第4話「電斗の実力」
電斗が修行に加わることを告げられた後でどれだけの戦闘技能があるのか確かめたかった。まだ結界術しか見たことがない現状で電斗と実力が教えてもらえる時を迎えた瞬間を今日を以て噛み締めた。
「まずは軽い電撃を掌で発生させてみろ」
「はい!」
すると、掌の上で微量の電気が弾けた。確かに電斗は電気を起こして見せた。後は実際に電気を操作するところをお父さんは要求した。
「今度は肝心の操作を見せなさい? それが俺の期待している点なんだ。どれだけ緻密に操作できるのか確かめたい。俺が張った結界術に向かって試しに放出しろ」
「了解です!」
そしてお父さんが結界術で自らを守る態勢に入った。そこに電斗は電撃を放った。それは一直線に放出されないでああゆる軌道を描いて結界に直撃した。電撃が結界を凄まじい威力で弾いて見せるが、それでも破れる気配はとても感じられない。
ちなみに結界術を破る方法は基本的に存在しない。つまり、それは絶対防御とも呼べる鉄壁の盾に値する。しかし、これは一般の術師が取得しようと修行に励んでからお父さんは八年で身に付けたらしい。それぐらいの高度技術で結界が破れた術師は過去に一人だけ噂で聞いた限りしか存在を知らない。
「そいつは結界術の定義を知った上で破る方法を編み出したらしいが、それは誰にも教えられることがない状態で亡くなってしまったと聞いている。実に結界術は厄介だ。これで身を守られた瞬間にあらゆる攻撃が防がれてダメージが入らない。けど、結界術が張られている状態を作ると霊術や魔術を扱うことは出来ない。つまり、結界術に頼り切っても勝利を収めることに繋がる訳じゃない。その欠点を踏まえて多くの術師は結界術を取得する者は少ない。それでも俺は取得して見せた」
「私も取得を凄く頑張っているけど、簡単に破られて追加攻撃に対抗できない状態なんだよね? まぁ、結界術にそこまで魅力はないから大して取得したいなんて思わないなぁ〜」
「交戦で活躍する場面は少ないと思うが、相手の攻撃を受ける訳にいかない時は使えるだろ?」
「それなら攻撃に対して素早く避ける方が良い気がする」
「咄嗟の防御は結界術が一番とも言える強度を誇る。それが俺の下に助けを求める理由なんだ。それは揺らぎたくない」
「分かった。でも、私は少し結界術に時間を捌きたくないなぁ〜」
お父さんはこれまで交戦経験は豊富だと聞いている。実際にうちのお母さんが巫女の霊術を引き継げる娘を一人目から作るのが主流だった。その後で彩斗が生まれて神主を目指して個人でお父さんと修行を積んでいた。彩斗も【空間転移】が扱えるが故に私と違う武器で対抗して来た。
その名前は【ルナティックソード】と呼称される専用の鍛冶屋が作り出した。それは最初から清原神社の参拝客として余裕を日々の中に沢山の学習を積み重ねて行く。実際は学力で私が勝利したことはないが、交戦の方は基本的に私が強かった。私と彩斗は中の年齢が離れている時点で鍛える日数が違う。それが主に経験の差を生じさせる思考が巡りやすかった。
「取り敢えず電斗と珠美が交戦してお互いの相違点を見付けたい。しかし、敷地内で交戦する場合は加減を利かせろ。そんな狭いところだと壁が壊れる」
「それは普段からお父さんが相手して実践経験を積んでいた時点で工夫が施せる。それを未だに発揮できない自分に終止符を打つんだ!」
どうやら電斗は闘争心が抱かれることに凄く対戦したい希望を持たせる。これも巫女修行の一環に数えられる一戦なら電斗が倒したかった。
「では、両者は向かい合ってくれ?」
「「はい!」」
「始め!」
一斉にお互いが目的を果たしたくて両者の術が発動した。この時に先制攻撃を仕掛けたのは私だった。もはや、電斗が電撃を放出する前に木刀を握った私は一歩が踏み込まれた一瞬で一気に間合いを詰める。そして【天牙一閃】を放った。
しゅっん!
