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昨日から土の匂いを感じていたか、明け方になってポツポツだった雨が、本格的に降り始めた。
凪は制服を着て、髪を一つに束ねる。
「凪ー!」
母だった。
「なにー?」
「悠君来たわよ!」
⸻え?
凪はカバンを持って、玄関を開けた。
悠真は歯を見せて笑む。
「おはよ」
凪も微笑んだ。
傘を並べて歩く。
悠真は凪から視線をそらした。
「この間は、その…悪かったよ。馬鹿だなんていって」
凪はうつむいた。
「私も悪かった。ごめんなさい」
悠真は顔を明るくした。
「今度の休みイオン行こうぜ!」
「行きたい! 洋服見たいと思ってたの」
「よし! じゃあ今週の日曜日にバス停に集合な」
「うん!」
凪は大きくうなずいた。
悠真が教室の後ろから入ろうとした時、凪は前から教室に入った。
女子の体育祭委員長の牧さんと、その女子たちに悠真は取り囲まれた。
「悠真君! 女子たちの出場種目決まったの。本人たちの了解もバッチリ」
別の女の子が紙を取り出した。
「これがその紙。リレーの順番も決まっている」
さらに別の女の子が、悠真に紙を一枚渡した。
「これは、応援合戦や小道具類一覧。応援関連の総指揮官は外丸さんにお願いしたから、問題なし」
悠真は得意のキメ顔をした。
「こんなに早くやってくれるなんて助かるよ。男子の方はまだ全然なんだ。ごめんな」
女子たちはギロリと男子たちを睨んだ。
凪は一部始終を見て、引き気味に着席した。
優奈が来てくれた。
「おはよう、凪。すごいでしょう。もうほとんど女子の分はできちゃったみたい」
クスクス笑う優奈に言った。
「優奈もすごいじゃん。応援関連の総指揮官に任命されるなんて。さすがクラス委員長様」
優奈はほっとした様子だった。
「その顔じゃ、悠真君とのこと、大丈夫みたいね」
凪は視線をそらした。
牧さんを中心とした女子たちが、男子たちに詰め寄っていた。
「うん。今度の休み、イオン行こうって」
「よかったじゃん。そういえば、来月凪の誕生日だもんね」
優奈は凪に目線を合わせる。
「今年はどんなのがいい?」
凪は笑む。
「優奈の贈り物はいつもセンスいいから、なんでも嬉しい!」
優奈もニコッと微笑む。
「じゃあ、期待していてね」
優奈は席に戻って行った。
凪は外を見る。
雨は止みそうになかった。
雨粒は土に弾かれ、しみていく。




