凪ちゃんのプレゼントは毎年、酒の肴にあう、って喜んでるぞ」
「あっそう。じゃあ、さようなら」
悠真は足を扉の間に挟んだ。
「すみませんでした凪様。今年もお願いします」
悠真は紙袋いっぱいのプレゼントを、凪に渡した。
「はいはい、分かってますよ」
「あと、その、お前のプレゼント、俺は好きだぞ」
「ありがとう」
凪はニッコリと笑む