「そこだわぁ!」
「なっ⁉」
私が迅速に接近して木刀を電斗の手首に軽く打って抜けて行った。電斗は速すぎる攻撃を前に反応することが出来ないで打たれた手首を押さえて唸る。
「ぐぅっ⁉︎ 今の速度は何だ⁉︎」
「これは私が一昨年の修行で取得した技になる。私の攻撃が空いていた距離を迅速の如く走り抜けながら相手を斬る技である。だが、これを義廻は簡単に上回って私は二回も敗北した」
「こ、こんなに速い攻撃でも義廻を倒せなかったのか? そ、それほどの脅威だったとは思わなかった。やっぱ逃げ出して正解だな」
「義廻なら迅速で攻撃を下しても対応が出来るのか? これは少し厄介だな?」
実際に私の使った技を簡単に解説してから義廻に回避された事実を明かした。それに電斗は手首を押さえながら驚愕して義廻の実力を改めて思い知らされた。それを知った時からお父さんは事実に対して悩ましい表情を浮かべる。しかし、そこでお父さんが私の解説した技にも攻略が出来る方法を提案する。
「あの【天牙一閃】を連続攻撃で繰り出せるようになると良いかも知れない。やはり、本来の【天牙一閃】は抜けて行く時に斬り付けて相手を通り抜く必要性がある。だから、迅速に連続で斬り付けないと義廻が倒せる訳もないと内心で思わされてしまう。
「それだぁ! それしかないよ!」
「けど、それを取得する以前の問題がある。それは踏み込んで相手を凌駕する速度で間合いに入った後の攻撃を繰り出すために素早く切り返して斬るの連続をノンストップで放つ点が難しい。切り返す時の反射運動と的確に相手の隙を狙って斬らないと動作の継続は困難だ。それを実現させることは歴代を超える前提で進めるしかない。だが、そこでお前は未だに錬成が不足している状態で新技の取得などが出来るなんて義廻と次に交戦する時期に待ち合せられるのかが大事でもある。そこはどんな思考で臨んで行くべきか決めろ」
「そうなるのかぁ~? それならお父さんがアドバイスして修正を加えて行けば問題は解決するでしょ? この提案は凄く良いかも!」
「バカ野郎! 俺でも新技なんて作ったことがないんだ。そこまで大きく変化が成されるとは思わない」
お父さんが理由を添えて私のお願いを断る。お父さんでも新技を編み出すことは容易ではないらしい。それは私にも良く分かる気がするが、義廻を討ち取るために必須かも知れない点は惜しいと思う。
そこで電斗が私たちの会話を聞いて提案する。電斗の出した提案は取り敢えず今後に活かせる修行が出来るように工夫された内容だった。
「ここは新技を編み出すよりも先に俺は【天牙一閃】の速度でも避けられる練習を積みたいです。あの迅速を見抜いて回避する目と反射運動は義廻と交戦になった時の有効策と言えるでしょう。あれを対処する練習の時間を少しだけ欲しいことに意義があるなら引き下がりますけど?」
「ふむ。確かに【天牙一閃】が回避を可能にするだけの力は貴重かも知れない。それなら俺が【天牙一閃】を使って電斗が受けろ。それがどんな形でも回避が出来れば義廻の速度が【天牙一閃】と並ぶことを踏まえて鍛える価値はある」
「それじゃあよろしくお願いします! 俺は全力で【天牙一閃】を攻略したいと思います!」
「よろしい。けど、それは珠美が学校にいる時だけだ。それが約束できるなら良いだろう」
「それで良いです! 今後はよろしくお願いします!」
電斗の歓喜したお礼の言葉を送られたお父さんは私に視線を向き直して今度は以前の交戦で見付けた課題を告げる。それは私と電斗に向けられたアドバイスが伝えられた。それが実践で活かせれば今後の交戦を有利に進められることははっきりと理解して取り入れたいと思わせる。
「以前に試してみた交戦を踏まえた上で二人は俺が指摘することを改善する修行に取り組んでもらう。始めに珠美は【天牙一閃】で大体の基礎は出来ている。後は【天牙一閃】に縛られないで違う技にも磨いて行く必要がある。世間に存在する相手は義廻だけじゃない。他でも【天牙一閃】は通じない時の対策を考えて実行に移せる段階を事前に用意して置く方が後で安心だ。とにかく【天牙一閃】の使用は一ヵ月間の禁止を宣告する」
「えっ? マジで……!?」
私は一番の得意技を封じられる結果を辿った。やはり、大抵は【天牙一閃】を攻略できる奴はいない点が凄く気に入っていた。お父さんの意向を無視することは前代未聞だとお母さんから仕付けられた経験が反対を押し切るような行動に出られない理由の一つだった。
(はぁ~。もっと【天牙一閃】に努めたかったぁ。けど、技に固執するのも衰退を辿る理由になることの回避なら仕方がない。ここは【天牙一閃】だけじゃなくて別の手段でも戦えるように頑張らないとだ)
お父さんの方針で得意だった技が禁じられた時に内心で抱いた感想は凄い違和感を覚えたことである。これまで【天牙一閃】は自分が傷を負わないで一戦に勝利を収めた実績の一部として刻ませてくれたことだった。それを封じて違った手段を選んで修行に努めることは多少の苦が生じて自身に負担を背負わせる結果に至らせる。
そして少し話し合いで修行が進まない現状に終止符を打ちたいとお父さんがトレーニングに移る意思を見せた。今後は私たちがトレーニングに励んでいる間にお父さんの方で考えるらしい。それに大した抵抗は微塵も思わせることはなかった。実際にお父さんはこれまでの経験は豊富である。その点が信頼に置ける理由でもあった。
私たちは取り敢えず両手首と両足首に重量のリストバンドを付けて腕立て伏せから始めた。普通の腕立て伏せにも思えるだろうが、一般で行われている以上に負荷を上乗せして肉体の強度を底上げする。
そんな過酷なトレーニングを初見で受ける電斗はペース配分で私に差を付けられる。普段はあまりトレーニングに励んでいた経験は少ないみたいである。しかし、トレーニングの最終段階までやり切って見せた。その根性はお父さんも認めるぐらいに見込みがあると評価している。
実際に電斗の肉体は見る限りの筋肉質だと感想が持てる。多少は肉体の作りが良いようにも思えたところが今後の戦力に加える人材として相応しいだろう。きっと一緒に鍛えて強くなってくれるはずだ。
「今日はこれで終わりにしよう。各自で風呂に入って汗を流して来い。もちろん最初は女性が優先になる。そこは厳守で頼む」
「了解です」
「はぁぁぁ~! やっと風呂だぁ~! 早く入って来ようかなぁ~!」
そんな風に私が解放されたような様子を窺わせる。それを電斗は大して気にする言動を見せなかった。けど、そこは別に指摘する必要性を求めることは特にないと言える。
お風呂が入り終わった後で男たちに次の入浴を始める報告をした。最後の方に伝わった電斗は疲れているように見える素振りが私の目に映った。けど、そこまで私の意識は指摘に向かなかった。だって私も同じように疲労は溜まっている。なら、風呂で身体を洗って湯船に浸かって癒せば良い。それが明日の修行に繋がると教わって来たのである。
次の日。軽いランニングを自主で行ってから風呂に入る。速やかに汗を流して清潔になった状態で学校に行く。大体の進路は高校を卒業した後で巫女に集中する予定がある。だから、こうして親友と過ごせる時間も僅かだった。
しかし、卒業を理由に会えなくなる訳じゃない。本格的に巫女として活動範囲を広げてお母さんのように全国を渡れる巫女が目標に掲げた夢である。そこまでは過酷で難しい道のりだけど私は良かった。
教室に入って親友の結花と挨拶を交わした後で彼女は真っ先に最近の噂を聞いて疑問に思ったことを打ち明ける。それは近頃で私も小耳に挟んでいた話だった。それを結花は確かめて欲しいと懇願する。
「例の廃ビル付近で行方不明者が三名も出る事件か? それは少し気になっていた問題だよ。きっと廃ビルが原因で起きた事件に違いない」
「マジで? それって早く解決しないとヤバくない?」
「そこは山々だけど、私も修行で忙しい時はあるもん。けど、放って修行に努めるだけが巫女じゃない。それ以前に妖怪が関連している可能性が推測される中で放置はできない。それなら任せてよ!」
「頼んだよ!」
そうやって結花の希望で妖怪が出没する可能性を秘めた地域の調査に行こうと思った。そこで妖怪の出没が完了した場合は即座に退治する予定で現場に向かう。




